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童話シリーズ

元ヤンだった難攻不落の騎士と美しくない貴族の女性の話。

あるところに男の子がいました。


彼の両親は母親は娼婦で、父親はその客の一人でした。

母親は彼を一人で育てました。

その母が死ぬと彼は一人ぼっちになりました。


少年は、詐欺や盗みをして生きることになりました。


そういった毎日を送っていると、沢山の人に罵倒されました。

それでもそうしなければ男の子は生きて行くことすらできなかったのです。


男の子は、めったにまともなご飯を食べることもできませんでした。

時には、カビの生えたパンで一日を過ごすこともありました。


男の子の世界は灰色に染まっていました。


男の子が初めて人を殺したのは15の時です。

盗みがばれた時に、酷く殴られがむしゃらにナイフで反撃したらあっけなく相手は死んでしまったのです。男の子は血まみれの手を愕然と見て、目の前が真っ暗になりました。


男の子はそれから何も食べずにふらふらと歩いていました。

彼はどんどん痩せていき、倒れてしましました。

男の子は死にたかったのです。


彼は気がついたら教会にいました。

男の子は驚いて、神父様に自分はこんなところにいていい存在ではないと半生を語りました。

神父様は彼の話を聞き終わるとはらはらと涙をこぼしました。

男の子はなぜ神父様が泣いているかわかりませんでした。

彼の育ったところではそんな子供たちは沢山いたからです。


男の子は神父様のところでそのまま育ちました。


彼は、何故見ず知らずの他人が自分を引き取ってくれたのかわかりませんでした。

男の子はいつ追い出されるかわからないと思い、必死になって勉強しました。

その様子を神父様はとても喜びました。


やがて、寄宿学校に男の子は行くことに決めました。

入試試験で点数が良かったので、特待生として無料で学校に入学されることが許可されました。

神父様と男の子は2人で入学する前の晩の日に、小さなお祝いをしました。


入学するとそこは貴族の子供たちばかりだったので、時には嫌がらせを受けることもありました。

けれど、男の子は何を言われても堂々としている姿と優秀さから遠巻きに慕われるようになりました。

男の子は、誰も傍にいなくても寂しいとは思いませんでした。

そもそも、寂しいという感情が分からなかったのです。


男の子は卒業すると、ある貴族の奥方に騎士として仕えることになりました。

その職に就いたのはお給料と条件が一番よかったからです。

彼は、自分が誰かを守る立場になったことに驚きました。


奥方は、特に美しいとは言えない外見の持ち主でした。

周囲の人から貴族の女性は美しいと聞いていた男の子は少しがっかりしました。

それでも彼女はとても優しい人でした。


中々子供が恵まれないこともあって、夫婦仲は冷えたものでした。

奥方は寂しいのか男の子とよく話をするようになりました。


男の子は貴族の奥方のことを少しずつ知って行きました。


よく空を見上げていること。

甘いものと綺麗なものが好きなこと。

本当はもっと本を読みたいが夫はいい顔をしないこと。

差別意識が強い貴族の中で、平民を蔑んでいないこと。

あまり人と話をしたことがなかった男の子が頓珍漢な返事をしても嫌な顔ひとつしないこと。


今まで灰色だった男の子の世界に少しずつ色が付いていきました。

彼女が好きな空の青さと流れる雲の白さ。

美味しいといって喜んでいたリンゴの赤さ。

一緒に散策をした森の滴るような緑の色。

綺麗だといった可愛らしい花の紫色。


そんな男の子の穏やかな生活は彼女が子供を身ごもったことで崩れました。

奥方のおかげで鮮やかに見えていた世界が急に真っ暗に見えたのです。

男の子は自分が彼女を好きなことを悟りました。


男の子はそれからも奥方に仕えました。

やがて優秀で勤勉な男だと、奥方の旦那様にも認められるようになりました。

子供はすくすく育ち、立派な大人として後を継ぎました。


そんなある日、奥方は病気で倒れました。

彼女は空気のいい地方で療養をすることになりました。

旦那様は、ついていく気はありませんでした。

首都に愛人がいたからです。

旦那様は男の子に彼女のことを頼むといいつけました。

男の子は黙ってうなずきました。


地方に移ってから、奥方は日に日に弱って行きました。

ある日、彼女は自分が美しくなかったから夫はがっかりしていたと言いました。

男の子は、貴方は私にとって一番美しい女性ですといいました。

奥方は、嬉しいわとほほ笑みました

彼女が眠るように死んだのはそれから間もなくのことでした。

男の子は生まれて初めて涙をこぼしました。


暫くして、彼女が亡くなった事を知った旦那様は駆けつけてきました。

そうして、最後の時間を楽しめたかと男の子に聞きました。

男の子は何の事だかわからないといいました。

旦那様は、お前ら出来てたんじゃないのかと驚きました。


男の子はいいえ、手をつないだことすらありませんと言いました。

けれど、あの人のことは私が一方的にお慕いしていたといいました。

旦那様は物悲しい顔をして、首を振り言いました。

あいつも君のことを好いていたと。

私にはあいつのことをどうしても愛せなかった。

それが申し訳ないと思っていたから君との関係にも口をはさまなかったと言いました。


男の子は死ぬまで独身でいました。

周りにどんなに結婚を勧められてもうなずきませんでした。

毎年彼女の命日に、彼は抱えられないくらいの色とりどりの花を供えました。

男の子は、彼女がいる世界が沢山の色であふれていることを心から祈りました。


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