フンバリーノ学園の門を叩いたユウ……果たして先生なんてできるのかしら?
第25話 フンバリーノ学園
「フンバリーノ学園、フンバリーノ学園……と」
地図を頼りに、ユウは駅裏の安ビルの外付け階段をのぼっていた。
でも、想像していたよりは普通の外見でよかったよ、塾……
「あのっ、失礼しますっ」
ユウはいつもの調子で塾のドアを叩いた。
「あのですねぇ、ボク、木村くんに紹介されて、バイトの面接にきた速水ユウという者なんですけど!?」
「ああ〜、ハイハイ。ま、どーぞ、そこから入っておかけになって待ってて下さい。すいませんね〜、突然のことで」
ひょろっとした塾長がカウンターの向こうから姿をあらわした。
あの、デスクのパソコンから「ピンボール」の音楽が聞こえてるんですけど……(まさか遊んでる!?)
塾長はパソコンのスピーカをミュートにすると、ユウを伴ってマンツーマンのブースへと案内した。
「ま、上大の学生さんですから、学力のほうは大丈夫だと思いますよ、ええ」
早くもユウに太鼓判の塾長。
「は、はいっっ!! でも、中学の勉強とか、ちょっと忘れてるんで、一生懸命ですね、その、自分自身も勉強をですねぇ!?」
「いやいや、大丈夫、大丈夫。すぐに慣れますよ」
そんなに気負わないで、と塾長はユウをなだめた。
そ、そうなんだ……
ユウはホッと胸をなでおろした。
「じゃ、小学校と中学校の全教科、あとは高校の理系ということで、授業のほう、みていただけますかねえ?」
「あ、できればですねぇ、中学も数学と理科で……あ、あと、歴史なら得意です、ハイッ。それと高校の科目はちょっと自信が……」
「ハイハイ、大丈夫ですよ〜……中学は理系と歴史……と」
調査書の指導科目の欄に、塾長はペンを走らせた。
「じゃ、早速だけど、試しにマンツーマンで小学生の算数、教えてみますか?」
「あっ、ハイッ! ぜひ体験させて下さいっっ!!」
柄にもなくやる気満点のユウ。もちろん、態度だけだけど……
「じゃ、彼、三番教室で待ってますんで。ははっ、そんなに緊張しないで、リラックスしてやって下さい、速水さん。小五の男の子で、古沢剣次郎くんっていうんだけど、お願いしちゃっていいですか?」
「は、はいっっ、ボクも子ども、好きですからっっ」
と、引きつった顔で答えるユウ。
「はは、そうですか。じゃっ、たのんます」
と、手を合わせるようにしてピンボールへと戻る塾長。
なんだか塾長の仕事を代わりに押しつけられたような気が……
気を取り直し、ドアをノックして、教室に入るユウ―――
こういうのは最初が肝心、ビシッとなめられないように……
「は、はは。キミが剣次郎クン? は、はじめまして、速水ユウっていいますっっ。今日はね、ボクがねぇ、キミのコト……」
「あ? 誰だよ、アンタ」
ひいいいい!?
いきなり口ごたえ!?
「なんだよ、いつものバンダナのあんちゃんじゃねーんかよ」
「バ……バンダナ!? 木村クンのこと……ですか!?」
小学生相手に早くも敬語のユウ。
「ま、いーや。俺さ、これから剣道の稽古あるから、フケるわ。いーだろ?」
「い……いーわけないでしょっっ!?」
立ちかけた剣次郎を必死で押しとどめようとするユウ。
「かてぇこと言ってんじゃねーよ、オマエはよ!」
ドスッ
竹刀の柄で思い切りどつかれ、ユウはもんどりうって倒れた。
「うわ、なにコイツ。マジ弱ぇんだな、あんちゃんって」
「あ……あのねえ!?」
ユウはどうにか声をふりしぼった。
「大人はねぇ、こーゆー時にねぇ、子どもとかに手とか出したらねぇ、いけないんだぁ?」
「は? なんだそれ。そんなの知らねえし」
剣次郎は椅子の背を前にして、竹刀を肩に担いで言った。
「オマエさー、どうしても俺に授業受けさせたかったらさ、俺と勝負して勝ってみろよ。ゆっとくけど、俺、強いよ?」
「は……はは……そだね」
ユウは作り笑いを浮かべて言った。
「じゃあ、こんど試合するってことで、今日は塾でお勉強しよーね」
ここは言うこと聞くふりをして、うまいことまるめこんで……
剣次郎は「ふーん」と頷くと、大人しく席に戻った。
フウ、作戦成功か……と思った、その時だった。
剣次郎は言った。
「じゃ、あんちゃん。約束だからね? 絶対だよ、果し合い」
「は、はは……またその時になったらね。でも、忙しいから、いつになったらできるかなー……はは、また今度ねー」
「約束だからね」
じっとユウを見つめる剣次郎。
「約束やぶったら、この塾の先生、みんなウソツキだって言いふらすからね」
「ちょっ……ちょっとまってぇぇぇー!!?」
そんなコトされたら、この塾、つぶれるってばー!?
「じゃ、来週は勝負だからね、絶対だからね?」……
子ども相手に、早くも馬脚をあらわしつつあるユウだった。
第25話 終
いきなり小学生に正体バレまくりのユウ。剣道なんてしたことないのに……!?
次回、ユウが舞に入門!? また波乱の予感が……
【りさこの苦悩】
テンポよく台本小説的に書いてきましたけれど、なんかしっくりこない、今日この頃でした☆
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