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DAGGER 戦場の最前点 作者:BLACKGAMER

DAGGER 有色の戦人

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02章 気まぐれな稽古-2


【セレノア視点】

建物から離れて、すぐのところ。
そこで、ティストとアイシスは向かい合っていた。
アイシスの額に浮かんだ汗が、髪を伝って地面に落ちる。
ティストも、乱暴に袖口で頬を拭っていた。
二人とも、息があがりはじめている。
やっぱり、ずいぶん前から始めていたみたいね。
「ッ!!」
「まだまだぁっ!!」
それでも疲れを表情には出さず、剣をぶつけあって、楽しそうに笑っている。
ったく、人の気もしらないで、この二人は…。
「ったく、もう」
文句の一つも言ってやりたいけど、戦いを止めるなんて無粋な真似はしたくない。
隅のほうで、父上とサリおばさんが、並んで二人の戦いを眺めている。
「………」
離れて見るかどうか少しだけ迷って、しょうがないから父上の横に並ぶ。
あそこが一番あの二人の邪魔にならないんだから、しょうがない。
「本当に、いい顔をするな。ガイが熱くなるのも分かる気がするよ。
 年甲斐もなく、あの中に混ざりたくなる」
父上の言葉にうなずいて返し、視線を二人に戻す。
単なる実戦なのに、アタシが知っている稽古とは、まるで違う。
命を奪い合う緊張感なんて、欠片もない。
和やかで、じゃれあっているみたいに楽しそうだ。
「遅い」
「くぅっ」
やはり、全てにおいてティストのほうが一回り上ね。
アイシスも悪くはないけれど、ところどころで足りていないし、浅い。
それに、あの乱戦のときに比べると、アイシスの動きは精細を欠いている。
まあ、あのときは負ければ死ぬという覚悟が、そうさせていたのかもしれないけど…。
自分で自由に力を発揮できないのは、ちょっと問題ね。
「…!」
せっかくだし、アイシスと話していたティストの鍛え残しを探してみよう。
目の前の動きから、ガイ・ブラスタと戦っていたときの動きを、より鮮明に頭の中で浮かべる。
おそらく、あのときの動きが上限のはずだ。
腕力も脚力も、まあまあ…敏捷性も悪くない。
戦いに必要なものは、どれも高い位置でそろってるように見える。
あれだけの手練は、魔族でもそういない。
「ッ!!」
「やああぁっ!!」
もう、余地なんて、残ってない?
瞳に意識を集中して、対峙する二人の動きを完全に捉える。
二人が足を止めるまでの数十分間、目を離さず見続けていた。
それなのに、ティストに足りないものが、アタシには分からなかった。



