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《第四章》
7.仲直り
「マシューさん、私リカルドさんに謝りたいです……」

 サニアの家を出て、集会所に行く道すがら、早夜はマシューに言った。

「は? 何で早夜が謝るんだ?」
「だって私、リカルドさんを怒らせてしまいました……」

 先程のリジャイとの件だ。
 あの時の事を思い出し、マシューは尋ねる。

「あのリカルドが嫌うくらいの奴だ、一体お前に何したんだ?」

 途端に真っ赤になる早夜。

「へっ!? あ、あのっ、そのっ……い、言わなきゃ駄目ですか?」
「俺は別に謝んなくてもいーと思ってるから、ちゃんと理由言ってくんねーと、協力は出来ねーぞ?」

 マシューがそう言うと、早夜は俯き考えていたが、やがて意を決したように言った。

「キッ、キスされましたっ!」
「はぁっ!? それは……怒るだろ、フツー。俺だって、今、怒りが湧くぞ……」

 可愛い妹みたいな早夜に手を出したのだ。自然と怒りが湧いてくる。

「で、でもっ、最初のは、私の傷を治す為の応急処置だったんですよぅ!」
「……最初? ……一度じゃないのか?」

 ハッと口を押さえる早夜。

「それも、リカルドの目の前でか……」

 はぁ、と溜息を吐くマシュー。リジャイを嫌う理由と、怒りの真相が分った。
 マシューは、早夜の頭に手をポンと置くと言った。

「そりゃ、怒って当然だわなー……」
「はい。リカルドさん、私を心配してくれただけなのに、関係無いって言っちゃいました……」

 マシューは早夜をまじまじと見る。
 あんなにあからさまな態度なのに、それに気付かない早夜と、そして恐らく自分自身のその感情に気付いて無さそーなリカルドを思い、呆れるマシュー。
 彼はもう一度ため息を吐くと、

「じゃあ、謝んなきゃなぁ……」

 と早夜を見る。
 そして、何か思いついたようにニヤッと笑うと早夜に言った。

「なぁ早夜。一発で仲直りできる方法、教えてやろうか?」

 マシューの言葉に顔を輝かせる早夜。
 彼は何やら、早夜に耳打ちをする。それを聞いた早夜は、顔を赤くするとマシューを見上げた。

「そ、それ、本当にやらなきゃ駄目ですかぁ?」
「だって、仲直りしたいんだろ?」

 その言葉にウウッと言葉を詰まらせると、グッと拳を握り、決心したように頷いた。

「わかりましたっ、やってみますっ!!」

(ほんっとーに素直だなー、サヤは……)
 吹き出しそうになるのを必死で堪えながら、早夜のこの素直さに心が和むのを感じた。



「なぁー、リカルドー。何でさっき、あんなに怒ってたんだよー」

 デュマが先程のリカルドの剣幕を思い出し訊ねる。
 リカルドはその言葉にリジャイと早夜の事が脳裏に浮かび、また怒りが湧いてくるのを感じた。

「言いたくねー!」

 リカルドはそれっきり黙ってしまう。

「えー、何だよー、気になるなぁ……」

 その時キースは、顎に手を置きうーんと唸っていた。

「もしかして……いや、でも、うーん……」
「リカルドさんは、ヤキモチ妬いてたんスよ!」
「は!? 誰に?」

 突然のハルの言葉に、デュマが声を裏返して尋ねる。

「サヤに決まってるっス!」

 セインもまた腕を組み、うんうんと頷いている。

「っな!? ちっ、ちがっ!!」

 リカルドは否定しようとするも、そう考えると一番しっくり来るのでは? と思い、ハッとなる。
 そう考えるのが、一番今まで感じてきた自分の感情に、ぴったり当て嵌まるのではないだろうか。

