“ハルカ”に会うためにライブハウス“竜鳴館”に足を運んだ舞と鈴木。その独特の雰囲気に舞は……
第129話 竜鳴館
そこは文字通り、場末のライブハウスそのものだった。
むせ返るようなパープルヘイズ、たちこめるスモーク、喧騒、混沌……
アルコール片手の立ち見客をよけながら、どうにかステージの前へと進む。
そこに置かれていたのは場違いなほど幻想的なクリスタルピアノ―――美しく透き通るアクリル製のそれが、安っぽいスモークの向こう側で沈黙のうちに憩っていた。
「初めてですか、こういう場所は」
鈴木が訊いた。
「こんな薄汚れたライブハウスですが、この竜鳴館は、過去には大物を何組もメジャーに送り出しているんです。ほら、あそこのカウンターでブッキングマネージャーと一緒にいる男」
鈴木は舞に目配せした。
「評論家の富山一成です。彼の口利きでメジャーデビューしたアーティストも少なくありません。音楽雑誌やラジオ番組で辛口の評論を手がけていますが、彼の耳には定評があります」
鈴木の言葉に舞は頷いた。
プロの目に留まろうと必死のインディーズバンドやアマチュアたち。
その過酷な舞台裏。
ライブは五組のバンドによる対バンだった。
持ち時間は一組当たりセッティング別で三十分―――“エロス”のは四番目の出演者だった。
「チケットは、そこそこ捌けてるようですね」
鈴木は言った。
「各バンドにノルマが割り振られているんです。窓口で客がどのバンドを見に来たかスタッフが確認していたでしょう? 演奏終了後のチケット清算のためです」
「厳しいんですね」
舞は美しく輝くクリスタルピアノを見つめながら呟いた。
「誰もがライブには身銭を切っているんです。それだけに真剣な演奏を聴くことができる―――それが魅力ですね」
そんな鈴木の言葉が、喧騒に吸い込まれて消えた。
パワーアンプに灯が点り、TOA Z-DRIVEが唸りをあげる―――
激しいディストーションが音響を捻じ曲げ、聴覚を歪ませる。
それがライブの幕開けだった。
第129話 終
あの、大変恐縮なのですけど、文中の音楽評論家(架空)によく似た名前の東大出身の有名評論家さんって、私の高校の先輩なの(-_-;) 他意はないから怒らないで、先輩!!
あと、竜鳴館ってゆーのも母校のバンド系の人たちの練習室の名称なの。もっとも、今は改築されて消滅しちゃったけれど……
なお、久しぶりに小説の原作漫画の原画をアップしたのね。こちらです。
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