挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
黒姫の魔導書 作者:てんてん

第4章 似たもの同士の大行進

87/155

第21話 魔法騎兵団は永遠に

 明けて次の日。レネの指導期間も最終日を迎えた。当然することは一つである。準備を万端に整えた魔法騎兵団は、迷宮の第四十二階層に降り立っていた。今日は全員が鎧を脱いで、武器も持ってきていない。そのため団員達は不安そうに手を動かしたりしている。

 周囲には相変わらず大勢の探索者が居るが、試合を観戦した者も居るので変な目で見られることはなかった。

 そんな中で、レネはにこやかに整列している団員達に挨拶を行う。

「本日は優勝祝いも兼ねた最後の仕上げとなります。楽しみにしていてくださいね」

「了解しました!」

『元気が良いな』

 元気の良い返事にレネの笑みも深まり、杜人も笑顔で漂っている。

「それでは移動します。召喚!」

『来い、タマ!』

 杜人が地面を指差すと、白珠粘液形態の巨大なタマが飛び出してくる。どよめきが周囲に響いたが、前回のような騒ぎにはならない。重要な情報は共有するのが当然なのである。

『良いぞ』

「どうぞ乗ってください」

 杜人はタマを乗りやすいように変形させ、レネは声をかけると最初に乗り込んだ。ノバルト達も恐る恐る乗り込んだが乗り心地が騎獣と一緒なためほっと息をはいた。そして全員が乗り込んだところで杜人は形を整えレネに頷いた。

「それでは魔法騎兵団、出発!」

「おー!」

 レネの掛け声に声を高らかにあげ、魔法騎兵団は目的地へと出発した。





 黒肉牛の突撃をあっさりと防ぐレネに感心し、森にて紅白花に青ざめながら乳牛の実を採取し、平原にて笑顔で牛乳を搾る。そして今は平原に設置された丸テーブルに着席し、その脇に据えつけられた簡易台所にて作られている料理を待っているところである。

 白い布が掛けられたテーブルには果実ジュースの炭酸割りが置かれ、中央には白い花も置かれている。高価なものでは無いが安物ではない程度の構成となっていた。

 杜人は料理の進行を確認し、雑談をしていたレネのところに戻る。

『そろそろ始めて良いだろう』

 それを聞いたレネは軽く咳払いを行い、ノバルト達も背筋を伸ばして聞く体勢になる。そしてレネは一度見回してから、微笑を浮かべて話し始めた。

「皆さん優勝おめでとうございます。今日は色々あったことを全部まとめたお祝いになります。さすがに全部をばらばらにやると財布に厳しいので許してください」

 全員が小さく笑ったところで続きを話す。

「今日は先程搾った牛乳を使ったデザートが主になります。豪勢な料理は高級なお店に任せますので、ここでしか味わえない新鮮な風味を楽しんでください。今回は比較として店で売っている牛乳も持ってきました。まずはこれの違いをどうぞ」

 ここで杜人が不可視念手で小さなグラスを配布し、そこに牛乳を注いでいく。全員がその光景に驚きながらも、楽しそうに見ていた。そしてゆっくりと味わいながら飲み比べ、その違いに再度驚いている。

「味が濃いですね」

「おいしい」

 ノバルトとセラルは無言だが、レンティとミアシュは笑顔で感想を述べた。レネも同じ感想を抱いたので、調べた情報を披露した。

「まずは絞りたての牛乳には魔力が多く含まれています。これが味を更に良くしているみたいです。店売りのほうは拡散しているのでその分物足りなくなります。それと、固形分を取り除いたものを再度混ぜている店があるので、味が薄い商品が売られている場合があるそうです。何でも濃すぎると文句を言われることがあるとか。意外と好みが別れるみたいですね」

 レネも調べて驚いた情報であった。それに対して杜人が『味の好みが全員一緒なはずがないだろう。レネの好みの甘さでは男は食べられないぞ』とあっさり結論を出したため、レネも納得することができた。

