速水兄妹の壮絶なバトルから一夜明けて、舞台は上大です☆
弟99話 初めてのデート
「おはようさん、速水くん」
それは翌朝のことだった。
学内の掲示板に上祭のイベント告知を貼り出していたユウは、仕事の手を休めて愛子の声に振り向いた。
「あ、愛子さん、おはようございますっ」
ドギマギしながら愛子の姿に釘付けになるユウ。
昨日までとはうってかわって、女の子らしいフェミニンな装いに華やぐ愛子。
「ウチ、上祭のコンサート、がんばる、速水くんのために」
愛子は微熱を帯びた目を向けてユウに告げた。
「あいこさん……」
ユウはボーッとなって愛子の姿に見とれた。
そんなユウに、愛子は言った。
「だから、ウチ、京都帰って練習してくる」
「えっ……」
愛子が京都に―――意外な言葉に、ユウは思わず絶句した。
「九月にまた会お、速水くん」
切なげな瞳がユウの顔を見つめていた。
「あの、愛子さん」
ユウはそんな愛子を引き止めるように言った。
「せめて八月十五日の諏訪湖花火大会まではこっちにいても……」
「ありがとう、速水くん」
愛子は小さく頷いた。
「でも、ウチ、もう決めたことやさかい、だから……」
「そう……」
ユウは思わず目を伏せた。
愛子の真摯な眼差しを受け止めることができずに。
「そのかわり」
打ちひしがれたユウに、愛子の声が注がれた。
「今日、ウチとデートしよ? 二人だけの思い出、作りたいから……」
愛子はおだやかに微笑むと、ユウの返事を待った。
「うん」
ユウも顔をあげて微笑み返した。
「じゃあ、上祭の仕事が終わったら、デート……しよっか」
おどろくほど自然に口をついて出た言葉―――初めてのデート。
ユウの中に生まれた小さな変化……
「ありがとう、速水くん」
愛子ははにかむように笑った。
「そしたら、またな」
それが別れの言葉だった。
(愛子さん……)
愛子の後ろ姿を見送りながら、ユウは心の中でもう一度、愛子の名を呼んだ。
なぜか、呼ばずにはいられなかった。
粟立つような予感に胸が騒いだ。
第99話 終
さて、月末に100話完結という没論理的な設定で計画を進めてきたこのお話、
私の個人的な事情でもうちょっとだけ続きますので、「いつ終わるのかしら」とドキドキしながら読んで下さいね<(_ _)>
なお、今日はとある国立大学の研究室に呼ばれたので、ちょっと動画を撮ってきました☆
「ここ、私の大学だ!!」と思った人、これからもよろしく☆
記事URL→ http://risako-novels.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-7d60.html
初めてのデート―――でも、なぜか胸騒ぎを抑えることができないユウ……
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