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「何よ? 一体何が不満なのよ?」
文は心底不思議そうに問いかけてきた。無性に殴りたくなるのは何故だろう。
「あなた何も思わないの? 途中までいい話だったのに、全部台無しよ!」
まあ桃太郎はこれっぽちも関係ない話ではあったのだけれど。
「そんなの私の責任じゃないし」
「ぐっ…。まあ確かにそうだけど…」
「話続けていいかしら? そろそろクライマックスらしいしね」
「い、いいわよ!」
もうヤケクソだ。最後まで聞いてやろうじゃない!
桃太郎は桃家の一人息子として生まれました。
「え? 桃太郎って名前じゃないの?」
「当たり前でしょ? あんた何言ってるの?」
文は何も思わないらしい。でも私たち日本人は桃太郎と聞けば、それが名前だと思うのは当然だと思う。まさか桃 太郎だったとは…。
太郎は幼い頃、両親を病で無くし、途方にくれていたところを青年に拾われました。青年はお婆さんを亡くした直後であり、寂しさを忘れる為に一緒に暮らすことを提案したのです。
太郎はすくすく育ちました。青年は太郎の成長こそが生きがいであり、支えでした。今までは殆ど続かなかった仕事も懸命にこなし、必死に働きました。決して裕福ではありませんでしたが、そこには確かな幸せがあったのです。
しかしそれも長くは続かなかったのです。ある日、青年は仕事終わりに仲間と飲みに行きました。するとそこで酔っ払いに仲間が絡まれてしまいました。
そして徐々にヒートアップしていき、ただの口論が次第に殴り合いに変わっていきました。さすがにこのままではまずいと感じた青年は間に入ろうとしました。
ですが、この時相手は頭に血が上り、凶器を手にしていました。そして間に入った青年を刺してしまいました。
青年は崩れ落ち、病院に搬送されましたが、回復することなくこの世を去ってしまいました。
太郎は青年の死を知るとふと思うようになりました。太郎にとって、青年は強さの象徴でした。強く、逞しい青年は太郎の憧れであったのです。しかしその青年はあっさり死を迎えてしまった。
では、強さとは何なのか。太郎はそれを知りたくなりました。そして己を強くすることを目指すようになりました。
まず太郎は世界を廻る事にしました。多くの人と触れ合う事で見聞を広めようとしたのです。鬼を倒すことでレベルアップをし…。
「はい、ストップ」
「今度は何よ?」
文はうんざりしたように私を見る。しかしここは聞き逃せない!
「鬼倒したの?」
「ええ。そう言ったでしょ?」
「じゃあ終了?」
「いいえ。続きあるけど?」
「んなバカな!?」
桃太郎って鬼を退治する話じゃなかったっけ? 桃太郎って何の話だか分からなくなってきた。おかしいのは私なの? 誰か教えてください!
太郎は多くを学んだ。そして多くの人達と出会った。気がつけば多くの年月が流れた…。
そして……
時は19××年
核の炎に焼かれ地球上の生物はすべて消滅したかのように思えた。しかし、人間だけはこの荒れ果てた大地に生き残った。力はすべてを支配するようになったこの世の中にひとりの救世主が舞い降りた!
「もういい、もういい!」
私は思わず「アタタタタタタッタタ」と叫びそうになるのを堪えた。というかこれって…。
「はぁはぁ…」
私は必死に呼吸を整えた。何故話を聞いているだけなのにこんなに疲れるんだろう?
「もう絵本は終了! そろそろ日も傾いてきたし、いいでしょ?」
随分と時間が経っていたようで、すでに夕焼けが見え始めていた。私は頃合と見てそう切り出した。文も暑くなさそうと思ったのか
「そうね。じゃあチルノ、今日は終わりね」
と賛成してくれた。
「わかった~。じゃあね~」
チルノは絵本を持つと去っていった。しかしなんだか日本の絵本を誤解していそうで恐い。まあ、チルノはアホだし、その内忘れそうだが。
「いい暇つぶしになったわ~。たまにはチルノも役に立つのね~」
楽しんでるのは私以外という事を叩き込んでやりたいと心底思ったが、口にすることは堪えた。
「あ、そうだ。麻耶~」
「何?」
「今度南の島に一緒に行かない?」
「南の島? いいけど、どうやって?」
「何か、ムラサがいい島見つけたらしいのよ。是非行ってみたかったのよね~」
「本音は?」
「皆の水着姿を撮りたいから」
「なるほどね」
にしても幽霊船で南の島にバカンスとか、かなりシュールな気が…。まあいいか。
「わかったわ。で、いつにする?」
「そうね…。来週でいいかしら?」
「了解。皆に伝えとくわ」
「お願いね。私はムラサに連絡するから」
色々苦労しそうだが、楽しみであるのは事実。また一つ夏の思い出ができそうだ。
夏はまだまだ続く……
完
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