挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
黒姫の魔導書 作者:てんてん

第2章 表と裏は未確定

36/155

第14話 上手な買い物の方法

 次の日、レネ達はまたもやジンレイの屋敷に集合して次の行動を話し合っていた。

「試験が無事に終わって良かったね。やっぱり中級の試験に上級魔法を使ったのが功を奏したかな」

 にこにことエルセリアは言い、セリエナは少しだけ恥ずかしそうにしていた。

『上級魔法を使える者は試験無しでも良いのではと思える状況だったな』

「本当にそうだったね。良いなぁ……」

 レネは事務局に寄ったところでエルセリア達に会い、レゴルのことを報告しながら待機してそのまま試験に付き合った。そして試験をする意味が無いと思えるものを目撃したのだ。

『攻撃は当然、防御は万全、筆記も中級が基準だから問題にならなかったな』

 杜人の評価に全員が頷く。結局試験は空いていたレゴルが行うことになり、筆記と実技試験二つを簡単に達成して中級の認定を獲得したのである。

 そしてレゴルはちょうど良いからとセリエナに再度説明を行い書類をその場で記入させ、晴れてセリエナはレゴルの講師補助員となったのだった。

『後は辞めずに続ければ便宜を図ってくれるそうだから頑張れよ』

「あれ? そんなこと言っていたっけ?」

 レネは昨日の会話を思い出して首を傾げる。杜人はそれに対して困ったものだと肩を竦めた。

『長く勤めてくれる者がなかなか居ないので困っているとわざわざ言っただろう? つまり、辞めない人は得難い人物と教えてくれたんだ。セリエナの状況はきちんと分かっているから、真面目にやれば辞めなくて済むようにするということだな』

「そう言われれば、確かに……」

 なるほどとレネは素直に頷く。ちなみにエルセリアとセリエナは説明を受けたときに気が付いていたので、笑みを固めたまま何も言わなかった。

「それじゃあ、研修の打ち合わせをしよっか」

「そうですね」

 エルセリアはそのまま触れずに話題を進め、セリエナは話題が戻らないようにと、素早くもらってきた資料を座卓に広げて受けた説明を繰り返す。

「研修の目的は業務内容の早期把握を促すためです。期間は一月で、通り道で採取をしつつ目的地の遺跡を探索し、また帰ってきます。補助員分の基本的な移動手段や宿泊道具、食料は支給されます。補助員が私的に人を連れてくるのは大丈夫ですが、その分の負担は全て補助員が行います。万が一、随員が研修の妨害をした場合は、その場で連れて来た補助員は解雇されるので注意が必要です」

『やはりきついな。これなら脱落者が出るのも納得だ。ついて行けるのは良いとして、一月講義を受けられないし確実に野宿がある。この中で野宿の経験がある者は居るか?』

 その問いには全員が首を横に振った。杜人も設備が整ったキャンプ程度しか経験が無いので指導はできない。

『仕方が無い、それは行きながら慣れよう。レネとエルセリアの移動手段と寝る天幕は最悪タマで代用しよう。念のため着替えや食料等はここにも置いておく。レネの分は後で一式買ってくるから、エルセリアとセリエナは買ったら持って来てくれ』

「分かりました」

「はい」

 一応大貴族のエルセリアは下手な場所で商品を買えないのだ。本人は気にしなくても名前を背負っている以上、最低限の体面を保つ配慮はしなければならない。そしてセリエナは支給されるのでそちらをもらって準備を行う。

「ところで、せっかく競争率の高い補助員になれたのに、お金をかけてまで迷惑をかけるような人を連れて来るものなの?」 

『昔居たんじゃないか? そうでなければこんな決まりはできないものだからな』

 レネの疑問はもっともなのだが、杜人もその辺りは推測程度しかできない。そのため揃って首を傾げる。その様子を見てエルセリアはくすりと笑った。

「推測だけれど、補助員になって講師に気に入られれば学院内の立場が上がると勘違いした人が居たんじゃないかな。そういう人は上下にこだわるから、軽く見られないようにそれなりに準備をすると思う。それで他の補助員と衝突したりしたのかも。実際私達も便宜目当てで申し込んだわけだしね。根元は一緒だと思う」

