ユウからひどい言葉を浴びせられた舞。この心の動揺は、なに……?
第29話 処女……!
翌朝―――
「あーあ、ンなコト言っちゃったわけ、おめえ?」
心底から不機嫌そうな顔で、バンダナは言った。
「おめーのせいで藤沢が脱がなくなったら、どーしてくれんだ、おえ?」
「な……なに言ってんの!? もとはと言えば、木村クンがフンバレ塾なんて勧めるからーっ!?」
原因の原因にまでさかのぼって、責任を回避しようとするユウ。
「お兄ちゃん、あんな暴力女、ほっといたほうがいーよ」
そこに割って入るあや。
「お、おまえ、いーかげんに東京に帰ったら!? てか、なんで舞さんとのコト、知ってんのっっっ!?」
まさか、昨日の一部始終を妹に監視されていようとは、まるで気づいていないユウだった。
「およっ」
そこでバンダナがユウの背後を指し示す。
「なっ、何!?」
反射的に振り向くユウ―――うっっっ!!!
そこにあったのは、ムスッとした表情で視線を落とす舞の姿―――
まっ……舞さん!?
ユウは思わずその場にかたまった。
「お、おはよー」
誰に言うともなく、舞は小さな声でそう呟いた。
「おっ……おはよーございますぅー……」
昨日の勢いはどこへやら、どっと罪悪感のこみ上げるユウ……
き、気まずい……
「おはよ……」
舞はもう一度、小さくユウに応えた。
(まさか速水くんからあんなコト言われるなんて、ショックやった……)
心の中で、まだ昨夜のことを引きずっている自分。
どうして?
この気持ちは、なに……?
「藤沢、わりーな。コイツ、性根がたるんでるもんだで。よーするに、バカなんだわ」
「キ……キミに言われたくないよッ!!!」
真面目くさって解説するバンダナに、ユウが噛みついた。
「でさ、写真集の撮影日程なんだけどね……」
そのままなし崩し的に撮影にもっていこうとするバンダナ―――
舞は上の空でそれを聞いていた。
(もしかして私、速水くんのコト……)
気がつくと、またユウのことを考えている自分。
(私、あせってる)
次第に見えてくる本当の気持ち―――
(私、ヌード撮る前に、処女、捨てたい……って……)
速水くんなら無害やし、遊ばれるコトもなさそーやし……弱腰やから……って―――
目の前で手を合わせながら、愛想笑いを浮かべるユウ―――その人のよさそうな顔。
(最低や、私って……)
舞はぎゅっと拳をにぎりしめた。
「ちょっと、しっかりしてよね、お兄ちゃん」
背後からあやの声が飛ぶ。
「さーて、道具も準備したし、バリバリ撮っちゃうぜ、オイラ?」
フンフンと鼻歌を歌いながら、バンダナはカメラにレンズを取り付けた。
「もしかして、あの暴力女も脱ぐわけ? うっそー、いやらしーっ……エロっ」
「コ……コラッ!! なんてこと言うんだ、おま……」
舞に敵愾心を剥き出しにするあや。
そして、必死になってそれを誤魔化そうとするユウ―――
(あれが速水くんの妹……かわいい子)
胸が粟立つのを抑えることができない舞。
その時、機嫌よくカメラのレンズを磨いていたバンダナが、「うっ」と声を発して、手からレンズを取りこぼした。
それはコロコロと転がって、一人の男子学生の足元で止まった。
「いい写真、撮れそうですか、木村くん」
黒のポロシャツに濃紺の袴―――その人物は、レンズを拾い上げながら、穏やかに微笑んでみせた。
自然に向けられるユウの視線―――
だ、誰、この人……
第29話 終
恋に臆病な舞。ユウに心を許していた自分に気がついて……
次回、あやの身に異変が!? その時、ユウは……
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