【ティスト視点】

これ以上続けたら、本気で熱が入りそうだ。
さすがに、魔族の領地で力尽きるまで訓練するわけにもいかない。
「ここまでにするか」
「はい」
互いに距離を取って間合いを外し、ダガーを鞘へ収めて両手で捧げ持つ。
アイシスも、鏡に映したように俺と同じ動きをしていた。
「ありがとうございました」
二人の呼吸があったところで、礼を交わす。
俺たち二人の間で取り決めた訓練終了の儀礼だ。
「………」
息をつき、俺たちが緊張を解くと、まばらな拍手があがる。
振り返れば、レオンとサリが見世物を見た観客のように手を打っていた。
セレノアだけは、ふて腐れたように腕を組んで、不機嫌な目でこっちを見ていた。
気づかないうちに、勢ぞろいしていたようだな。
「他人の技というのは、見ているだけでも面白いね。
 二人とも手加減しているとはいえ、なかなか見応えがあったよ」
「この程度の力量しか見せられないのは心苦しいが、期待に添えたのなら何よりだ」
社交辞令の世辞に対して、こちらも皮肉を込めて返す。
レオン・グレイスが脅威を感じるような物は、今の訓練では、一撃も存在しなかったはずだ。
「次は、全力を見せてほしいものだね」
泰然と笑って俺の言葉を流すと、今度はアイシスへと視線を向けた。
「君も、本当に成長したね。はじめにクレネアの森で見たときとは、比べ物にならない」
「あ、いえ…そんな…」
惜しげのない賞賛を受けて、アイシスが恐縮する。
妹を褒めてくれるのは、悪い気はしない。
だが、そんな茶番をするために、俺たちをここまで連れてきたわけじゃないはずだ。
「ご機嫌ついでに教えてくれないか? ここで、俺に何をさせるつもりだ?
 それとも、黙っていなければならない理由があるのか?」
語調を強めた俺の言葉に、レオンが見せ付けるようなため息で返す。
肩をすくめて見せてから、ゆっくりと話し始めた。
「やれやれ。本当に…若さとは、せっかちなものだな。
 明日の正午までは、自由にしていてくれてかまわないよ。適当に時間を潰していてくれ」
「明日、何があるんだ?」
「話してしまったら、つまらないだろう?
 本当は、時間も教えるつもりはなかったんだが…心の準備は必要だろうからね」
面白い冗談を言ったつもりなのか、レオンが笑みを深める。
つまり、明日の昼までに覚悟をしておけ…ということか。
「気遣い、傷み入るな。身体のほうも万全にしておくよ」
「そのほうがいいだろうね。では、楽しみにしていてくれ」
笑みを残してレオンが背を向け、その後ろにサリが追従する。
どうやら、これ以上は教えてくれないらしいな。
「セレノアは、何があるのか知ってるのか?」
「知らないわ。父上の秘密主義は徹底してるもの」
不機嫌そうな顔からすると、本当に知らないみたいだな。
手がかりはなし…か。本当にあらゆる事態を想定したほうが良さそうだ。
「これから、どうしますか?」
「療養して過ごすのもいいが、退屈は考える時間が出来て嫌だな」
レオンのとっておきのことを想像するだけで、寒気で風邪をひきそうだ。
身体を動かして、気を紛らわせたい。
「今日のところは、怪我しない程度に訓練をして、時間を潰すか」
「だったら、魔族の稽古でも試してみる?
 よっぽどのバカでもない限り、怪我しないわよ」
思いがけないセレノアの提案に、アイシスと顔を見合わせる。
俺の問いかけの視線が分かっているのか、アイシスは小さくうなずいて見せた。
なら、まずは話を聞いてみるかな。
正直に言って、魔族があの強さを得るためにどんな訓練をしているのかは、非常に興味がある。
「どんな内容なんだ?」
「髪解き組み手…って、知ってる?」
「かみとき?」
組み手は知っているが、『かみとき』なんて言葉は知らない。
どうやら、魔族に伝わる特殊な訓練法らしいな。
「やっぱり、知らないみたいね。
 引くだけで取れるように髪を何かで結んで、相手のものを先にとったほうが勝ち。
 相手の髪留めにしか触れてはいけなくて、それ以外の部分に触るのは、反則。
 当然、魔法による攻撃も禁止ね」
「つまり、攻撃や防御は考えなくていい…ってことか?」
「そういうこと。
 本来は、相手に怪我をさせないための、子供用の稽古なんだから」
必要なのは、相手に追いつくための脚力、相手の攻撃を避ける動体視力と反射神経。
それに、髪留めという小さな標的だけを正確に狙うだけの技量も必要だ。
子供用という言葉でまとめられるほど、簡単な訓練じゃなさそうだな。
「手加減できない子供への配慮か。いろいろと考えてあるな」
「父上が言ってたけど、人間は、そういうときに手加減して怪我のないようにやらせるんでしょ?
