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DAGGER 戦場の最前点 作者:BLACKGAMER

DAGGER 有色の戦人

83/129

01章 気まぐれな歓迎-1

7月1日~8月16日まで、毎日朝7時に更新予定!
第二章 魔族の王女、セレノア・グレイス編 お楽しみください。

2015/8/16 コミックマーケット東"S" 32-a
The sense of sightで参加します。

新刊の短編 有色の姫巫女を発売予定ですので
お楽しみ頂けた人は、ぜひともお立ち寄りください。

【セレノア視点】

「はぁ…」
黄土色の湯に浸かり、全身を包む熱に身を任せて、思いっきり手足を伸ばす。
流した汗と纏わりついた砂埃を洗い落とす、至福の一時。
一日中歩き通した疲れなんて、これだけで吹き飛んでしまう。
やっぱり、帰ってきたら、一番に風呂に入らないと落ち着かないわね。
「ん?」
湯気で遮られる視界の先、縁にある大きな岩の上。
ちょこんと腰掛けたアイシスは、手ぬぐいで身体を隠したまま、じっと湯船を見つめている。
「なに? どうしたの?」
「いえ、あの…セレノアさん。これ…なんですか?」
「? 風呂を知らないの? 人間って、入らないんだっけ?」
「いえ、入りますけど…あの、でも…これって、大丈夫なんですか?」
「大丈夫って、何が?」
「だって、すごく濁ってるし…しかも、煮えてますよ?」
不安げな顔で、アイシスがちょうどお湯が湧き出している辺りを指差す。
ぼこぼこと泡立って見えるのは、たしかに水が沸騰してるときに似てるかもしれない。
「ああ、そっか。アイシスは、温泉も薬湯も知らないのね」
「おんせん? くすりゆ?」
「これは、怪我や病気によく効くお湯なの」
魔族には、癒しの魔法を使えるものも、医者もいない。
だから、湧き上がる特別な湯に浸かることで、自分の治癒力を高めて怪我を克服する。
「じゃあ、これって、お兄ちゃんの怪我にも効くんですか?」
「ええ、アイシスの怪我にもね」
「…気づいてたんですか」
「当然よ」
ユイが魔法を使ったおかげで、目立つほど大きな傷は、ずいぶん減った。
それでも、いくつもの細かい傷は見えるし、ところどころで、本調子じゃない仕草が見える。
ティストも、おそらく同じようなものだ。
日常生活に支障はないだろうけど、まだ全力で戦えるほどじゃない。
「まあ、物は試しよ。とにかく、入ってみなさい」
「はい」
力ない返事の後に、敵がいるみたいに恐々と、少しずつ前に乗り出す。
「!? けほっ、けほっ…」
顔を出して覗き込んだアイシスが、湯気を吸い込んで盛大にむせる。
まったく、世話が焼けるわね。
「そこにある手桶を使って、まずは、身体を慣らしなさい。
 アタシが使ってたのは、見てたでしょ?」
「はい」
おっかなびっくりお湯をすくい上げて、ゆっくりと手の先にかけていく。
「あっ…つぅ…」
ほんの少しずつ、お湯をかける場所を広げて、身体を馴染ませる。
「い…いきます」
ようやく覚悟が決まったのか、岩に座ったアイシスが、固い声と共に爪先を湯へと伸ばす。
勢いをつけて湯船へと入り、アタシの隣へ腰を下ろした。
「ぁっ…くぅ…」
「染みるなら、効いてる証拠よ」
痛いのは、傷が治ろうとしてるからだ。
アイシスがしっかりと握り締めている手ぬぐいは、身体にべったりと張り付いている。
本人は隠しているつもりでも、薄布一枚じゃ、ほとんど意味がない。
「?」
以前に会ったときと、やっぱり雰囲気が違う。
ティストが稽古をつけたっていう話だし、筋肉とかは、増えててもおかしくない。
だけど、それ以外も、はっきりと分かるぐらいに変わってる。
成長? まさか、そんな短期間で?
「………」
きっと、以前に森でアタシにくれたような料理を、好き放題に毎日食べてるからよ、そうに決まってる。