「そっか、もしかしたら補助員を申し込む人はお金目当てじゃなくて、基本的にそっち目当てが多いのかな?」

 レネは元々生活費を稼ぐために始めたので便宜については一切意識していなかった。そのため分かっていたようで分かっていなかった事柄をやっと理解できた。

『それはありうるな。懇意になれば就職先を斡旋してもらえるかもしれないし、有利な情報をこっそり教えてもらえる可能性もある。……となると、よほど内容がきついんだろうな』

 様々な利点を捨てても辞めたいと思う業務とは何だろうと、全員が微妙に顔を引きつらせた。実際はレゴルがなかなか便宜を図ろうとしないから見限って辞めていく者と、日程がきついので辞めていく者が大半であり、業務内容自体はそこまでではない。だが、それはまだ知らないことだから妄想は膨らんでいく。

「それでも、やり遂げてみせます」

 セリエナは心を奮い立たせるようにゆっくりと、しっかりと声に出した。レネとエルセリアが尽力してくれているのに、きついからという程度でやめるわけにはいかないと心にやる気を刻み込んだ。

『良い意気込みだ! それを祝っておやつにしよう。ジンレイ、あれを持て!』

「わかりました。皆様どうぞ」

 杜人が手を叩くと、待機していたジンレイが座卓におやつを作り出した。出てきたものは特盛りのパフェである。さすがに再現はまだ無理なので、すべてジンレイ作となっている。

「これ、全部食べて良いの?」

『良いぞ。擬似食品だから遠慮せずに食べてくれ。但し、食べ過ぎて腹を壊しても文句は言うなよ。心配なら腹を冷やさないように少しずつ食べるか、合間に温かい飲み物を飲んでくれ』

 食べて良いとの言葉に喜んで食べようとした三人だったが、続く言葉で固まり、忠告どおりゆっくりと食べ始めた。その間にジンレイは少し苦味のある温かいお茶を出していた。

「これは本物では作れないの?」

『似たようなものなら作れるだろう。ただ、味と食感だけで作ったから完全再現は無理だと思う。俺もジンレイも本職ではないからな』

 エルセリアの問いに杜人は肩を竦めた。さすがに杜人も手動で柔らかいソフトクリーム状に作る方法は知らない。空気を多く含ませると知っていても、素人なので含ませ方の詳細が分からないのだ。機械なら解説を見ているので分かるが、それでも冷やしながら攪拌を続ければできる程度である。

『帰ってきたら特別にチョコ味のものを出そう。食べたければ頑張れよ』

「おー!」

 レネ達は元気に拳を振り上げ、全員で笑いあったのだった。




 次の日、レネはさっそく旅の道具を揃えるためにダイル商会まで足を運んでいた。最初は受付のみで済ますつもりだったのだが、話を聞いた受付のリュトナがダイルに話を通し、なぜかダイルと準備の話をすることになった。

「一月とは大旅行です。荷物の取捨選択もしなければなりません。そこで活躍するのが長距離用の馬車と言うわけです。歩くより楽で、荷物も多く積めて夜は中で眠れるので天幕を張る必要がありません。ところがそれにも欠点があり、馬の餌を用意したり、車輪が壊れて立ち往生したりすることもあります。その欠点を克服するために開発されたのがこの走甲車です」

「……変な形ですね」

『まるで多足の甲虫だな』

 現在は倉庫にて、ダイルは奇妙な乗り物について説明している。全体的に角が無く、曲線で構成されている白い屋根付きの荷台。その先には透明な素材で覆いが作られている御者席がある。そして何よりの特徴は、車輪の代わりに昆虫のような足がたくさん付いていることだ。

「これは昆虫を参考に作られたものでして、走甲車と銘打ってどんな悪路でも進めるようにと設計されました。御者席にも覆いが付けられているので雨風の心配がありませんし、頑丈なので急な襲撃にも安心です。また、全体でひとつの魔法具となっていますので、多少傷ついてもそのうち再生するように術式を組んでいます。そのため補修も必要なく、馬のように食料を用意する必要もありません。速度も馬より出ます」

