第28話 舞さんなんてキライだよ!
「まさか、これでも怖いとかゆーんやないやろね?」
竹刀を捨て、丸腰となった舞―――夜の道場に緊張が走る。
「は……ははっ……そんなぁー……はは」
リアクションに困り、ユウは竹刀片手に引きつった笑みを浮かべた。
「じゃあ、僕もその、軽く打ちますからぁ〜……ははっ、当然だぁーね」
「じゃ、始めよっか」
表情を変えずに、舞は言った。
「んじゃっ」
ユウはへっぴり腰に構えると、形ばかりの掛け声を発した。
「そりゃーっっ、えーいっ」
ドタバタと突進し、見え見えのオーバーリアクションで剣を振り下ろすユウ。
「てやーっ」
ブンッ
体を捌いて入身となると、舞はそのままユウの右側に回りこんだ。相対していたはずの舞が、突然、視界から消える―――
次の瞬間、舞はユウの真横に体を寄せ、竹刀の柄に手をかけた、
「うわあ!?」
舞が小手をひねった瞬間、ユウの体は腰からブワッと宙に浮き上がった。大きな空気の塊にみぞおちを突き上げられるような衝撃―――
まるで無重力状態のように―――道場の床、神棚、格子天井が視界をめぐる。
なにこれ、なにが起こってるの、いったい!?
「うわああああ」
ユウの目に涙がにじむ。
「天っっ誅―――――――っっ!!!」
今いちど丹田に気をこめる舞。
ユウの体は、もう半回転して左の肩から道場の床へと叩きつけられた。
「げっばぁしっっ!!」
床板が抜けるかと思うほどの衝撃―――
舞はユウの腕から手をはなすと、パンパンと袴を叩いて服装の乱れを整えた。
(お、お……鬼ぃぃぃぃ―――――っっっ!?)
鼻血と涙でぐちゃぐちゃの顔面を向けて、ユウは床板の上で震えていた。
(もう、舞さんなんてキライだよっ! 僕と感性あわないよ、この人!!)
何だよイキナリ!?
ユウは心の中で毒づいていた。
舞はいくぶん緊張した面持ちでユウを見おろしていた。ハアハアと乱れた息に小さく肩を上下させながら。
「果し合いなんやから、真剣勝負のつもりでやらな、意味ないやん?」
舞は言った。
「なんで本気でやろーとしないの!? いつもおちゃらけばっかで」
「あっ……あのねぇーっ」
ユウは痛みをこらえて、どうにか身を起こした。
くっ……くっそー、下手に出てれば、いいたい放題……
ふつふつと怒りがこみ上げる。
「そんなねえ、勝手なコト言われてもねえ、僕はもともとこんなコト、興味ないの!!」
拳を握りしめ、舞を面罵するユウ。
人のコト好き勝手いいやがって……舞さんなんて……舞さんなんて……
二人の間に気まずい空気が流れる。
速水くん……
舞はうつむいたまま、床に目を落とした。
ユウを正視することができず、黙ったまま立ち尽くしていた。
それが、その日の稽古のすべてだった。
第28話 終
ついに舞に口答えしてしまったユウ。ショックを受ける舞……
次回、気まずい雰囲気の二人。そして舞の「処女問題」の真相が明らかに……?
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