「それと数を出すので量と甘さは控えめです。ですが、もう食べられない場合は遠慮なく言ってくださいね。食べたい人に回しますので」

 その言葉でノバルトとセラルは安堵の表情を浮かべ、ミアシュとレンティは嬉しそうに頷いた。そこに一品目が運ばれてくる。

「どうぞ。最初は苺のショートケーキです」

 こうしてお祝いはにぎやかに進んでいった。なぜか食べられないと言っていないのに、ノバルトとセラルの分は隣から伸びた手によって、いつの間にか半分に減っている。二人からは無言の訴えが出されていたが、レネはそっと目をそらし見なかったことにした。

 そんなことがありながらも和やかに会は進み、最後の締めが運ばれてきた。

「どうぞ。アイスクリームです」

「生クリームを使って凍らせた菓子です。溶けないうちにどうぞ」

 氷菓子が存在しないわけではないが、作り方が秘匿されているので高級店と学院の食堂でしか食べられないものである。そのため庶民は名前すら知らない者も居る。もちろん今まで出されたデザートもそうなのだが、食べると冷たく、放置すると溶ける菓子という存在自体が広まっていない。

 そのためノバルト達も最初は首を傾げ、説明を聞いて頷き、最初は恐る恐る口にして目を見開くと、猛然と食べ始めた。

 ちなみにこれは杜人のおぼろげな知識を元に、ジンレイが試行錯誤を続け、ようやく完成したものである。そのためどこにも売られていない一品となっている。

『おみやげはこれで良さそうだな』

 笑顔で食べる様子を見ながら杜人はレネに確認し、レネも小さく頷く。そして杜人がそれをジンレイに伝え、密かに購入していた保冷箱に持ち帰り用のアイスクリームを詰め始めた。

「こんなに入れて残さないでしょうか?」

『大丈夫だ。確実に今日のうちに無くなる。余るなら誰かに分ければ良いのだから心配要らない』

 入れた分量は夕食四人前はある。ジンレイの心配はもっともであるが、杜人は笑顔で問題ないと断言した。

 保冷できる時間は朝までなので、それを伝えれば責任としては十分である。それに共通の笑い話も良いものだと杜人は思っている。

 そして片付けを行ってから整列した団員達に、レネが言葉を贈る。

「これで皆さんへの指導は終了となります。これからは正式な上司と部下では無くなりますが、皆さんは魔法騎兵団の一員であることに変わりはありません。といっても堅苦しい団ではないので町で見かけたら気軽に声を掛けてくださいね。それと用事があっても魔法学院に行きづらい場合は、ダイル商会の受付に言伝してください。何も無ければ昼過ぎに一度立ち寄ります」

 レネは少しだけ目がぼやけてきたが、我慢して続ける。

「私も皆さんに教えることで色々教わりました。皆さんもいずれ誰かに教える立場になると思いますが、そのときは自信を持って導いてあげてください。今まで、本当にありがとうございました」

「ありがとうございました!」

 レネが頭を下げたのを合図に、ノバルト達も頭を下げた。その声はほんの少しだけだが湿り気を帯びている。杜人はそれを聞いて優しく微笑むと、視線が切れているうちに静かにタマを呼び出しておいた。こういうときに流れを停滞させてはならないためである。

 レネは頭を下げたときに溢れた涙をこっそりと拭い、気持ちを切り替えるように笑みを浮かべるとゆっくりと顔を上げる。そして無言のまま教え子達と視線を交わし、踵を返すとそのままタマに乗り込む。その後ろをいつも通りの隊列でノバルト達も乗り込んだ。

