しばらく更新をご無沙汰していました。
公私ともに大変忙しかったものですから……。
第177話 宴の後
あの夜からどれだけの時が流れたろう?
拓夫は部屋の私物をまとめながら、過ぎ去った月日に想いを馳せた。
麻生めぐみとはもう会っていない。
藤沢舞も華々しい表舞台から姿を消した。
全ては一夜の夢のように。
いくつもの悲しい出来事があった。
それを一つ一つ、かみしめるように思い出してゆく。
あの夜、下半身を露出した拓夫を、麻生は拒んだ。
どうしてもダメだった。
なぜ?
それはわからない。
そそり立った男のそれ――
それを間近に見ると責められているように感じるのだと、麻生は言った。
それ以上、どうすることもできなかった。
大学時代のあの出来事が脳裏をよぎった。
ごめんね……
麻生は力なくそう言った。
その目に涙はなかった。
それはただ深い諦めの色を湛え、無言のうちに沈んでいた。
あらゆる言葉が無力さにうちのめされ、埋めようのない懸隔に呻吟した。
それが二人にとって、最初で最後の夜となった。
抑えようのない欲望をもてあまし、その晩は彼女の前で一人でぬいた。
ごめんね……
最後にもう一度、麻生は言った。
それが別れだった。
その後、彼女がどんな道を歩んでいるのか、それはわからない。
だが、いつまでも同じ仕事にとどまり続けることは不可能に思えた。
そして、その先に進むことも。
何度か連絡を取ったが、ダメだった。
話せば話すほど、彼女が心を閉ざしてゆくのがわかった。
伝わらない想いがもどかしかった。
だが、やがてそれは苛立ちに変わり、激しい言葉となって彼女の心に突き刺さった。
あなたと話すのが怖い、苦しい……
麻生めぐみは、くりかえし何度もそう訴えてきた。
けれど、やがてそれも聞かれなくなった。
話すこともなくなった。
寂寞とした思いの中に、奇妙な安らぎがあった。
これで楽になれる……
全てが終わった後、拓夫の胸に去来した想い。
これで心の重しを下ろすことができる――そう思った。
それが最終的な別れとなった。
決定的な。
次は藤沢舞のこと。
彼女の辿った運命もまた数奇なものだった。
第177話 終
次回は舞さんのその後を昔語り風にお話します……。
順風満帆に見えた彼女の人生に何が……?
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