 今までの説明を聞いていると見た目はともかく性能は良さそうに聞こえる。しかし、ダイルのことをだんだんと理解してきたレネは、微妙に頬をひくつかせながら微笑むと疑問点を問いかけた。

「それで、これにはどんな欠点があるのですか?」

 それに対してダイルは額を小気味良く叩くと、ぐふふと笑って肩を揺らした。それを見たレネと杜人はやっぱりかと呟いた。致命的な欠点が無ければ、とっくに売られていなければおかしい性能なのだ。

「これは参りました。先手を取られました。実はこれ、作ったは良いのですが、制御が難しくて誰もまともに動かせない代物になってしまったのです。移動すると足が絡んで倒れたり、いきなり速度が上がったかと思うと曲がれずに直進しかできなかったりなど、とても使い物にならなかったのです。おまけに魔法使いでなければ動かすことすらできませんでした」

『いつも思うが、絶対変な発想をする職人が居て、それをわざと野放しにしているなこれは。きっと突拍子もない発想から、普通の人が考え付かないものを生み出すためだろうな』

 感心半分、呆れ半分でダイルを評価する。実際この走甲車も、制御さえ完璧なら高価になってもそれなりに売れると杜人は思った。

「この間の彗星の杖の制御部分の改良は見事なものでした。おかげで順調に売り上げが伸びております。そこでレネ様にお願いがあるのです。厚かましいお願いですが、この馬車の制御術式も組んで頂けないかと思いまして。もし組んで頂けるのでしたら、移動手段を含めた今回分の旅に必要なものと、今回の旅には間に合わないとは思いますが走甲車を一台進呈いたします。もちろん売れれば売り上げに応じて多少の還元もいたしましょう。どうでしょうか」

 ダイルはもみ手をしながらレネに頭を下げている。

『これは断れないな。借りがありすぎる』

 杜人はダイルのしたたかさに感心し、レネも困ったような笑みを浮かべることしかできなかった。要するにダイルは正規に頼めば恐ろしい金額になるはずの仕事を、実質旅行の金額負担だけでレネにしてもらおうとしているのだ。そしてレネが断らないことも分かっている。ここで断るような人物なら関係を切っても惜しくはないと思っているが、それはまずないと確信しているのだ。

「分かりました。できるかどうかはわかりませんが、一度見てみます」

「ありがとうございます。それでは使い方を説明いたしましょう」

 ぐふふと笑うダイルは、誰が見てもレネを嵌めた悪人にしか見えなかった。





『どんな感じだ?』

「正直無理かも。同時に処理しなきゃならない命令が多すぎて、今の術式では術者が処理しきれないのが原因だね。一応術式を簡素化してみたけれど、まだ多くて……」

 この手の操作系術式は、ただ魔力を流すだけでは笛に息を吹き込むだけなのと同じことになる。そのため操作する者が様々な事柄を入力して制御しなければならないのだ。現在は指が十本しかない者に二十個の穴がある笛を与えているようなものである。

 レネは御者席にある拳大の魔力結晶に触れながら読み取った術式を頭の中で改良している。そしてそのまま仮想体を構築して試しているのだが、なかなかうまく行かなかった。ダイルは時間がかかるため退出していて、今は手足に使ってくださいと置いていった職員が少し離れたところに居るだけである。

『そうか。処理を分散させても駄目なのか?』

「うん? 分散? どうやって?」

 杜人の何気ない一言にレネは理解できなかったために首を傾げ、杜人も意味が通じなかったために首を傾げた。

『だから、一気に処理できないなら複数の制御核に分散してみたらどうだということだ』

「でも、結局術者が同じ量を処理するわけだから同じことでしょ?」

 またもや話が食い違い、杜人はどう説明しようかと頭を悩ませた。

『違う、命令を系統別に分けて支配関係にある別の制御核で段階的に制御するんだ。例えば術者から移動方向と速度の命令が出たとする。それを受けた制御核がそれに対応する制御核に命令を流す。次の制御核ではその命令に適合する登録された足の動きを呼び出し、次はその動きの範囲内で決めた足を動かす角度と速度を呼び出す。こういう風にしていけば一連の動作がひとつの命令で自動的に決定されることになるだろ。そうすれば何から何までやらなくて済む』