だから、胸も腰のあたりも、アタシより…。
「? な、なんでしょうか?」
「…べつに。アイシスにどれだけ鍛え残しがあるのか見てただけよ」
「きたえのこし…ですか?」
「そう、ぜい肉みたいなものよ」
「ぜ、ぜい肉…」
不安げに自分の身体を見回して、腰や背中のあたりを触ってみたりしている。
そう、あれは鍛え残しのぜい肉。
だから、アタシになくて当たり前だし、あったら困る。
「それって、そんなにたくさんありますか?」
「ずいぶん減ったわよ。ゼロには遠いけどね」
全てを削り落として、きちんと磨き上げられたら、アタシを十分に楽しませてくれるかもしれない。
だけど、その領域に到達するには、まだ足りない。
「その鍛え残しって、お兄ちゃんにもあるんですか?」
「ティストに? さあ、どうかしらね」
いつも上着で隠れているから、外見だけだと判断しにくい。
余地はまだあるように見えるけど、無駄と思える場所は、見つからない。
今まで見てきた誰とも似ていない、不思議な鍛え方をしてる。
そして、何より気になるのは、あの頑丈さだ。
ガイ・ブラスタの攻撃を何度も受けて生きている奴なんて、聞いたことがない。
あれだけの威力を受けきれるなら、何をやっても倒せない気がしてくる。
「………」
初めて森で対峙したとき、一発だけ、まともに当てることができた。
自分の手を見て、そのときの感触を思い出す。
あの手応えは、本物だった。
硬いとか柔らかいとか、そんなものとは次元が違う。
触れただけで、とんでもない強さを秘めているのが、直感的に理解できた。
あの時のことを思い出すだけで、血が騒ぎ出す。
互いに拮抗した状態での、技の応酬。
あれほどに戦いを楽しいと思ったのは、生まれて初めてだ。
『戦場の最前点に会いなさい』
母上の言葉を信じて良かった。
こんなに、面白い奴がいるなんて、想像したこともなかった。
『戦場の最前点に会いなさい。そして…』
続く言葉を、胸の奥に仕舞いこむ。
たとえ、母上の言葉でも、ただ素直に従うつもりはない。
アタシのことは、アタシが決める。
あいつを見極めるために、もう一度、戦いたい。
今度は、邪魔の入らないところで、最後まで、アタシの全てを出し尽くして。
「…はぁ」
アタシに聞こえないように気を使っているのか、アイシスが小さくため息をつく。
ティストの家からグレイスまで、それなりに距離があるし、歩きやすい場所なんてないし…ね。
「疲れた?」
「いえ、これぐらいなら平気です」
「じゃあ、どうしたの?」
「お兄ちゃんは、ここで何をするんですか?」
「さあ? アタシも、父上に言われて迎えに行っただけで、詳しくは知らないわ」
『ティスト・レイアを、グレイスまで連れてきなさい』
それ以外は、どんなに聞いても、教えてくれなかった。
父上は、いつもそうだ。
絶対に、アタシには真意を教えてくれない。
「そう…ですか」
アタシとしては、外へ遊びに行く口実が出来たから、それで十分だったけど…。
呼ばれたほうにしてみれば、不安かもしれないわね。
「家で待ってたほうが、良かったかもしれないわよ?」
父上に呼ばれたのは、ティストだけ。
それでも、どうしても…と言って、アイシスは強引についてきた。
そのほうが楽しそうだから、アタシが許可したけど…アイシスにとって良かったのかは、分からない。
「いえ、一緒に来て良かったです。
 一人で帰りを待つなんて、私は絶対に嫌ですから」
「…ふぅん」
出会ったときと比べて、本当に変わったのは、体格なんかじゃない。
アタシに対してもはっきりと物を言うようになった、意志の強さだ。
初めて会ったときのアイシスは、アタシに歯向かおうとせずに、武器を投げ出した。
でも、今なら…。
続きを考えるのを止めて、息をつく。
岩を背もたれに身体を預けて見上げれば、満天の星空だった。
しばらく、退屈しなくてすみそうね。


