自画像を描くように命じられたあや。女医の真意は……!?
第57話 セルフヌード
「じ……自画像を……!?」
あやの問いかけに、女医は不敵な笑みで応えた。
「ええ。描けるかしら、あなたに?」
「ふ……」
噛みしめた奥歯はそのままに、あやは小さく息を吐き出した。
「キャハハハハ」
一転して、あやは狂ったように笑いさざめいてみせた。
「なーにが今さら自画像よ? バッカじゃないの、オバサン?」
あやは上目遣いに女医の顔を覗った。
「御託はいーわ」
女医はそのままの表情で告げた。
「描くのか描かないのか、それだけ答えなさい」
「くっ」
動じる様子のない女医を見て、あやの顔に動揺が走った。
余裕たっぷりにあやを見つめる安芸子――-
「……いーわよ」
しばしの沈黙の後、あやは答えた。
「やってやるわよ。自画像くらいいくらでもね!」
「……そう」
女医は微笑した。
「ま、自画像なんて目ぇつむっても描けるモンだし、こんなことに何の意味があるかイミフだけどね」
あやはスケッチブックの表紙をめくった。
「だってそーでしょ? 自分の顔なんて、もう飽きるほど描い……」
言いかけたその時だった。
「なーに描いてんだよ、速水あや? 誰がンなモン描けっつった?」
女医は底意地の悪い目を向けてあやを見やった。
「なっ……なあ!?」
あやは思わず顔をあげた。
「だ、だって、さっき自画像を描けって自分で……」
「バカか、てめーは?」
女医は白衣を脱いでソファに深々と腰を下ろした。
「顔だけしかついてねーんか、おめーには? 妖怪『ビローン』か、おまえ?」
「え……」
女医はすらりとした長い脚を組み替えた。
「あなた自身のすべてを描く―――それが本当の自画像よ」
「なっ、なによ、えらそーに!」
あやは身を乗り出して叫んだ。
「全身像なら全身像って最初から言いなさ……」
「やはり甘いな、ガキの考えることは」
「へ」
女医の一言に、あやの動きが止まる。
「私は『あなた自身』と言ったはず。『服』はあなたかしらね?」
「!」
あやは思わず視線を伏せた。
「この意味、わかるわよ……ね?」
女医は厳しい目を向けてあやに迫った。
(ま、まさか、それって……自画ヌード!)
射るような女医の視線があやを貫いていた。
わ、私自身のヌード!?
第57話 終
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セルフヌード―――女医の求める本当の自画像。あやは……
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