無謀にも秦に上等を切った何者かの声……いったい誰?
第71話 柔術マジシャン……!
「ちょー待てや、コラ」
沈黙を破る第三の声―――
秦は「あ?」と短く声を発すると、血走った目を向けて声の主を睨んだ。
「てめー、誰に許可を得て速水先生とその妹に上等こいてんだ、ああ? 死なすぞコラ!? おお!?」
怒りに形相を歪めて歯軋りするTシャツ姿の少年―――剣次郎!?
「けぇっ、剣じろー……くん!?」
悲鳴にも似た叫びが店内に響く。
「やばいだよ、剣じろー君、秦先輩、医学ボクシング部のレギュラーだだよ! 今のうちに謝っといたほーが……」
メガネの必死の説得に、きょとんとした目を向ける剣次郎。
ダメだ、わかってないや、この子……
「今さらおせーんだよ、コラ」
秦は剣次郎に歩み寄ると、ペシッと指先で少年の頬をはたいた。
「けっ、剣次郎くん!」
ユウは声を上げた。
でも、どうすることもできず、その場に立ち尽くして……
あやも同じだった。
こわばった体を崩れ落ちないように支えるのが精一杯だった。
「てめーの分も早坂につけとくからよ。合計20万だ」
秦は剣次郎の胸倉をつかむと、唇に酷薄な笑みを浮かべた。
「……ってぇな、オイ。いーかげんキレんぞ、コラ?」
剣次郎は秦の手をつかんだ。
「あ?」
秦の目に怒りの色を増した。
その瞬間だった。
「よっと」
気の抜けた掛け声に続いて、秦の体がその場で宙に舞った。
「うっ、うわああああーっ」
ユウは目の前の光景に思わず叫び声をあげた。
に、人間が空中で半回転した!?
「あ、合気道!?」
「てか、柔術!?」
半歩後ずさって尻餅をつくバンダナとメガネ。
な、なんなの、この子供!?
秦は派手な音を立てながら、背中から店の床へと叩きつけられた。
「て、てめえ、ガキ……ブッ殺されんぞ、コラァ!?」
すぐさま身を起こした秦の渾身の右ストレート―――
剣次郎は左手首を返してそれを捌くと、ニッと笑った。
「じゃ、しょーがないや。ちょっといてえぞ、コラ?」
「はっ」
刹那、秦の呼吸が止まった。
視界から剣次郎の姿が消える。
目の前をよぎる黒い影―――腕にからみつく剣次郎の両足。
そのうちの一本が秦の首に巻きつき、両者はそのまま床に仰向けに転がった。
反動で身を起こし、脚を交差させて秦の右腕をねじりあげる剣次郎。
「おごああああ――――」
秦の絶叫が店内を揺るがす。
「うっ、腕ひしぎ十字固め!?」
ノゲイラか、コイツわーっっっ!!?
鮮やかな関節技に目を奪われる男たち三人。
か、完全に入っちゃってる……
「実は剣次郎くん、あれから毎日、渋川先輩に古流柔術を……」
舞がボソッと呟いた。
(う、末恐ろしーガキ……)
バンダナとメガネはゴクッと唾を飲み込んだ。
第71話 終
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剣次郎はノゲイラ顔負けの柔術マジシャンだったのね……お見事☆
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