 そして全員がタマに乗ったところで、レネは元気に手を振り上げた。

「それでは魔法騎兵団、出発!」

「おー!」

『ふっ。最後ということで、タマの凄さを特別に体験させてあげようではないか!』

 全員が元気に応え、走り始めたタマの速度に悲鳴を上げながら、レネ率いる魔法騎兵団は帰途に就いた。

 こうしてお祝いは無事終了し、おみやげを持ったレンティは箱を大事そうに抱え、その他も余りの牛乳をおみやげにもらって笑顔で住まいに帰っていった。

『レネ、誰が腹を壊すかどうか賭けないか。俺は全員壊すと思う』

「私も全員壊すと思うから賭けにならないね。……あの誘惑には耐えられないよ」

 見送りながらの杜人の提案に、レネは過去を思い出して自嘲気味に笑った。後ろに居るシャンティナもリボンを元気なくへたらせながら無言で頷き同意する。

 一応食べ過ぎると腹を壊すから余った分はみんなで分けてとは伝えたが、余らなければ分けるはずもない。分ける相手が居なければ尚更である。

 双方分かっているので賭けは成立しなかった。そのため杜人は、もう一つの話題をにやりと笑いながら出した。

『ところでレネ。これからは町でも姿を消せなくなったな。見かけたら声を掛けてほしいのだろう?』

「え? ……あ! あうぅ……、が、頑張る」

 注目を浴びるので町中では姿を隠していることが多いのだが、最近は開き直っていたのでそのことをすっかり忘れていた。今更なことなのだが、指摘されたことで思い出してしまったのだ。

 そんな風にレネをからかいながら、杜人は恥らう顔も実に良いと頷いていた。一応レネの成長も喜んでいるのだが、それはそれこれはこれである。

 こうして最後の一日は静かに終わった。

 そして次の日。騎士学校で行われた解散式に出席していた四人の顔色はかなり悪かった。それを見ていたレネと杜人は、予想通りと頷き困ったものだと微笑んでいた。




 夜はいつもの面々によるお泊まり会となった。名目はもちろんレネの指導期間終了のお祝いである。そのため、いつもより多くのおやつが供出されることになった。名目は大切なのである。

「なんだか、やっと重荷が取れたような気がするよ。……もうしばらくは教わる側で良いや」

『最初の頃と比べれば随分上達したぞ。最後は自分の言葉で言えたからな』

 最後のお祝いでは手順の確認は行ったが、言い方などは聞かれた分しか杜人は教えなかった。緊張しなかったわけではないが、棒読みにはならずにきちんと心がこもった言葉だった。

「えへへ……」

 レネは褒められたのではにかみながら俯き、手に持つクレープを食べ始めた。ちなみに原料は、おみやげ以外に取っておいた牛乳である。

「珍しく騎士学校から魔法学院に感謝状が贈られたみたいだよ。それと、今後は最終試合が通例になるみたい。……指揮官が魔法を使えるかは、状況に応じてそのときに決めるって」

 エルセリアが優しく微笑みながら情報を伝えると、レネと杜人は無言で視線をそらした。

「ちょっと遊びすぎたかな」

『うむ、今後は影響も多少は考慮してみるか』

 最初はやり過ぎ、次は予想外だった。そして次は普通だったのに変わったため、最後は抗議を込めて実験を行った。当初の目的を忘れていたような気がしなくも無いので、レネと杜人は神妙な顔で頷いている。

 それを見ているエルセリアとセリエナは、困ったものだと微笑んでいる。そして杜人はこのままではまずいと考え、少々強引に話題を振った。

『こほん。とりあえず、しばらくはゆっくりしようか。……そう言えばセリエナは試験を受けたのか?』

「いいえ。この次にしようと思っています。今回の試合でかなり儲けましたので、やっと勉強のほうに時間を割けそうです」

 セリエナは以前のレネと同様に授業料は免除されているが、生活費は自分で稼がねばならない。そのためレゴルの講師補助員として働いているのだが、不在になる期間があるので勉強がなかなかはかどらないのだ。

 しかし、今回の試合では迷わずレネに賭けたため、多くの資金を獲得することに成功していた。そのため仕事の回数を減らすことができるようになったのだ。

「え? 私に賭けたの?」

「はい。おかげで節約すれば一年は楽に暮らせるようになりました」

「私も賭けたよ。おかげで購入資金の足しにできたよ」

 セリエナもエルセリアも、レネ率いる班が負けるとは微塵も考えなかった。最終戦は手出しできないので勝敗は分からなかったはずなのだが、ノバルト達が大広間の罠をくぐり抜けたと知っていたので、命がけの戦いを知らない騎士見習いに負けるとは思わなかったのだ。