【ティスト視点】

風呂からあがり、最初に案内された部屋に戻ってきても、当然のように誰もいない。
まあ、女は何かと時間が掛かるらしいからな、しょうがないか。
「はぁ…」
にしても、熱いな。
あの底が見えないほどの濁り湯のおかげで、身体から熱が抜けない。
匂いもかなりきついし、ただの水を温めたのとは、まるで違うみたいだ。
肩から回しているタオルで、もう一度濡れた髪を拭く。
不思議な模様のタオル…セレノアが言うには、手ぬぐい…だったかな。
独特の草を編んで作られた床の上を、素足で歩く。
その感触がくすぐったくて、なんだかむずがゆい。
裸足でいるのは、感覚的にはいつもより鋭敏になって悪くないが、怪我が恐いな。
「セレノアが使ってたのは、これだったな」
部屋の隅に重ねてある四角いクッションを一つ持ち上げて、壁際に置く。
壁に背をつけてそこに座り、何度か、足を組み直してみる。
「どうも、しっくりこないな」
椅子なら、何かあったときにすぐ動ける自信がある。
だが、どうも地べたに座っていると反応が遅れそうで、落ち着かない。
異種族は、文化がまるで違うと師匠たちから教わっていたが、まさか、こんなに生活様式が違うとは…な。
会って話をするぐらいなら、考え方が違う程度で、そこまで気にはならなかったが…。
こうして相手と同じように暮らそうとすると、イヤって程に種族の違いを実感させられる。
辛いわけじゃないが、なんというか、戸惑うことが多くて疲れるな。
「暇を潰す道具くらいは、持ってくるべきだったかな?」
この広い部屋で一人ってのは、手持ち無沙汰だ。
だからといって、外を出歩く気にもなれない。
「!?」
視界の端に捉えていた扉が、何の前触れもなく横へと滑る。
反射的にダガーの柄へと手を滑らせて立ち上がり、いつでも動けるように両足を踏みしめる。
腰を低く落とした状態で睨むと、ドアを開け放った奴は、敵意のない笑顔を返してきた。
そういえば、ドアじゃなくて、フスマ…だったかな?
「いい反応だな」
笑顔でそう評するレオン・グレイスが、遠慮なく部屋の中へ踏み込んでくる。
部屋の隅からクッションを取ってきて、俺の正面にどっかりと腰を下ろした。
「まあ、座りたまえ」
しかたなく、こちらも臨戦態勢を解いて座りなおした。
「そう警戒しないでくれると、嬉しいんだがね」
「悪いが、これは癖なんでね」
物音の一つも立てずに近づかれたんだから、これでもおとなしい反応だ。
これほどの猛者と一つ屋根の下なんて、心臓に悪すぎる。
気を抜けば、その瞬間に死んでいてもおかしくないのだから。
「こんなところに一人でいるとは…ねえ」
嘆くようにため息を吐いたレオンが、首を横に振る。
なんだ? 何の話だ?
「女湯を覗きに行かなくていいのかい?」
「何を言い出すのかと思えば、何の冗談だ?」
「冗談ではないさ。まさか、女に興味がないわけでもないだろう?」
「そんないきな提案をするなら、監視を外してからにしてくれ」
対面の壁、その両端にある支柱へと視線を投げる。
どんなに息を殺して物音を立てなくても、そこにいるという存在感は簡単に消せるものじゃない。
彫像のように動かない二人が、壁の後ろに透けて見えるようだ。
「参考までに聞かせてくれるかな? いつから、気づいていたんだい?」
「この城で出迎えられたときから…だ」
俺たちを出迎えたのは、レオンだけだったが、遠くからこちらを意識している気配があった。
後は、つかず離れずで一定の距離を保たれてたのだから、気にするなというほうが無理な話だ。
「さすがだね。ここまで、容易に看破されるとは」
「容易じゃないさ、気づけたのが不思議なぐらいだ」
同じような監視を自分の家でやられても、おそらく気づいていないだろう。
