合コンの翌日、いつものようにお店で働く舞のもとに、一人のお客が……
第109話 フェラーリの男
「君、ちょっと」
入口付近からわずかな苛立ちを伴って響く男の声。
あわててマネージャーが小走りに応対に向かった。
舞はよごれ一つなく磨かれたガラスの外に目をやった。
駐車場に横付けされた赤のフェラーリ―――男の乗ってきたそれ。
(誰なのかしら、あの人?)
舞はマネージャーの駆けて行った方向を目で追った。
「スタインウェイのルイ15世モデル、見せてもらえる? あるんでしょ」
「あ、あの、お客様」
マネージャーの顔に戸惑いの色が浮かんだ。
スタインウェイ・ルイ15世モデルO-180―――価格にして2000万円は下らない最高級ピアノ。
いきなり来て、ルイ15世モデルを見せろだなんて、いったい何者なの?
「申し訳ございません、お客様」
マネージャーは男の機嫌を損ねないように気を遣いながら言った。
「あの、あいにく日本には在庫がございませんもので……誠に恐れ入りますが、このモデルはご注文をいただいてから製作する形で承らせていただいておりまして。念のため、ニューヨークかハンブルクに在庫の確認を」
「なんだよ、それ? ここ、スタインウェイの正規特約店でしょ? どうなってんだよ、それ」
「も、申し訳ございません」
マネージャーは頭を下げた。
「よろしければ、今日のところは、通常の黒の艶出塗装仕上げのO-180など参考までにご覧いただいて……あ、藤沢さん、お客様をご案内して。それと、紅茶を二人分、応接室におねがい」
「あ、はい」
舞は手にしたペンを書きかけの伝票の上に置くと、男のもとへと急いだ。
あくまで不機嫌そうな男の顔。
普通のO-180だって艶出で924万円―――決して安くはないのに。
(あの人、どこかで……)
見覚えのあるその顔―――
それはどこで見た顔だったろうか。
第109話 終
私も実はスタインウェイのお店の会員さんなので、地元でB-211(1134万円)を借りてガン弾きしてるの(壊れないかしら……?)
今回は、そんな私の絵のお仕事のお話をブログに書いてみました。
記事URL→ http://risako-novels.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-790e.html
2000万円ピアノを特注するフェラーリの男。いったい誰?
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