ユウの武勇伝の相手にされてしまった舞。屈辱以外のなにものでもない様子……
第19話 脱いでもいーねん!
こんなボケ僧が、ミス上大・藤沢舞に夜這い―――!?
周囲の視線を一身に浴びるユウと舞。
唇を噛みしめ、涙ぐんだ目でユウを睨みつける舞。
怒ってる……舞さん、完全に怒っちゃってる!!
(こ……この状況、なんて説明したらいいのぉぉ〜っ!?)
てか、しても誰も聞いてくれそうにないし……―――
ユウは助けを求めてバンダナを振り返った。
(ったく……)
バンダナはため息混じりに言った。
「先輩、ちがうんスよ!」
麻生先輩のグラスにビールをつぎ足しながら、バンダナは説明した。
「藤沢と同部屋の千佳が、大学に忘れモンがあったもんだで、俺とユウとでそれを届けに行っただけっスよ。そしたらユウの奴がバイク酔いして、女子寮の庭にゲロって―――」
「なんだ、そーだったの?」
「藤沢だって、単にラフなカッコで湯上りビール飲んでたってだけのことずら? 俺た、女子寮の中にいたわけじゃないもんだで、知らねーけど」
「そーよね……ま、そんなとこだろーと思ったわ」
麻生先輩は納得してビールに口をつけた。
(バンダナ……なんて口八丁な……)
よくもここまで口からでまかせのウソ八百が……
でも、助かったよ。
「なははっ、さすが木村クンっっ、説明するの、ホント、うまいですぅ〜」
すかさずユウは得意のゴマをすって、バンダナにすりよった。
「お……おめさんなぁ……」
タバコに火をつけながら、バンダナは言った。
「おめさん、どーしていつもいつも舌禍事件ばっか引き起すだ?」
「ぜ……ぜっかじけん!? な……なんですかっ、それっ!? 犯罪!?」
「舌の禍って書くだよ! このクソ理系!! 常識ずら!?」
いきなり常識を疑われ、ユウは向きになってバンダナに突っかかった。
「じゃあねぇ、聞くけどねぇ、木村くんはねぇ、メッキの均一電着性ってさぁ、何のコトだかわかる!?」
「知るわけねーずら、ンなモン。知りたくもねえ」
まったく取り合う気配すらないバンダナ。
「あの……私……そろそろ……」
話の切れ目を見計らって、舞がバンダナに申し出る。
「なに言ってるだ、藤沢。ま、飲めよ」
「で……でも、私は……」
言いながら、舞はグラスを差し出した。(← 飲ませ上手なバンダナ)
「なにウジウジしてるだよ、藤沢ぁー」
バンダナはグラス片手に舞の顔を見た。
「ふだん通りにビッとしてりゃよぉー、うちの大学にはおめさんよりいい女はいねーんだでよ」
舞は羞じるようにして目を伏せた。
いつもなら素直に受け入れることのできる賛辞さえ、何か刺のある言い方に聞こえて……
舞は無意識に唇を噛みしめた。
「でもな」
バンダナはグラスをもつ手の人差し指を立てて、口元でそれを振ってみせた。舞の注意を惹きつけるように。
「どんなに美人でも、自分自身を見失っちまうと、自意識過剰で欲求不満まるだしの、ただのコンプレックス女―――だぜ?」
そこでバンダナはユウの顔を見た。
「だーっ、なんでその部分だけボクの顔みてゆ〜のっっ!?」
舞は黙っていた。
険しく寄せた眉が、屈辱に震えていた。
「藤沢、おめ、いつも通りにしてたほうがいいだぞ?」
「え……」
「そーやって、急に地味な服になるほうがよ、なんか、かえって不自然なんだよ」
バンダナは舞のスポーツウェアをなめまわすようにして見た。
舞は思わずそれを手で隠そうとした。
「だでよォー」
バンダナは言った。
「脱いじまえや、そんな服」
え―――舞は思わず息を呑んだ。
バンダナの言葉が心を掻き乱す。
コンプレックスとプライドがぶつかって、想いが千々に乱れる。
バンダナは言った。
「そんなカッコで合コン来るようなおめは、俺が認めてた藤沢舞なんかじゃねえ」
ひっ、ひぇーっ、キツイ〜!
ユウはいたたまれない気持ちでバンダナの言葉を聞いていた。
「俺はよ、藤沢」
バンダナはたたみかけるように続けた。
「そんなつまんねぇおめさんなんかよォ、これ以上、見たくなんかねーんだよッ」
バンダナの挑発―――プライドの賭け。
「おめ、もっと自信もっていーだぞ、藤沢!」
その言葉に、舞は居すくんだ。
ここで逃げたら、負けを認めたことになる―――そう思った。
傷ついたプライド、肥大化する自意識―――見透かされたくはなかった。
ユウは固唾を呑んで二人のやり取りを聞いていた。
ゴクッ―――舞の喉が大きく鳴った。
「わ……わかっ……た」
「えっ」
ユウは思わず声をあげた。
「木村くんがそこまで言うんなら」
舞は言った。
「みんなも脱ぐんやったら、うちも脱いでもいーねん。上祭の写真集」
えっ……
まだ信じられないといった顔の木村、ユウ、麻生。
「ふ……藤沢……」
バンダナは震える声を押し殺しながら言った。
「よく決心しただぞ、藤沢―っ!! ウソって言っても遅いだぞーっ!!」
「そーこなくっちゃね、やっぱ美人は!!」
無責任な外野の声が入り乱れる。
ユウはなすすべもなく話の流れから取り残された。
(ち……違うんだ……。舞さん、何か勘違いしてるんだ、きっと……)
話の飛躍にショックを隠せずにいるユウ。
舞は黙っていた。
わずかに上気した頬が、興奮を物語っていた。
(それとも……)
ユウは思った。
(やっぱ、舞さんだって今時の子だから、ヌードくらい何とも思ってないのか!?)
「もち先輩も脱ぎますよね!?」
「別にあたしはいーけどさー。見たいの? あたしの裸?」
そんなバンダナと麻生先輩の会話―――
それを聞きながらユウは思った。
(そんなに簡単に脱げるってことは、舞さんって、もしかして、処女じゃないのかぁーっっ!!?)
そんなーっっ、真面目に勉強して国公立に入ってきた人が、そんな、そんなーっっ! だって、高校、進学校でしょっっ!!?
そんなユウを尻目に、そばでバンダナが叫んだ。
「じゃ、希望者から順に撮っていくでな! よろしくー!」
だが、何も耳に入っていないユウだった。
第19話 終
ひょんなことから脱ぐことになってしまった舞。ユウの進学校処女妄想に動揺が……
次回、舞のヌードが頭にちらついて離れないユウの身に悲劇が……?
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