強引にユウと舞をくっつけようとするバンダナ一味。何も知らない舞さんは……?
第5話 女子寮の陰謀
「あー、サッパリしたぁー」
タンクトップと下着一枚、首からタオルをかけた湯上りの千佳―――
濡れた髪からほかほかの湯気が立ち上る。
「ねぇ、舞ちゃんもお風呂、入るら?」
「うん、ぼちぼち入ろ思てんねんけど」
(↑ 舞ちゃん、関西人なんです、実は……)
舞は書きかけのレポートの耳をトントンとそろえながら答えた。
「何これ? タンホォユザーって誰?」
「ドイツ文学のレポート」
舞はかごにバスセットを詰めながら、千佳を振り返った。
「ワーグナーのオペラの脚本なの。ほら、ワーグナーって音楽家としてだけじゃなく、ロマン派文学の巨頭の一人で……」
「あたし、経済学部だで、わっかんなぁーい!」
千佳は「あーん」とそれを放り投げた。
「そ、そう? 読んでもおもろないかもね」
舞はそう言って苦笑いを浮かべた。
「じゃっ、お風呂、入ってくるね」
ガチャン―――扉の向こうへと消える、舞の姿。
「えへっ」
千佳はニヤリと薄笑いを浮かべた。
そして、おもむろにベッドの下をあさり始める―――
「いよいよ夢の4Pプレイのために、アレを使う日が来たのね」
次から次へとダンボールの中から出てくるオトナのオモチャをよけながら、千佳は目当てのものを探し出した。
「じゃーん、強烈催淫ガラナ・エキスDX(改)!」
小さな小瓶を手に、千佳は「くふふふ」と笑いを押し殺した。
「これを舞ちゃんの湯上りビールに混入して……うふふ、どこかのサスペンスの犯人みたい」
すでに期待でドキドキの千佳。
「媚薬で淫乱になった舞ちゃんなんて、想像しただけでエロすぎだわぁー」
空想の中で「あん、あんっ」と悶える舞の姿―――それって、ぜったいヤバイ!
「拓夫に内緒でレズっちゃおっかやーっ、キャー、あたしってばやらしーっ!」
床のぬいぐるみにクッション枕を投げつけながら、千佳は思わず赤面した顔を両手で覆っていた。
ところで、同じ諏訪市内の襤褸アパートの一室で―――
「うんうん、しかし、この人体の実写ポーズ集って、ホント、役に立つよなー」
ユウは趣味かつ特技のイラストの仕上げに夢中だった。
ようやくGペンで大まかな輪郭を描き終えたユウは、ペン先についたインクをティッシュでぬぐいながら、しげしげとポーズ集に目をやった。
そこにあったのは、モデルさんが裸で何かを蹴り上げるポーズ写真……
うっ……!
ユウの股間に固いものの感触が……
うわぁー、美術用のポーズ集で欲情してるのか、僕はーっ!
それってケダモノじゃんかーっ!?
必死でそれを打ち消そうとするユウ。
で、でも、ポーズ集を口実にして、女性のヌード写真を見たかったのは、やっぱ事実なのかも……。
生協の書籍部でポーズ集を買った時、「イラスト描いてるんです」とバイトの女の子に言い訳がましく弁解した自分が情けない……。
認めない、認めないぞー!
僕はあくまでイラストに使ってるんだぁーっ!
「おめ、一人でなに赤面してるだ?」
「うわあー、バンダナァーッ!?」
ノックもなしに、いつからそこにいたんだってば、コイツー!?
「おめさん、いつから人のコト、バンダナ呼ばわりできる身分になっただ? あ?」
バンダナは拳を口に当てて、息を吹きかけた。
「あっ、それは……ごめん、こっちの話だよ、誤解だよ、木村クン!」
必死の誠意が通じたのか、バンダナは拳をおさめると、机の上のイラストを手にとって、しげしげと眺めた。
「へぇーっ、ユウ、おめ、顔に似あわねぇメルヘンな趣味、もってただな?」
「メ……メルヘン……ねェ……。ハイカラな言い方だね、木村クン」
小馬鹿にされたような気がして、ユウは少しムッとなった。
「まっ、いーから俺についてこいや、ユウ。悪りぃよーにはしないでよォー」
何の脈絡もなく、バンダナはユウをバイクの後部座席に乗せると、バリバリとエンジンを回し始めた。
「えっ、うっ、うわぁ、こ、怖いよ、木村クゥ〜ン!?」
「飛ばすぜぇー」
「わぁぁぁぁぁぁー」
ドップラーしながら湖畔にひびくユウの叫び声。
振り落とされないように、必死にしがみつく19歳のユウだった。
第5話 終
可憐な舞に忍び寄る千佳の魔手……。そしてバンダナに拉致されたユウの運命は?
次回、女子寮に高らかに響く「タンホイザー」。ピアノの小公女・舞の物語。
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