憧れの舞さんがヌード写真集なんて……それに処女じゃないかもなんて……。妄想ばかりがつのるユウですが……
第20話 アホの舞ちゃん?
「あ、あのっ、ちょっといいですか、木村クン?」
「あン?」
拓夫はバックミラー越しにユウの顔を振り返った。
「そ、そのですねぇ、やっぱヌード写真集なんて、その、なんだぁね……それも、舞……藤沢さんのなんて……」
「おめ、今さらなに言ってるだ?」
アクセルを開けたまま、湖畔のブラインド・カーブを攻めまくるバンダナ。
「うわぁぁー!? 死ぬ気なの、木村クゥーン!?」
「おめよ、ミス上大が脱ぐって言ってんだぞ? それとも何か?」
拓夫はユウの心を揺さぶるように言った。
「おめ、藤沢のハダカ、見たくはないだだか? こんな機会でもねえ限り、おめには藤沢のハダカなんて、一生かかっても無理だぞ?」
「ふっ、藤沢……舞さんのハダカ!?」(← いちいち言い直すのやめなってば……)
ま、舞さんのハダカ……
「おい、おめ、なにおかしなコト考えてんだよ?」
バンダナはユウから離れようとして身をよじった。
「なんか、腰とか背中のへんに、かたいモノの感触がするだぞ? 気色わりぃだよ、おめ、ユウ!?」
「いっ!?」
思わず股間を押さえるユウ。
「バ、バカだだか、おめは!? 手ェ放すなぁ!?」
「うぶぅっ」
大きく傾いたユウの体が、バックミラーの彼方に吸い込まれてゆく―――
ペチッ
カエルのつぶれたような音が、バンダナのはるか後方で聞こえた。
「めーん、どぉーっ」
凛々しい女子剣士の叫び声が、上大・振武館道場にひびく。
「小手ッ、小手ぇーっ、突きッ、突きッ、突きぃぃぃぃーっっ!!」
鬼のように振り下ろされるナギナタの打突に、壁際まで押し込まれる一年生部員―――
「ちょっ……舞ちゃん、それくらいにしときなよぉー! どーしたのよ、一体!?」
絵里子に声をかけられ、舞はようやく動きを止めた。
ハァハァと荒い息に全身を上下させる舞。
「えーん、藤沢先輩が怖いんですぅぅぅーっ」
思わず絵里子に泣きつく一年生……
二人に背を向けたまま、舞は面を下ろすと、うつろな目でじっと床を見つめていた。
昨日は勢いで思わずあんなコト、ゆーてしもたけど、ど、どないしよ……。まさか、ヌードなんて本気で……
ドキドキドキ―――考えただけで鼓動が速くなる。
うちのアホっ! アホ、アホ、アホ、アホーっ!!
ぐすんと涙ぐみながら、舞は心の中でアホをくりかえしていた。
「やっホーイ!!!」
稽古場の厳粛な空気を破る、脳天気な千佳の声。
「ムッ、問題児」
絵里子の視線が険しくなる。
「舞ちゃん、つぉーいっっ」
千佳は親指を下に向けて、ノックアウトのポーズを作ってみせた。
「な……な……何か用事?」
まさか写真集の話―――!?
思わず、踵から後ずさる舞。
「うん、ちょっと」
次第に間合いを詰めてゆく千佳。
「実わぁ〜」
千佳は言った。
「工学部のユウくん、バイクから転落して、入院しちゃったのよぉお!?」
「ええーっ!!?」
ナギナタの柄を握りしめたまま、舞は心配そうに声を上げた。
けれど、慌ててそれを打ち消すように背を向けて言った。
「そ、それがどーかしたん?」
「またまたぁー、かわいくないんだからぁー」
千佳は舞を振り返りながら言った。
「ホントは気になってんずら、ユウくんのコト?」
「ううん、全然」
「ウソ」
「ホント」
次第に向きになる二人。
「舞ちゃんのウソツキーっっ」
「だって、ホンマやもん!!」
二人の女子学生の叫び声が、午後の道場にいつまでも響いていた。
第20話 終
微妙に揺れる乙女心……なんとなく、ユウのアホなところに親近感を抱き始めた舞ちゃん!?
次回、入院中のユウにハプニング? 麻生先輩の意外な過去とは……。
【知らなくてもいいような設定、話しますね?】
バンダナ(経済)と千佳(経済)とメガネ(医学)は高校の同級生なんです。詳しくは『恋するひな子先生』をご覧ください<(_ _)>
なお、最近、世の中にはダメ男に萌える男子がいるという意外な事実を知らされました。
奇特な方に支えられている小説だったんですね、このお話って……☆
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