「あー、ハル。やっぱりそうなのか? アレ……」

 キースがハルに聞いてきた。実は彼もずっと、そうなんじゃないかと思っていたのだった。
 しかし、相手はいくら可愛いと言っても男、まさかという思いが湧く。

「ま、まさかっ! リカルドお前!? 女の子、苦手苦手って言ってたのは、実は――……そっちの人?」
「それは断じて違うっ!!」

 趣味を疑い、離れてゆくデュマに、きっぱりと否定するリカルド。

「いやー、確かにサヤは女の子みたいにカワイーけど……」
「だからっ、違うって!!」

 彼らのそんな会話を聞きながら、ハルはクスクスと笑い、セインは苦笑するのだった。

 そんな中、満面の笑みでマシューが部屋の中に入ってきた。

「マシュー、お前一体何処に行ってたんだよ。サヤはどうした?」

 彼を見るなりそう訊ねてくるリカルドを、彼は意味ありげに見やると、一同を見回す。

「おーい、お前ら! 改めて紹介するぞ、リュウキ様の妹のサヤだ」
「なっ!?」

 リカルドが焦って声を上げる中、マシューは扉を開け、早夜を中に招き入れる。
 俯き加減で、おずおずと入って来る早夜。チラッと見ると、皆驚いた顔で此方を見ていた。

「ご、ごめんなさい、皆さんを騙してました……」

 申し訳なさそうに早夜が頭を下げる中、ハルが声を上げた。

「何だ、もうバラしちゃったんスか? もうちょっと今の状況を楽しみたかったッス!」
「って、お前知ってたのか!?」

 キースが驚いてハルを見ると、彼はニッコリと笑って言った。

「声を聞いた時にあれ? と思ってたんスけど、手の感触と匂いで確信したッス!」

(ああ、だからあの時……)
 ハルに匂いを嗅がれた時の事を思い出して、頬を染める。
 その時、セインも手を上げにっこりと笑って頷いた。

「セインも知ってたのか!?」

 セインは近くにあった紙に、サラサラッと書いて見せる。
『骨盤の位置』
 早夜には何と書いてあるのかは読めなかったが、皆が何故か、自分の腰の辺りを見るので、思わずマシューの後ろに隠れた。

「何だ、結構バレてたんだな。ガマじぃも何か、分ってたみたいだし……」

 集会所の横に座るガマじぃに会ったのだが、彼は早夜の姿を見ると頷き、

「うむ、やっぱり女性は、女性の格好が一番似合いますなぁ」

 等と、別段驚いた様子もなく笑って見せたのだ。

「おい、デュマ。お前、いつまで見惚れてるつもりだ?」

 キースが呆れてデュマを見やる。
 彼は呆けた顔で早夜に魅入っていたのであるが、皆に注目されている事に気付くと、ハッとして早夜に詰め寄った。

「何だよー、だったら早く言ってよ。女の子には第一印象が大事なのに、口説き損ねちゃったじゃないかっ!」
「ごめんなさい……」

 デュマに怒ったように言われ、早夜は何故か謝っていた。
 けれどデュマは、ぶんぶんと首を振ると、

「ううん、全然サヤは悪くないって! 寧ろ気付かなかったオレが悪いんだよ。こんなに可愛いのに……。
 ああ……それにしても、その服とっても似合ってるね。サヤってすごく肌が白いんだー……。あっ、赤くなった……へぇ、赤くなると肌もピンクに染まるんだぁ、すっげー色っぽい……」

 どんどん顔を近づけてくるデュマに、顔を真っ赤にして後退る早夜。
 
「おい……」

 その時、低い声でデュマの首根っこを掴み、引き離す者が居た。見ると、物凄く冷たい目でデュマを睨んでいるリカルドであった。
 そんな彼を見て、たらりと汗を垂らすデュマ。

「ははは……リカルド、チョー怖いよ? オレって女の子見ると、つい口説きたくなっちゃうんだって。これって性分だよ? 条件反射なんだよ?
 でも、どうして男の子の格好なんてしてた訳?」