 杜人は昆虫型からの連想で、確か昆虫は副脳があったよなとうろ覚えの知識が浮かび、それを模した制御方法があったような気がしたため、そこから思いついた発想だった。だからできるかどうかは考慮していない。

 説明を聞いたレネはきょとんとした目で杜人を見つめていたが、やがて内容を理解して考えながら視線を下にむける。

「そっか、全部を指定しないで命令制御を簡素化して、次の工程で連結していくように伝達すれば良いんだ。ならここをこうして、こっちに繋げて……」

『おーい? ……駄目か』

 レネの前で手を振るが一切反応は無い。完全に自分の世界に埋没したのを確認したため、杜人は仕方が無いと肩を竦め、おとなしく隣に寝転んだ。

 レネは新しく得た概念に興奮しながら脳内にて術式を凄まじい速さで構築、改変を繰り返している。

「そう、そうだよ。何でこんな簡単なことに気が付かなかったんだろう」

 現在まで使われている術式は、言うなれば一枚の絵画だ。複雑になればなるほど材料が必要になり、面積も必要になる。そして全体で意味をなすので完成しないと単なる落書きと同じになる。つまり構築される魔法陣は等級に関係なく常にひとつだけで、完成しないと発動しない。それが当たり前だった。

 新しく思いついたものは従来とは異なり、一枚の画板の中に複数の絵を関連させながら配置して重ねて描き、重なり合った絵を切り替えることによって最終的な絵柄が現れる方法だ。これなら必要な部分だけを抜き出して発動することができる。この場合出来上がる魔法陣は大小が組み合わされ、積み上がるような形のまったく新しい積層型の魔法陣になる。

 つまり、今までの魔法陣は複雑な制御が必要だが自由度が高く、積層型は必要なひとつを指定するだけでそれに関連する決められた術式が自動的に連鎖していくので、制御は楽だが自由度は小さくなる。

 一般的な魔法として使うのならば今までのほうが良いが、複雑な制御が絡む今回のような魔法具には積層型のほうが使用者の力量が低くても使いやすいものを作ることができる。思いつけば簡単なことなのだが、その思いつくことが一番大変なのだ。

「すみませーん! 改良案ができましたので、術式を書くものをお願いします。大量にあるので、できれば転写紙で!」

 興奮した勢いのまま待機していた職員に手を振って呼びかけた。職員はというと、もうできたと言うレネに口を開けて驚いている。

『これでまた伝説が追加されたわけだ。さて、今度はどうなることやら』

 その両方を観察していた杜人は、肩を竦めてうかつなレネを面白そうに見つめていた。





「良し、これなら大丈夫」

 レネは自信を持ってできあがった紙の束を確認し、笑顔で何度も頷いた。杜人も確認し、機能としては問題ないことを確認した。

『そうだな。後は……封入した後で固定化を行うと思うが、普段はそのままで、必要なときに簡単に解除できるようにはならないか? こう、鍵か何かを設定して』

「ん? んんー……、うん、できるよ。ただ、結構大きな専用の術式を加えないと駄目だから、使う媒体も魔力量の大きなものにしないとできないかな。何に使うの?」

 封入型は魔力の運用効率が良いが作るのに技術がいるため、主に高価な魔法具に使用されている方法だ。そして固定化を行わない場合、一度発動すると術式を保持できずに消えてしまう欠点を持つ。そして固定化を行うと通常は以降の修正ができないので、たまに星天の杖のようなものができあがるのだ。

 レネはあっさりと答えたが、過去の研究者は割にあわないとして諦めた分野である。小さい術式では媒体を取り替えたほうが安く済み、大規模になると媒体の材料費が跳ね上がるので、加えると初期投資において洒落にならない出費となるのだ。