些細な違和感に気づけたのは、ここが魔族の領地だからだ。
「謙遜しなくていい。気づいていたなら、背中ぐらい流させるべきだったかな?」
まるで悪びれる様子もなく、くっくっと楽しそうな笑いを漏らす。
敵国のど真ん中にいるんだから、俺だって監視をつけられたぐらいで腹を立てるつもりはない。
入浴中まで見られ続けていたのは、はっきりいって不愉快だったが、それも我慢しよう。
だが…。
「監視をつけるぐらいなら、なぜ俺たちを呼んだ?」
「君たちのことは、歓迎しているよ。
 ただ、娘を持つ親の気持ちというのも、どうか理解してほしい」
「大事な娘の入浴を、覗きに行かせるつもりだったのか?」
「そうなれば、君と戦う理由ができるだろう?」
白々しいほどの余裕の笑みに、表情の変化は見えない。
どこまでが冗談なのか、俺には理解できない。
こういうところは、ライナスに似ているな。
はぐらかすのが上手で、絶対に真意を見せようとしない。
「まったく、まるで分からないな。そもそも…なぜ、俺たちなんかが呼ばれたんだ?
 何の取り柄もないし、何の役にも立たないぞ?」
「何の取り柄もない…ね」
意味ありげにレオンが言葉を繰り返し、苦笑を浮かべる。
「君の妹のことはよく知らないが、君のことはそれなりに知っているつもりだ。
 君ほど殺しにくい人間も稀だと思うよ。
 なんせ、あのガイが二度も殺し損ねたくらいだからね。
 防御がうまいのか、打たれ強いのか、それとも、他に秘密があるのか。
 ぜひとも、この手で確かめてみたいものだ」
ずいぶんと、過大評価されたものだな。
あのときだって、今回だって、ずいぶんと長い時間、生死の狭間をさ迷った。
死ななかったのが不思議なくらいで、褒められるほどのことじゃない。
「俺は、悪運が強いだけだ」
「その言葉、ガイに聞かせてやりたいね。
 運に負けたと知ったら、奴はどんな顔をするかな?」
意図的に、話が本題から逸らされていく。
なら、無理に戻そうとしても無駄だろうな。
それに、せっかくガイを話題にあげてくれたんだから、聞いておくべきことがある。
「ガイ・ブラスタは、生きているのか?」
あの後の経緯は、ファーナから聞かせてもらった。
魔族が戦線を崩して撤退したが、ガイ・ブラスタの生死は不明だという話だった。
「あれが死ぬところを、想像できるかい?」
どこか誇らしげな口調で、レオンが笑みを浮かべる。
俺如きに殺せるわけがないと、その目が語っていた。
「そう…か」
全力を振り絞り、アイシスの力を借りて、ようやく引き分け…か。
前大戦から、ずいぶん水をあけられたものだ。
再戦の可能性を考えると、本格的に訓練をしなおさないといけないな。
「さて、退室する前に、改めて紹介しておこうか。二人とも、入ってきなさい」
言われた通りに表れた二人の女性は、作り笑いすら浮かべていない。
ただ、無表情で淡々と俺を観察するように見ていた。
どうみても、歓迎されているようには思えないな。
「一人ずつ、自己紹介を」
「レイナです」
「サリです」
わざわざ前に出てきて、名前の一言だけ…か。
まったく、なんとも丁寧な自己紹介だ。
「何かあったら、遠慮なく頼るといい」
「何なりとお申し付けください」
節回しまで寸分違わぬ声の後に、鏡に映したような同時の礼。
背を曲げる角度から、下げた頭を上げる速さ、おまけに、俺を見据える冷たい目まで変わらない。
まったく、よく訓練してあるな。
ロアイス城で仕えるメイドだって、ここまで一糸乱れぬ同調はできないだろう。
ため息をこらえてクッションから降り、その横に立つ。
座ったまま挨拶を返すなんて、人間の世界でやったら心証は最悪だ。
魔族の作法なんて分からないが、だからこそ、人間基準でも無礼と思われるような真似は控えるべきだろう。
