第28章〜亀裂〜
アオイがキャバクラでバイトをする。
この事実に俺は酷くショックを受けていた。
アオイ上京前日。
毎朝、アオイに送る "おはようメール”を俺は敢えて
送らずにいた。
無言の抗議として…。
その日の昼。
俺の携帯にアオイからメールが送られてきた。
「明日の東京行きですけど、どの新幹線で行けばいいですか」
「あ。。。はい、今日中に調べて、夜、メールしますね」
しばらくして…
「いいです。自分で調べます」
「いや、俺が調べてアオイちゃんにメールしますよ」
そして…
「やっぱり、明日行くの辞めようと思います…」
案の定、アオイは怒っていた。
俺は、仕事を抜け出し、すぐにアオイに電話をかけた。
「アオイちゃん、どうしました?何で?」
「ス☆キップさん、私の事、呆れてるでしょ?
いいんですよ。嫌いになったら、いつでもふってください!
私・・そういうの慣れてるし」
アオイの怒った時…キレた時の口調…誰も寄せ付けない
冷たい眼…遠く離れているに関わらず、その眼は俺を
突き刺していた。
呆れる?
アオイに対して、俺の中にそうした感情は無かった。
これから先、アオイは、俺に対して、この言葉を何度も口にする
事になるが、俺は一度として、呆れる といった感情は芽生える
事は無かった。
ただ。。。虚無感…そして、俺という囲いをいとも簡単
にすり抜けて自由に飛び回るアオイに対して、切なさを
感じていた。
「アオイちゃん。俺は呆れたりしていないです。
まして…嫌いになったりしないです…」
「だって!いつも朝くれるメールもくれなかったし、昨日の夜
突然無口になって、あんまり、しゃべらないし!
無理しなくていいです!嫌いになったら、嫌いって言って
ください!」
俺とアオイの数ヶ月。
そして、共にすごした日々。
アオイには、俺の気持ちが伝わっていなかった。
それが、ただ、それが哀しかった。
俺は、そんな俺自身の受けたダメージを彼女には悟られぬよう、
そして、俺がいかにアオイを想っているのか、訥々と
電話口で説明しなければならなかった。
アオイに対する、俺のささやかな抵抗は、こうして俺が白旗を
あげる事で収拾された。
ささやかな抵抗…
アオイに対して、俺は何度も試みる事になるが、
それは決まって、この日の初めてのレジスタンス同様に
尽く"アオイに魅せられてしまった俺”の敗北という
結果に終わった。
こうして、機嫌を直したアオイは、明日、再び上京。
今、思えば、この上京が、俺にとって最も、彼女と過ごした
短い時間の中で、一番、楽しい時間だったかもしれなかった。
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