剣次郎との果し合いについて、舞に理解を求めようとするユウですが……
第27話 夜の道場で
稽古終了後―――
「―――つまり」
夜の道場に舞の声が響いた。
「小学五年生と果し合いをするから、剣道を教えろ……と?」
ブチブチッと音がして、舞の血管が二、三本切れた。
「ちっ、違っ……だって、その小学生、マジ強いんだって!!! ナントカ流なんだよー!?」
間近で見る舞の和装に見惚れる余裕もなく、必死になって身振り手振りで苦境を訴えるユウ―――
(ひぇーっ、やっぱ僕ってマジ嫌われてるワケぇーっ!?)
泣きたい気持ちを抑えながら、ユウは懇願を続けた。
「あのですねえ、一応ねえ、僕もねえ、塾の採用かかってるわけだしぃ、とにかくね、一度ね、剣道やってみるのもいい経験だぁね、うん、そっ」
必死の説得が通じたのか、それとも、もうどうでもよくなったのか、舞は竹刀をとって重い腰をあげた。
「わかった。そんなら、とりあえず練習してみよ?」
スッと腰から背筋を伸ばして立ち上がると、舞は竹刀の柄に手をかけた。
ドキッ―――
刹那、ユウの心に不思議な感動がかけめぐった。
舞さん、やっぱきれいだなあ……
その美しい立ち姿に見惚れながら、ユウは思った。
やっぱ僕、本当に舞さんのことが好きなんだ……
「速水くん、立って竹刀をとって」
舞の言葉が、ユウの現実に連れ戻す。
「はっ……はいっ」
な……なんか緊張するな……
夜の道場―――防具もつけずに相対する二人、舞とユウ。
中段に構え、ユウの喉元に切っ先をつける舞。
内股のへっぴり腰で、舞の構えを真似ようとする猫背のユウ。
「そんなら、いざ」
「はっ……は」
返事をしようとしたその時だった。
「トア―――――ッ」
遠間から一足に振り下ろされる舞の飛びこみ面―――
「うっ、うわああああーっっ」
竹刀を放り投げ、悲鳴をあげながら背を向けるユウ。
「ちょおっ、むわってぇぇー!?」
ユウは足をもつれさせ、床に尻もちをつきながら、嗚咽を漏らした。
「そんな、イキナリやれっつってもねえ、で、で、で、できるわけないでしょっ、フツー!?」
予想外の展開に、ユウは本気で舞に抗議を申し立てた。
「あのなー、速水くん」
舞は怒りをこらえるようにして目を閉じた。まなじりがピクピクと震えている。
「そんなんやったら、小学生に斬られて死んだほーがマシなんちゃうの?」
や……やばい……舞さん、完全にキレてる……
それとも、まさか授業や合コンでのこと、まだ根にもってるとか!?
イヤイヤと首を振って立会いを拒むユウ。
「……しょうがないわね」
舞は竹刀を床に投げ捨てた。
「私、素手でいーねん」
「ええぇーっっっ!!?」
舞の言葉に唖然となるユウ。
舞さん、本気でゆってるのー!?
まるで舞の言動が理解できないユウだった。
第27話 終
まだあのことを根にもっているのか、舞の恐怖のスパルタ稽古は続きます……
次回、ついに決裂したユウと舞。大好きな舞に罵声を浴びせるユウ……
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