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ガチャ10 決闘

 美しい自分だけのマドンナ、ダリア。

 高嶺の花であり、依頼の時に交わす短い言葉のやり取りだけで幸せになれた。そんなダリアと長々と話し、個室での登録作業まで一緒にしてもらい、カウンターまで戻ってくるなり話し込む。ダリアはなんとも楽しそうに笑っており、まるで親しい友人と話すかのようであった。

 

(少しばかり顔が良いからって、あのルーキーは調子に乗っていやがる!)


 我慢できなくなった男は調子に乗るとどうなるかをルーキーに身をもって教えてやるために怒鳴って罵声を浴びせた。


「おい、ルーキー。お前みたいなモヤシ野郎には冒険者はつとまらねぇぇ! ケガする前に家に帰りなっ!!」


 リュウには男の事情などわからない。ダリアほどの美女との会話だ。周囲を気にする余裕など無い。当然、厳つい顔の男から罵声を浴びせられる覚えも無かった。

 言い返してやろうと心に決めたリュウはいつでも戦闘出来るように鑑定を発動させる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前 ドナル

種族 人間

レベル 20

HP 227/227

MP 20/20

筋力 158

魔力 25

耐久 114

敏捷 40

器用 35

幸運 26


スキル

【剣Lv2】


魔法

加護

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(予想以上にレベルが高い。幸運を除いたステータスの総合力だけで考えれば負けてるけど、敏捷なら俺の方が上だ。なんとかなるな)


 戦闘になっても勝てる算段がついたリュウは喧嘩を買うことに決めた。


うるさい先輩だな。討伐依頼を見ているんだ。黙ってろ」


「はっ! ガキが意気がるんじゃねぇよ。お前みたいに線の細い奴がモンスターとまともに戦えるわけがねぇ。周りの冒険者の足を引っ張るだけだっ。迷惑なんだよ!」


「充分戦えるさ。先輩、試してみるか?」


「……良い度胸してるじゃねぇか! 決闘だ!!」


 決闘を行うと聞き、周囲で様子を伺っていた冒険者達が騒がしくなる。


「決闘ね。良いだろう。ルールは?」


「知らねぇのか! 相手に参ったと言わせるか、戦闘できない状態に追い込んだ方の勝ちだ。俺が勝ったら、冒険者ギルドカードを返上してこいよっ」


「いいとも。そのかわり、俺が勝ったら2度と俺の邪魔をするなよ」


「勝てる気でいるのか? Dランクのこの俺に! モヤシ野郎に随分と舐められたモンだぜ……。表に出ろ!」


 ドナルが大きく足音を立て、周囲の冒険者を押し退けながら冒険者ギルドの外へ出ていく。リュウもすぐ後ろをついて行った。2人が大通りに出た後、決闘を観戦しようと他の冒険者達も集まってくる。

 

 騒ぎを聞きつけたダリアもそこにいた。


「リュウ、決闘なんてダメよ! ドナルはDランク冒険者。オークを1対1でも余裕で倒せる程の実力があるわ!」


 叫ぶような声で決闘を止めさせようとするダリアだが、リュウは黙って首を横に振る。この手の輩に今後絡まれないように、ここでドナルを倒すと決めていたからだ。

 対するドナルは、ダリアに心配されるリュウを見て怒りが更に増し、火が噴き出しそうなほど顔面を赤くし、眉が限界までつり上がっていた。


「……この銅貨を上に投げて、地面に落ちた瞬間から決闘開始だ。準備はいいかぁ? モヤシ野郎!!」


 リュウはホルスターからいつでも魔弾の拳銃を取り出せるように集中しながら、挑発的な笑みを浮かべた。


御託ごたくはいいから、さっさと投げろよ」


 額に青筋を浮かべたドナルが指で銅貨を弾く。回転しながら上昇し、勢いを失った銅貨が垂直に落下する。

 

 ドナルは質の良い鉄製のロングソードを引き抜き、いつでも飛びかかれるように構えた。


 対するリュウはホルスターに手を伸ばしただけ。

 

 銅貨が地面に落ちた。

 

「うぉおおお」


 ドナルが気合いを入れ、剣を構えたまま走り出した。


 リュウは呼応するように魔弾の拳銃を素早く引き抜き、擬似フルメタルジャケット弾を放つ。


 音速を超える弾丸が突き進み、ロングソードを握っていた耐久100超えの防御力を有するドナルの右手を抵抗なく撃ち抜く。


「ぐあぁ! 痛てぇ!! どうなってやがる!?」


 ドナルが思わず叫び、ロングソードを落とす。


 ゴブリンなどの格下モンスターレベルの攻撃ならば高い耐久でかすり傷も負わない自分の体を、冒険者に成り立てのルーキーが未知の攻撃手段であっさりと傷をつけてきたことにドナルは混乱していた。


 気がつくと目の前にいたはずのリュウがいない。ドナルが後ろを振り返ろうとすると、首に当たる冷たく鋭い刃があることに気がついた。


「決闘の場合、相手を殺しても問題ないのか?」


 背中越しに聞こえてくる低い声。リュウが本気であると悟ったドナルは震えながら口を開く。


「まっ、参った! 命だけは勘弁してくれぇ!!」


 情けない声を出しながら命乞いをするドナルを見て溜飲を下げたリュウがフレイムタンを鞘へ戻した瞬間、ドナルは走って逃げて行った。観戦していた冒険者達が騒ぎだす。


「なんだあれ? ボウガンにしちゃ小さすぎるだろ!」


「矢の見えない速さで飛ぶボウガンなんてあるわけないだろ!」


「強力なマジックウェポンだな……」


「あの剣も相当な業物じゃないか?」


「あんな奴がなんでまだルーキーなんだ??」


「パーティー組んでくれないかな」

 

 大勢の前で魔弾の拳銃を使ったことで騒ぎが大きくなったことに溜め息をつくリュウ。しかし、レベル差のある格上との戦いであり、出し惜しみすれば負けていたのは間違いなかった。それに、悪いことばかりでもない。

 ドナルが参ったと宣言した瞬間、身体中に力がみなぎってきたのだ。


(起きてしまったことに後悔しても仕方がないし、これでドナルのような輩が突っかかってこないのならばそれでよしとしよう。

 それに、この力がみなぎるような感覚。レベルがあがったのかもしれないな。早く確認したいところだ。だか、それよりも……)


 黒髪の美女が妖艶に笑いながら近づいてくる。無事を祝ってくれているようだが、銃について追及してくるのは容易に想像できた。未だに美しい女性に免疫の無いリュウは緊張してしまう。

  

「やるじゃない! 正直に言うと、勝てるとは思っていなかったの。凄い武器ね?」


「俺の切り札だからな」


「そう? なんだか、奥の手はまだ沢山あるって感じに見えるわよ」


「……さあね」


「……うふふ。あなた、きっと大物になるわ。じゃあ、仕事があるから戻るわね。依頼の受注の時は私のところに来てね?」


 ダリアは片手で手を振って冒険者ギルドの中へと戻っていった。


(ダリアの方がドナルよりもある意味強敵かもしれないなんて、口が裂けても言えないな。秘密にしていることを追及されるのがわかっていても、ダリアほどの美女に見つめられると素直に全てを話してしまいたくなる……)

 

 美女への耐性の無さを感じていたリュウだが、決闘で上がったであろうレベルとステータスの確認と、討伐依頼の受注をしたかったことを思い出し、冒険者ギルドへ入っていった。

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