『これはかなり複雑な術式だし、動かす機構も複雑だ。だから実際に長く使っていないと分からない不具合や不便さが必ずあると思う。そんなときに一回一回制御核を取り替えないといけないでは、結局損をすることになると思ってな。修正可能にしておけば、中身を入れ替えるだけで済む。星天の杖が良い例だ。まあ、販売価格との兼ね合いがあるだろうから相談すれば良いと思う』

 買ったものが不良品でした。修正するにはお金がかかりますでは信用がいくらあっても足りない。そんなことを続ければやがて誰も買わなくなり、他の商品も売れなくなる可能性がある。かといって全てに対処していても資金が足りなくなってしまう。どこで線を引くのかも商才のひとつである。

「確かに……。うん、二種類書いておくよ。すみませーん! 紙を今までと同じくらいお願いしまーす!」

 ちなみに現時点で撲殺できそうな量となっている。そのため、その要求に職員は恐ろしいものを見る目でレネを見ていた。






「これがその術式ですか。さすがですな」

 書き込みが終わったところでレネは商会長室にてダイルに成果を渡していた。

「封入する時も分割して最後に結合すれば大丈夫なように順番と手順も付けました。問題は構築に時間がかかることでしょうか」

 そうは言いながらも、レネはやり遂げた喜びを表情に出している。ダイルの手には厚い辞典並みの本があるが、それ一冊に走甲車の制御術式がすべて記載されているのだ。ちなみに量が多すぎたので、原本は脳内で構築した術式を特別な魔法紙を用いて転写して作成した。

 ダイルもまさかもう出来上がっているとは思っていなかったのでかなり驚いているのだが、顔には出さずに話を合わせている。一度中身を見たが、理解するだけでしばらくかかりそうだと考えていた。

「それとおまけとして封入した後に修正できるようになる術式と組み込み方法がこちらです。消費魔力量は三割増し程度でしょうか。入れれば固定化した後で修正できるようになります。お金のことはよく分からないので、使うかどうかはお任せします」

「ありがとうございます。それでは後ほど検討いたします」

 レネとしてはせっかく作ったのだから使って欲しいが、売れない値段になれば元も子もない。どんなものにでも適正価格は存在するので、こちらに関しては今までのお礼と思っていた。

 もちろんダイルはそんなレネの内心を分かっている。そのため何かお返しはないかと考え、良いことを思いついて笑みを浮かべた。

「ところでまだお時間は大丈夫でしょうか。お暇なら追記型の制御核の作成をお願いしたいのですが。そうすれば試作品で試験走行をして再調整できますし、調整した走甲車もすぐにお渡しできます。ついでに見本もいくつか作って頂けるとありがたいです。もちろんその分の手間賃はお支払いいたします」

『お、それは助かるな。それなら隠れてジンレイを呼び出せるし、荷物が増えても怪しまれない。ついでに貯金も増えるから良いと思うぞ』

 杜人はダイルの考えを分かった上で賛成した。要するに、完成品を作れるようになること自体が先になりそうなのですぐに引き渡せるように配慮し、ついでに比べるための本物も作ってもらおうということだ。

「良いですよ。それでは後で何個か作りますね」

 レネのほうはそんな裏側に気が付くことなく、走甲車があれば楽になると思って簡単に了承した。そしてまずは確認用に持ち込まれた魔力結晶に、鼻歌交じりで術式を封入していく。その速度にダイルは僅かに目をみはり、こっそりと部下に魔力結晶の買い付けを指示していた。

 そしてきちんと動くことを実際に確認し、晴れて走甲車を手に入れて、ついでに何故か大量に持ち込まれた魔力結晶にも素晴らしい速度で術式を封入していった。レネは貯金が増えたと単純に喜んだが、杜人はダイルのしたたかさに脱帽したのであった。

 うまくいってぐふふと笑うダイルは、もちろん誰が見てもレネを口先三寸で騙した腹黒商人にしか見えなかった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