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いよいよヌード撮影当日。不安と期待(?)でドキドキのユウですが……
第50話 ブチギレだわぁ〜
 翌日、ユウの襤褸(ボロ)アパートの玄関にて―――

「ちょっ……おまえ、なんでまたついてくるのっっ!?」
 ユウはおたおたと妹を振り返った。
「だってしょーがないでしょ。私だって上祭(じょーさい)に協力させられてるんだから」
「あ……そ、そなのっ?」
 用事ならしょうがないけど、でも、よりによってこんなヌード撮影の日に、あやのやつゥーっ……
 心の中で「来んなーっ」と叫ぶユウだった。
 

 秦先輩から指定された集合場所へと向かう道すがら、ずっと鳴りっぱなしのユウの鼓動。
(ついに始まるんだ、ヌード)
 そう思うとおかしな気持ちになる。股間の辺りがツーンとなって……
(生まれて初めて見るんだもんな……女の人のハダカ)
 今さらながらにそう思う。
「こ……ここか、医学部基礎校舎32番教室って……」
 ユウは白く塗装された鉄扉の前に立って、大きく唾を飲み下した。
 顔が上気して、呼吸が乱れる。
 大きく息を吐き出して胸を落ち着かせる。
「し、失礼しむわーっすっ!」
 ユウは思い切って扉を開けた。
 次の瞬間、プーンと漂う鉄くさい異臭―――血のにおい。
「う、うわああああああ」
 ユウは目に涙をにじませて身をよじった。
「うるさいわね」
 いくぶん肉付きのいい女子学生が血のついたメスを握りしめながらユウを睨んだ。
「へー、こーなってんだ、ふーん、へへ……」
 おかしな目つきで不気味な笑みを浮かべる男子学生……
「な、何してるんだってぇばねえ!?」
 目の前に広がっていたのは、白衣を着た集団が鮮血をほとばしらせる奇妙な光景……
「な……なにって、マウスの解剖ですけど……集中講義で」
 おどろいた男子学生が振り向きざまに説明する。
 黒板を見ると、チョークを片手に解剖の注意書きを板書する古沢(ふるさわ)安芸子(あきこ)(医学部講師・ナントカ流の剣次郎の姉)の姿。「各部と名称をつなぐ指示線の先には矢印を書かないこと」……
「あら、速水くん」
 ユウに気づいた安芸子が声をかけた。
「あなた、こんなところに何しにきたの?」
「ふっ、古沢先生」
 きょとんとするユウ。
「ちース、先生」
 扉が開いて、レポートをもった医学生―――秦勇一郎が姿をあらわした。
「免疫グロブリン測定のIgAとIgGのデータ、そこ、おいときますんで」
「ご苦労様。あとで目を通しておくわ、秦くん」
 女医は一瞥してそう言った。
「せ、先輩、ちわっス!」
 廊下から直立不動で頭を下げる上祭実行委の二人―――バンダナとメガネ。
「あのな、オマエら、オレより後から来てんじゃねーよ」
 秦は不機嫌そうに言った。
「それよか志村、カメラ、どーした?」
「ハ、ハイ、じゃ、この年季モノの一眼レフで」
「バカか、おめーわ。デジカメでいーんだよ、デジカメで。頭つかえよ」
 レポートの束でパコッとバンダナの頭を殴りながら、秦は言った。
「うおおおおおー!? ってんなよ、コラー!! もぉキレた、ブチギレだわ、コラー!!?」
「お、おさえるだよ木村クン!! 今はがまんするしかないだよ!!」
 メスを握りしめるバンダナを必死で制止するメガネ。
「あ? 今なんか言ったか、浜?」
 まるで気にする様子のない秦……早くも先が思いやられる―――
 その時、わめきちらす上祭実行委員とは別に、安芸子の目に一人の少女の姿が目にとまった。
「あなた」
 女医は少女―――あやに呼びかけた。

                                     第50話 終


【りさこの私的なお話】
この小説のタイトルって「あるピアノ少年の恋。」って覚えてました? 
ブログ読者の方ならご存知の通り、私も高校時代に音楽室のグランドピアノを弾きまくっていたんです。
だからブログにピアノ曲をアップしてみました☆ 
また聴いてみて下さいね。
次回はいよいよ麻生先輩のヌード撮影です。おかしなことにならなければいいのだけれど……
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