表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

初めての甘いお酒

作者: 佐方仁優

「これ、なんかお前みたいだな」

私の手に持っていたグラスを不意に取り上げて、一口飲んだ後、彼は言った

そのとき、私はびっくりして、すぐに返事ができなかった

反応できない私を不思議に思ったのか隣に座る私の顔を見る

表情をなくして、固まっている私と目が合う、2秒間無言で見つめた後、目をそらされてしまった


「ごめん」

下を向いて目をそらされたまま、謝られる

私もハッとなって、思わず下を向いてしまう


ぎこちなくさせてしまった

バカみたいにうろたえた反応してしまった


気持ちをやわらげようと、目の前にあったお酒に手を伸ばそうとして

でもそのグラスは、まだ彼の手の中にあることに気づく・・・

あっやだ、この行為、きっとグラスを催促してるみたいに見えるだろう

そう思ったときには

「あっごめん」ってあわてて、グラスをつき帰された

ああ、ダメだ、自己嫌悪だ、私ってなんて嫌なやつなんだろう



「・・・これは私のイメージじゃないんです、だからびっくりしちゃって・・・なんていうか、私は自分のこと、この甘い飲み物にあこがれて、列を作る蟻みたいだって思ってて・・・」

・・・駄目な酔い方したみたい・・・心の中で思っている事がそのまま口にでるのは問題かも

自分が甘くて可愛い女の子になりきれなくてあこがれてる、そんな事をどうして私は彼に告白しているのだろう

この人は私に女の子らしいイメージを少しは持っていてくれたというのに

どうして私が自らそれを壊しているのだろう・・・


すごく居心地が悪い、このままここにいてはダメだ

去ろう、ここを。もう動揺しすぎて、どうせまともな会話なんてできないし

思い切って、椅子から立ち上がる

やっぱりちょっとふらっとする、なんか飲みすぎたみたい

かばんを手にして「じゃあ」って別れようとしたら


「駄目、帰らないで、話、面白いからもっといよう」

手を強く引っ張られて、元の席にどさっと座ってしまう


楽しいの?この会話が?

このぽつぽつとしか話せない、盛り上がりにかけるこの内容が?


彼も酔っ払ってるな、と気づく

いつもはそんな風には強引なことしないし、言わない

普段はもう少し、距離があって、会話で相手がどうしたいって探ってから

事を推し進めるタイプ

だから彼自身が何を考えてるかなんて、全然普段は読めないし


といっても、今も彼の考えが、全然読めない・・・

なんで、手を引っ張るの?


仕方ないのでなんとなくそこに座ってる

会話するでなく、他のメンバーの会話をなんとなくBGMにしながら

時々、お酒に口つけて

お互い前をみてる、視線が合わさることも少なくて・・・


全然盛り上がってないんだけど・・・



私が頼んだお酒、実は普段はあんまり飲まない


でも、これ、彼がいつも頼んでるやつだって知ってから

試してみたくなった



いつかの飲み会で話してるのを聞いてた


「最近、すごいはまってて、なんかいっつも飲みたくなるんだ、甘いの好きだし、でもってけっこう、きつい酒だから飲んでると気持ち良く酔えるし・・・女の子の飲み物ってわかってるから注文するとき、恥ずかしいんだけど、なんか中毒みたい、めっちゃ好き、ないと生きていけない」


そういって目を細めて、そのお酒をすする彼はもう幸せな顔で・・・

うわっ思い出した、駄目だやっぱ冷静でいられない・・・

こんなこと思い出して、今私から口にしてしまったら

もう駄目・・・自滅する・・・

最後にひと口飲んで、

「ちょっとごめん」って声をかけて、トイレに行くふりをする

そのままさりげなく出口に向かおうとしたら


ぐって腕をつかまれた

さっきよりずっと力が強くて

思わず誰かの胸に倒れこんでしまう

顔を上げると彼の顔が近い

目を細めて幸せそうな顔で唇を吸われる・・・


「やっぱ、好き」


彼の声か、自分の思ったことなのか、もうわからない・・・


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