「ティスト・レイアだ。数日の間、よろしくお願い申し上げる」
深々と頭を下げ、自分にできる最上の礼を返した。
特に反応もみせず、その涼やかな顔には、わずかな表情も浮かばない。
俺では、あの水面のように落ち着き払った二人には、波紋一つ作れないらしい。
「何を頼むのも、君の自由だ。
 内容によっては、拒むこともあるだろうが、そのときは、君の力で押し通すといい」
「戦って相手に勝ち、自分の意思を聞かせろ…ってことか?」
「極論で言えば、そういうことだ。誰かに物を頼むときには、それなりの力が必要になる。
 それが、魔族の常識だ。覚えておきたまえ」
「拳に物を言わせて…か、あまり好きじゃないな」
「相手の強さを認める度量を野蛮と評されるのは、気分がよくないな。
 別に、暴力で全てを解決するわけではない。
 我々は、本人の鍛錬を最大限に評価しているだけだ」
人間も、相手の強さに敬意を払うことはある。
その度合いが、魔族の場合は大きいというだけの話だろう。
後は、どうせ言葉だけじゃ理解しきれないだろうから、実際に慣れるしかないな。
「すまない、失言だった」
「わかればいいさ。
 魔族の生活は戦いと共にあるし、戦いをしない者など魔族にいない。
 君のような実力者には、悪くない場所だと思うがね」
たしかに、強さを見せ付ければいいだけならば、分かりやすくていい。
家柄や血筋なんていう、どうやっても手に入らないものとは違うしな。
もし、強くなりたければ、鍛えればいい。
至極簡単で、分かりやすい話だ。
「俺が勝てば、監視もやめてくれるわけか?」
「試してみる?」
こちらを挑発するように、レイナとサリが妖艶に笑う。
レオンの側近で、こうして仕事を頼まれているぐらいだから、かなりの実力者だろう。
病み上がりの俺が、どうこうできる相手じゃなさそうだ。
「遠慮しておく。そのかわりに、別の頼みがある」
「なんだい?」
「俺たちに貸してくれるのは、もう少し粗末な部屋にしてもらえないか?」
「………」
俺の言葉に後ろの二人が小さく息を飲み、部屋の中の空気が一変する。
何か、まずいことを言った…かな?
「不思議なことを言うね。
 不満があるから部屋を変えろというなら分かるが、格を下げてほしいとは…」
興味深いと言わんばかりに、レオンの瞳が輝きを増す。
さすがは親子だ。セレノアも、何度か同じような目をしていた。
溢れ出す好奇心は、抑えきれないらしい。
「俺が泊まるには、この部屋は、上等すぎる」
とても二人では使い切れない広さ、隅々まで彩る技巧を凝らした細工。
そのどれもが、ロアイスの王室と比較しても、引けをとらない。
決して、ただの来客に気軽に使わせていい部屋とは思えない。
「これも、力で納得させろとは言わないだろう?」
「いいや、もちろん、力で勝ち取ってもらうよ。
 今の要求を受け入れるのは、私に勝ってからにしてもらおう」
「!?」
どういうことだ?
監視を外すよりも、部屋を変えてもらうほうが難しいとは、思ってもみなかった。
それとも、何か理由や仕掛けでもあるのか?
「さて、もういいのなら、私はこれで失礼するよ」
話を打ち切ると、立ち上がったレオンが背を向ける。
それに付き従って、後ろの二人も頭を下げ、部屋から出て行った。
ぴしゃりとフスマが閉まり、足音が離れていく。
「やれやれ」
感じ取れないほどに気配が遠のき、さらに数十秒の間を空けてから、ようやく、ため息をつく。
セレノアは、俺のために駆けつけてくれたし、命の恩人の頼みを断るつもりはない。
魔族の領地に足を踏み入れる以上、ある程度の覚悟はしていたが…。
「こいつは、予想以上に疲れそうだ」
+注意+
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