『……しまった! 頼めば良かったのか!』

「ああっ! ……がっくり」

 杜人の言葉にレネも気が付き、二人揃ってがっくりと肩を落とした。最近は散財が続いたので、普通に稼げるのならば稼いでおきたいところだった。

「あのう、それも禁止されていましたから、気にしなくても大丈夫ですよ?」

「その辺りはきちんと調べていたから、やっていた人は後で呼び出されると思う」

 真面目に受け取り頼むことすら考えなかった杜人とレネを慰めるために、セリエナとエルセリアは規則で無理だったことを教える。ちなみに調べるのは情報機関である。今後も続いて盛況になれば国庫が潤うので、不正に対する妥協はいっさいしていないのだ。

 それを聞いた杜人は即座に復活すると、わざとらしく髪をかきあげる仕草をしてレネを見た。

『ふっ、そんな小ずるいことを考えるなんて、レネも悪よのう』

「最初に言ったのはそっちでしょ!」

 即座に不可視念手の応酬を行う二人を見ながら、本当に仲が良いなと全員が温かく見守っていた。そして引き分けになったところで、ジンレイが追加を持ってきた。

「どうぞ。チョコ風味のアイスクリームです。これで牛乳は使い切りました」

「わあい」

 最後ということなので全員が味わって食べる。

「一日程度ならあまり変わらないかな?」

「うーん、比べなければ分からないね」

「保存方法が良いからではないですか?」

「おいしいです」

 こだわりはあっても味覚が極端に優れているわけではないので、全員がおいしそうに食べている。そして食べ終えたところで一旦お開きとなった。

 そして、後はいつもの状態となる。

「ここと、ここに相互干渉するように設定するんだよ」

「そっか、そうすれば綺麗にまとまるんだね。それじゃあここをこうすれば速くならないかな」

「……」

「おいしいです」

『……男の夢はどこにあるのだろうな』

 相変わらずレネとエルセリアは術式についての考察三昧、セリエナはレネが書いておいた魔法陣を無言で複写し続けていて、シャンティナはリボンをぶんぶんと動かしながらおやつをゆっくりと食べ続けている。

 この中で杜人の夢に一番近い行動がシャンティナだけという事実が、期待するだけ無駄であると主張しているのだ。そして現在、杜人は絶賛放置中である。だからといって魔導書の中に入ると質問のため呼び出されたりする。そのため終わるまでは居ることにしていて、今はすることもないので観察をしながら座卓に寝転がっていた。

『シャンティナ。おやつは量が少ないが種類はあるものと、量は多いが一種類だけのもの、どちらが好きだ?』

「……種類」

『分かった。ありがとう』

 少しだけ考えてからの返答に礼を言い、次からの構成は種類を多めにしてみるかと組み立てを考えていたところに、エルセリアから質問が来た。

「モリヒトさんは何か新しい魔法を作ったのですか?」

『ん? ああ、一応な。だが今回のものは、俺以外の使い勝手は考えていないぞ』

「え、見せて!」

 新しい魔法と聞いてレネが目を輝かせる。こうなるとなかなか元に戻らないので、杜人は肩を竦めると頷いた。

『分かった。少し待っていてくれ』

「うん」

 杜人は注目を浴びながら不可視念手で魔導書を掴み、そのまま部屋の隅に移動した。そして床に置かれた魔導書の中に入ってから魔法を発動した。

 すると魔導書は円筒形の魔法陣に覆われて見えなくなる。同時にレネの目の前に同様の円筒形魔法陣が現れ、レネ達は目を丸くして注目した。そして魔導書が入っていたはずの魔法陣が消失した後には何も残っておらず、レネの目の前の魔法陣からは魔導書が出現していた。

「わ……」

「すごい……」

「空間移動ですか……」

 杜人は魔導書から出てくると、驚く三人に向けて得意げに胸を張った。

『これは離れたところからレネの元へ帰るだけの魔法だ。出現座標をレネに固定することによって安定させているわけだな。俺とレネの間には契約による繋がりがあるから、これを断たれない限り結界でも移動を阻めないかなり強力な魔法だ』

「任意地点への移動はできないのですか?」

 セリエナの質問に杜人は肩を竦めた。

『完全に任意は座標を固定できないから無理だな。後は座標として何か魔法具を使う方法程度か。その場合は離れた二点間で繋がりが明確に保たれるものでなければ駄目だろうな』