 魔族は、そんなことしないわ。出し惜しみする癖がつくと、自分の力を自由に解放できなくなるから。
 加減なんて、最後に覚えればいいのよ」
「なるほどな」
乱暴な話だが、同意できる部分も多い。
手加減なら誰にでも出来るが、自分の力を極限まで引き出すのは、なかなかできるものじゃない。
そして、限界を伸ばしたいのなら、全力で使い果たすのが一番の早道だ。
「最後に、場所の説明ね」
そういって、セレノアが右手を振るう。
俺たちを中心に桃色の炎が輪となって現れ、熱を感じる間もなく消え去る。
魔法があった場所には、くっきりと黒い円が焦げ跡となって残されていた。
「動いていいのは、この中だけ。ここから出たら負けよ。
 制限しないと、他に迷惑が掛かるからね」
たしかに、こんな勝負で城内を鬼ごっこなんてことになったら、いい迷惑だろう。
闘技祭の舞台よりも、わずかに狭いぐらい…駆け回るには、十分な広さだ。
「自分で転びでもしない限り、怪我の心配はない…か。
 たしかに、手加減した実戦よりは有意義かもしれないな」
「でしょう?」
俺の言葉に気を良くしたのか、セレノアが自慢げに胸を張る。
どうやら、訓練方法には、それなりの自信があるらしいな。
そして…セレノアも、俺に負けず劣らずの教えたがりみたいだ。
「どう? 試してみる?」
「セレノアが、相手をしてくれるのか?」
「いきなりアタシに挑むわけ? 身の程しらずもいいところね」
口ではそんなことを言いながら、セレノアが解きやすいように髪を結わえなおす。
その表情は、心なしか嬉しそうだ。
まったく、素直じゃないな。
あわせて、俺も自分のバンダナを外しやすいように変えた。
これで、準備は整ったわけだ。
「アタシから一分でも逃げ切れたら勝ちにしてあげてもいいわよ?」
「じゃあ、セレノアの髪紐、両方解いたら俺の勝ちでいいな」
「言ってくれるじゃない」
背を向けて歩き出したセレノアが、ある程度離れてから振り返る。
どうやら、あれが初期位置らしいな。
「怪我しないように、気をつけてくださいね」
「ああ」
不安げな顔でアイシスが離れると、それを待っていたように、空気が急速に張り詰める。
そのほどよい緊張が、身体を巡る血に、沸き立つほどの熱をくれる。
強敵を前にして、どこまでも気分が高揚していく。
「開始の合図は?」
「必要ないわ。先手をあげるから、好きなときに動きなさい」
ずいぶんと余裕だな。
二、三度と足を踏みしめ、地面の硬さを再確認する。
さっきまでの訓練でも感じたことだけど、場所によってもろさが違いすぎる。
お世辞にも良質な足場とは言えないが、多少の無理には答えてくれるだろう。
だったら、真正面から、試してみるか。
「ッ!!」
鋭い呼気とともに、大きく足を踏み出す。
数歩でセレノアの眼前に迫り、髪の毛に触れないように注意して、リボンへと手を伸ばした。
「…ふぅん」
挑発するように前に出て俺の手を潜り抜けると、その笑顔が俺へと近づいてくる。
! 跳躍か!?
「はい、おしまい」
嘲笑うように宙へと浮き上がったセレノアは、瞬きほどの時間で俺の背後を取ってきた。
頭上から降り注ぐ声に反応して、とっさに上半身を前へと倒す。
後頭部のあたりを風が吹き抜けていったが、取られた感触はない。
そのまま、前方に倒れこむように姿勢を落として駆け出し、円の縁まで距離を取る。
後ろに気配がないことを確認して振り返れば、セレノアは、最初と同じように腕を組んで悠然と立っていた。
「さすがに、軽率すぎたか」
「当たり前でしょ。正面からアタシに勝とうなんて、思い上がりもいいところね」
「たしかに…言うだけのことはあるな、たいした身軽さだ」
「この程度で何言ってるのよ? 驚いてもらうには、まだまだ早いわ」
そういうと、今度はセレノアが緩やかに走りだす。
力むことのない歩調で、柔らかく滑らかに加速していく。
スカートに覆われた、セレノアの足に注目する。
「…ふぅん」
俺の視線に不敵な笑みを返し、隠すどころか惑わせるように足を動かしてみせる。
見たこともない足運びだ。
癖が強いのに、驚くほどの速さが出ている。
「チッ」
対抗するために、速度をあわせて走り出す。
歩幅は俺のほうが大きいが、その差をしっかりと歩数で埋めてくる。
「たしかに、大口を叩くだけのことはあるわね」
涼しい顔で横並びについて来るが、決して隙を見せたりはしない。
不敵な微笑みから分かるのは、限界がまだまだ遠いことぐらいだな。
瞬間的な速さは、どこまで上がるのか…それを考えるだけで、全身が熱くなる。
思った以上に楽しめそうだ。



