剣次郎の柔術が秦をKO? 果たして勝負の行方は……
第72話 デカメロン
「ぐっ、てめ、ガキ……ガボッ」
秦は白目をむいて泡を吐き始めた。
骨の軋むミシミシという音がユウの耳にも伝わってきた。
ど、どうなっちゃうの、このままやったら……
さすがに顔が青ざめる。
その時だった。
「おめた、そこでなにやってるだ!」
もつれあう二人の頭上に浴びせられた威勢のよい女の人の声。
「まったく、人の店でやくてぇもねぇケンカしてるだねーだよ、この忙しいのに!」
おっ……お店のお姉さん!?
あわてて振り向くバンダナとメガネ。
その声に剣次郎も技を解いて身を起こした。
「て、てめー、クソガキ」
秦は意識を取り戻して立ち上がった。
「テメーら全員、ドゲザだ、コラ――――!?」
再び拳を握りしめる秦。
「まだゆってるだか、おめさんはーっっ」
パコーン
フライパンの一撃が秦の顔面をとらえた。
「ぶうっっ」
醜く顔を歪ませてのけぞる秦―――
「その年でもってものの善悪もわからないだだか? ったく、これだで最近の大学生は」
お店の人は心底呆れたように言った。
「おめた、上大の医学部ずら? こんなバカ、医者にしたら何されるかわかったもんじゃないだだよ! わかってるだか? ほう!」
後輩の肩に抱えられながら店を出る秦の背中に、お姉さんの罵声が飛ぶ。
(お、恐るべし、諏訪のお店の人)
ユウと舞は思わず顔を見合わせた。
その横で、あやは黙ったまま連れ出されてゆく秦の後ろ姿を見つめていた。
「あ、あやあ」
ユウはばつの悪い笑みを浮かべながら妹の様子を覗った。
「そのぉー……だいじょうぶ?」
はは……と乾いた笑いでつとめて和やかに訊くユウに、あやも小さく笑み返した。
「うん、お兄ちゃん……大丈夫だよ」
言い終えて、あやは目線を転じた。その先にいたのは―――
「あーあ、ほこりまるけになっちったよ」
剣次郎はパンパンと腕をはたいた。
その様子をじっと見つめるあや。
「な、なんだよ? なに見てんだ、コラ」
剣次郎はあやの視線に気づいて言った。
「そ、その……さ」
あやはためらいがちに目を泳がせた。
けれど、やがて視線を剣次郎の顔に戻すと、決意したように告げた。
「ありがとう、けんじろーくん。たすけてくれて」
「えっ……」
突然のことに剣次郎は言葉を失って立ち尽くした。
(あや……)
ユウもまた目の前の光景に呆然となった。
あやが剣次郎くんにお礼を言うなんて……
「い、いーよ、そんなのさ」
剣次郎はもじもじと身をよじらせながら頬の辺りを指で掻いた。
「それよか、あんた、速水あやってゆーんだろ?」
「え……」
あやは目を丸くして訊き返した。
「そ、そうだけど……?」
「あ、あのさ」
剣次郎は唇を尖らせながら、ふてくされたように言った。
「サ、サイン、くれないかな?」
「へ?」
意外な言葉に、あやは思わず顎を引いて剣次郎の顔を見つめ返した。
サ、サイン?
「たのむよ、これにさ」
ねーちゃんの部屋でみっけたんだ、コレ―――
そう言いながら剣次郎が差し出したのは、『デカメロン〜速水あやの十日物語〜』!?
「あやの十日物語、みんなにも読んでほしいから……」のキャプションとともに、豊かな胸を手で寄せる水着姿のあやの表紙……
バコッ
あやは顔を真っ赤にしながら剣次郎の脳天に鉄拳を振り下ろした。
「子供にはまだ早い(エロガキッ)」
「ご、ごめんなさい……」
写真集を手に頭から白い煙を立てながら床に沈む剣次郎だった。
第72話 終
りさこのホラー小説「赤い橋」の公式PV、ブログに先駆けて先行配信しますね。
あわてて作った映像なので、ちょっと単調ですけれど、コンテンポラリーな楽曲と一緒にお楽しみ下さい<(_ _)>
動画のURLはコチラ→ http://video.nifty.com/cs/catalog/video_metadata/catalog_090104157508_1.htm
悪者には勝てても、かわいい女の子には勝てない剣次郎くんでした☆
次回、あやがユウに告げた一言……
りさこの公式ブログです☆ 気になるお話、いっぱいです♪
りさこのギャラリー☆画像がいっぱい 小説の原作漫画やCGなど、いっぱいです♪
写真集〜「恋ひな」「恋ピア」 小説の舞台となった諏訪市の写真集です☆
りさこの動画のお部屋 りさこのいろんな動画がいっぱいです