 その返答に三人は無理そうだと力なく笑う。しかし、それはそれこれはこれである。レネは素早く杜人を捕まえ、エルセリアは笑顔で筆記用具を準備した。

「無理なのは分かったよ。それじゃあさっそく教えてね」

『せめて話の脈絡くらいは繋げようと思わないのか……』

「そんなことをしたら逃げられるじゃないですか」

 着実に経験を積み重ねてきた返答に杜人は顔を引きつらせ、最後の希望であるセリエナに目を向けた。セリエナはというと、しばらく見つめ合ってからそっと視線を外し、何も無かったと言いたげに複写作業に戻っていった。既に説得は無理と悟っているからである。

 杜人も承知しているので責めたりはしない。そのため覚悟は決めたが、念のため最後の抵抗を試みる。

『あー、使えないものを学んでも時間の無駄ではないか?』

「そんなことはないよ。新しいものは色々な知識を下敷きにして生まれるんだから。だから無駄な知識なんて一つもないんだよ?」

「そうです。準備はできましたので、いつでもどうぞ」

 エルセリアとレネの前には、何冊ものノートが置かれている。杜人はもう一度セリエナと視線を交わし、同じ考えであることに安堵した。即ち『あれ全部に書き込むつもりなんだろうな』である。

 そして翌朝、満足そうに微笑みながら眠るレネと、座卓の上で燃え尽きている杜人が発見されたのは言うまでもない。





 ラウレス騎士学校では、魔法教練を終えた班に新しく入ってくる新人を最初の半年間組み込んで指導させることになっている。そして新人達はその班をある程度選ぶことができ、その際になぜ選んだのかを書くことになっている。

「理由、魔法騎兵団入団希望……」

「これもですね」

「こっちも」

「というか、それ以外ないじゃない!」

 レンティの叫びにノバルト達も力なく微笑むことしかできない。

 実のところ大広間の罠を突破したことは、最後に強烈な印象を残したレネが居たためノバルト達は目立っておらず、精々騎士見習いが戦っていた程度の認識だった。それが公開試合の優勝候補から外れていたのに大番狂わせで優勝したことよって、魔法騎兵団の活躍と名前が一気に広まってしまったのだ。これは大広間にて、レネが指示を出すために大声で団名を言っていたからである。

 騎士団にはあるはずもない部隊のことで問い合わせが殺到し、当然のようにノバルト達は強面の騎士の前で、背中に汗を掻きながら洗いざらい報告することになった。

 そして色々と調整が行われた結果、騎士団所属の一部隊として魔法騎兵団が仮に発足することになり、見習いでありながら四人が団員として登録された。後は四人が騎士になれば正式な部隊として活動を開始することになる。部隊の象徴である徽章も正式名称として『黒姫徽章』の名を与えられた。ちなみにそのことを、レネはまだ知らない。

 そして部隊発足の情報が新人達に伝わり、現在の状況となっていた。最初に華々しい活躍をしてしまったために、憧れた者が多くなったのだ。ちなみに上層部からは自分達で何とかしろと丸投げされていた。これは、いずれは取捨選択をしなければならない立場になるため、予行演習も兼ねているからである。

「これは……、相談に行くしかないか?」

「そうですね」

「うん」

「今回だけは団長にふるい落としてもらって、次からは私達で、ね」

 正式には空位だが、四人にとっての団長はレネである。そのため今回だけは泣きつくことにした。




 そして遂に、レネは『黒姫徽章』のことを知り、危うく恥ずかしさで引きこもりになるところだった。耐えられたのは、ひとえに鍛えられたからである。

『こうして少女は荒波にもまれながらも健気に頑張り、少しずつ大人になっていくのであった。まる』

「嫌なことが本当に起こりそうだから止めて。……ええと、このときはこうして……」

 杜人のからかいに真っ赤になりながらも杜人謹製『上手なふるいの方法』を手に持って、ぶつぶつと練習を続ける。レネの苦労はまだ続くのであった。



 落ちこぼれと言われていた騎士見習いはもういない。数奇な運命を辿りながら、共に明日へと行進を始めたのだった。
お読み頂きありがとうございます。
ここで一区切りとなります。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