【ティスト視点】

「ッ!!」
急激な方向転換と急旋回を繰り返して、相手の疲れと油断を誘う。
牽制や攻撃が使えないというのは、もどかしいな。
脚力だけで相手の動きを鈍らせるのが、こんなに難しいとは思ってもみなかった。
「ッ!!」
「甘いわね」
たまに、手を伸ばしてみても、ダガーを持っていても届かないほどの距離を残して、あしらわれてしまう。
俺が、どんなふうに虚実を織り交ぜてくるか、分かっているような立ち回りだ。
これに関しては、セレノアのほうが上級者。
俺の浅知恵が、通用するわけもない。
「そろそろ、息が上がってきたかしら?」
挑発するように笑うセレノアの目は、さっきよりも鋭さを増している。
少しでも気を緩めたら、一瞬で負けるだろう。
「さっさと勝って、休ませてもらうさ」
「ふぅん」
俺の一言に気を良くしたのか、セレノアの足が軽やかに地面を打つ。
当然のように、その速さは、まだまだ上限には届かない。
この様子では、背後になど絶対に回らせてくれないだろうし、横も難しい。
…となれば、すれ違いざまに抜き取るしかないか?
消去法で選んだ選択肢というのは、心許ないが…迷っていると、俺の足が先に壊れそうだ。
走りながら呼吸を整え、狙いを定める。
「…っ」
飛び込もうとする気配に感づいたのか、セレノアが俺に呼吸を合わせてくる。
俺が仕掛けると分かっていても、あくまでも見に徹するつもりらしいな。
だったら…。
「見ててもらおうか」
左足で右前へ、続いて、右足で左前へ、片足で大きく一度ずつ跳ぶ。
左右に飛び跳ねる俺のことを、つまならさそうな顔でセレノアが見ていた。
「とっておきで、その程度? さっきまでより悪いじゃない」
いいように勘違いしてくれたな。
足を慣らし、距離を調整するための前置きを、本命と思ってくれたらしい。
「ッ!!」
適度な距離になったところで、残していた力を全てかき集め、爆発させる。
クレア師匠に教わった歩法、負荷は大きいが、これがやはり一番速い。
セレノアの身長よりも低く姿勢を下げ、風の抵抗をできるだけ減らすのも忘れない。
向こうから見れば、とりやすい位置に俺の頭があることだろう。
「ふぅん。…!?」
さらに姿勢を下げて、転がっている岩を右手で掴み、そのまま地面に押し付ける。
「くっ…」
腕が悲鳴を上げ、その代わりに足へ負荷をかけることなく急制動を実現させる。
予想していた瞬間と軌道をずらされたことで、セレノアの感覚がわずかに狂う。
その、わずか…で十分だ。
手を離して姿勢を戻すと、そこは、狙い通りにいつもダガーを使っているときと同じ、慣れ親しんだ間合いだ。
「はぁっ!!」
余力を使い切るつもりで、踏み込みに全神経を注ぐ。
反応しきれないセレノアの表情を観察しながら、右手の人差し指と中指を精一杯伸ばして、リボンを挟みこんだ。
後は、この手を引き戻すだけだ。
「くっ…」
セレノアの顔に初めて浮かんだ、焦りの表情。
たしかな手応えを感じながら、それを引き抜こうとして…。
「!?」
俺の手よりも速く、セレノアが前に出てきた。
伸びきっていたはずのリボンが、その動きのせいで、ゆるやかにたわむ。
「ッ!」
鋭い呼気とともに、セレノアの指が俺の額のすぐ横を通り抜ける。
相打ち狙いか。
後退しても、セレノアの足なら楽に追いつくだろう。
なら…前だ。

