人通りの少ない、路地裏で一人の老婆が占いをしていた。
老婆
「占いじゃよ、見てやるよ、おいでおいで…。」
一人の男の酔っ払いが老婆の前を通りかかった。
老婆
「そこの人、あんた肩こってないか?」
酔っ払い
「肩?最近仕事が忙しくてね。」
老婆
「半額で占ってやるぞ。」
酔っ払い
「半額か、見てもらおうか。」
老婆
「お前さんの顔をよく見せておくれ、お前さんの顔だよ。」
酔っ払いは老婆に顔を突き出した。
酔っ払い
「これで良いんだろ!」
老婆は酔っ払いの顔を覗き込む。
老婆
「うむうむ…お前さん、去年、離婚しているようだね。」
酔っ払い
「何でわかるんだ?ああ、去年離婚したよ。」
老婆
「占いだからね、お前さんの顔にそう出てるっていうだけじゃよ、フォフォフォ。」
酔っ払い
「他に何が見えるんだよ。」
老婆
「では占いを続けるとするかの、うむむ…お前さん“霊運”と言うのを知っているかの。」
酔っ払い
「なんだ?霊運ってのは、水難や女難とかなら知ってるけどよ」
老婆
「霊運は良ければ、すばらしい霊と出会い、すばらしい人生を送るのじゃ、しかし、霊運が悪ければ危険な霊に出くわすこともしばしば、または…。」
酔っ払い
「または、なんだよ。」
老婆
「または、命を落とすやも知れませんのう、霊運を見ると余り良くないようですな。」
酔っ払い
「よせよ、ばあさん…俺に何か憑いてるとでも、い…言いたいのかよ。」
老婆
「離婚した奥さんは子供を連れて出ていったんじゃないかの?」
酔っ払い
「ああ、そうだよ!俺の息子を連れて出ていったんだよ。」
老婆
「その子に最後に会ったのはいつ何だい。」
酔っ払い
「去年の夏かな冬にも行ったんだが会わしてくれないんだ。」
老婆
「その息子さん、お前さんの左肩に乗ってるよ。」
酔っ払い
「離婚した女房に殺されたのか!くそっ、女房のやつ警察に突き出してやる。」
そう言うと酔っ払いは涙を流した。
酔っ払い
「ありがとよ、死んだ息子が俺を頼って来てくれたのか、俺を見守ってくれているんだな、占い金だ少し多いが取っといてくれ。」
老婆
「まいどあり…気を付けるんじゃぞ。」
酔っ払いは帰り道をよたよたと千鳥足で歩いていった。
老婆
「最後まで言いそびれたのう…。」
酔っ払いの曲がった道の向こうから、クラクションの激しい音と酔っ払いのトラックに跳ねとばされた音が聞こえた。
老婆
「あの酔っ払いには、息子以外に離婚した奥さんも憑いておった、息子や奥さんが言っていたのは…。
息子『パパも一緒に逝こうよ。』
奥さん『あなたも一緒に逝きましょう。』だったのう。」 |