「ッ!!」
セレノアが伸ばしている右手に触れないように、右前に踏み出す。
これなら…。
「なっ!?」
足の裏に感じていた地面が崩れて、行き場を失った力が空を切る。
二人分の踏み込みに、足場が耐えきれなかった…か。
「…!」
倒れる直前に、前髪が落ちて目にかかる。
バンダナが取られた…か。
「くっ…」
何も見えない状況で、仕方なく、感覚だけで受身を取る。
全力で踏み込んだだけあって、手をつくだけでも、かなりの衝撃だ。
だが、そのおかげで、顔から地面に突っ込むような無様な真似はせずに済んだ。
「いっ…たぁっ…」
すぐ下では、セレノアの掠れた声が聞こえる。
さすがに、あの体勢からだと、どれほど身軽でも転ぶしかなかったみたいだな。
「どうやら、俺の負けらしいな」
地面について姿勢を支える左手をそのままに、空いている右手で髪をかきあげた。



「…?」
白? 黄色? それに、黒?
砂だったら、もっと薄汚れた黄色や茶色のはずなのに…。
もしかして、さっきの衝撃で目がおかしくなったのか?
「?」
体勢を立て直して、ようやく目の焦点が合う。
「…なっ!?」
視界に入ってきた信じられない光景に思考が止まり、思わず絶句してしまった。
目の前には、結わえていた髪の片方が解けたセレノアが、地面に背をつけて倒れている。
恐る恐る、自分の体勢を再確認する。
俺の手の位置にあるのは、セレノアの胸で。
つまり、俺が受身を取ったときに触っていたのは…。
一緒に倒れたのは分かっていたが、まさか、こんな…。
「わ、悪い…」
あわてて起き上がり、あまりの殺気に気圧されて後ずさる。
間合いを外していても、首筋がチリチリと痛んだ。
「その、だいじょうぶ…か?」
「遺言は、それでいいのね?」
髪をいつものように結わえなおし、背筋が冷たくなるほど硬質な声音で、セレノアがそう問いかけてくる。
その左手には、淡い桃色の炎が宿っていた。
「ッ!!」
鋭い呼気とともに突き上げられた右手を、上体を反らして紙一重ですり抜ける。
今の狙いは、鼻? いや、おそらく目だな。
あんなものを食らったら、失明は免れないだろう。
「焼き尽くせ」
セレノアの声に応えるように炎が膨れ上がり、次々に襲い掛かってくる。
何度も大きく後ろへ跳び退り、風の魔法を限界まで収束して、どうにか迫り来る桃炎を凌いだ。
「ふぅん」
魔法を防いだことが気に入らないのか、収束されていく炎の大きさが、桁違いに肥大する。
セレノアを守るように包み込むその炎は、とてつもない光量で、見ているだけでも目が焼けそうだ。
「ま、待ってくれ、俺が悪かったからっ!!」
「だったら、死になさい」
足の疲れなど気にしている余裕もなく、背を向けて全速力で逃げる。
後ろから徐々に迫ってくる静かな足音と、焼けるような熱気。
その二つが、追いつかれることがいかに危険なのかを教えてくれる。
魔法が空気までも焦がし、髪の先から流れ落ちる汗までも蒸発させる。
足を止めたら、間違いなく死ぬな。
これ以上刺激しないように心の中でつぶやき、足に力を込める。
結局、セレノアが疲れ果て、あきらめてくれるまでに数時間を要した。
あきれながらも、事の顛末を最後まで見守っていてくれただけ、アイシスは優しいのかもしれない。
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