 デュマが尋ねると、早夜はリカルドをチラッと見て言った。

「あの、それは……リカルドさんが……」
「へ? 何で?」

 今度はリカルドを見るデュマ。 
 怖い顔をしていた彼は、そう訊ねられると、ウッと言葉を詰まらせる。
 デュマはうーんと考えると、ハッと閃いた。

「そうか! さては、こんな可愛いサヤを誰にも見せたくなかったんだな? まったく、独占欲が強いなぁ、リカルドは……」

 すると、その言葉を聞いていたハルも、会話に入ってくる。

「そうッスね! やきもち焼く位ッスもんね!」
「やきもち?」

 それを聞いて、首を傾げる早夜。

「なっ!? ち、違う――……!」

 顔を赤くしてリカルドは否定する。

「なるほどなー、でもリカルド、お前女性が苦手だったんじゃ……?」

 キースがポツリと疑問を口にすると、デュマが空かさず答えた。

「そんなのっ! サヤのあまりの可愛さに、目覚めちゃったに決まってるだろー!!」
「ほぅ、そうなんだー……」

 皆がジーッとリカルドを見る。
 すると、彼は必死になって叫んだ。

「だからっ! 俺はただ、動き易いようにと――」
「だったら別に、弟と紹介しなくてもよかったんじゃないか?」

 マシューが意地悪く言う。

「うぅっ、そ、それは思わず……」
「思わず、弟って言っちゃう位、私が男みたいだったんですね――……」

 早夜がぽつりと言う。 
 見ると、しょんぼりとしたように、早夜が俯いていた。

「ほらー、見ろよ! リカルドがはっきり言わないから、サヤ誤解しちゃってるだろー?
 サヤ、男みたいなんてとんでもない! 男装してたサヤもすっごく可愛かったって!」
 
 デュマが早夜を慰める。
 するとマシューも空かさず言った。

「そうだよなぁ。実際デュマとキース以外は女って気付いてたしなー……」

 その言葉に、今度はデュマとキースが落ち込むのだった。



「なぁサヤ、そろそろ言うか?」

 マシューがぼそっと訊いてきた。
 早夜はハッと顔を上げると、真剣な顔になって頷く。

(まぁ、もうそろそろ勘弁してやるか……それに、これからがメインだ……)
 リカルドを見ながら、これから起きる事を思うと、待ち通しくて仕方がないマシューであった。

「おい、リカルド。サヤがお前に話があるそうだ」
「えっ?」

 リカルドが驚いて早夜を見る。
 早夜は少し緊張した面持ちで、彼の前に立つと、リカルドもその緊張が移ったのか、顔を強張らせた。

「あの、リカルドさん……今日は色々とごめんなさい……」

 そう言って頭を下げる早夜に、リカルドはポカンとなる。

「何でサヤが謝んだよ?」

(寧ろ謝んのは俺の方じゃないのか?)
 リカルドがそう思っていると、早夜は更に言った。

「それは……私が勝手にリカルドさんに対して怒ってしまいましたし。後、リカルドさんを怒らせてしまいました……」
「……それは別に、お前のせいじゃ――……」
「あの、でも、リカルドさんは私を心配してくれただけなのに……私、関係ないなんて言っちゃいました……」
「……別に、もう怒ってねーよ……」

 心配という言葉にちょっと引っ掛かったが、リカルドは早夜を安心させるように言った。そして、彼もまた謝罪する。

「俺の方こそごめんな、弟なんて言って。怒って当然だよな……」
「い、いえ、あれはチビとか胸が無いって言われてつい……」

 恥ずかしそうに言う早夜に、リカルドは首を傾げる。

「は? 俺はそんな事言ってねーぞ?」
「…………」
「…………」

 お互い、無言で見つめ合う事暫し。
 そしてハッとしてマシューを見ると、彼は頬を掻きながら、気まずそうに言った。

「あー、ワリー。それ言ったの俺だわ……」
「マーシュー……テメーのせいかぁ……」

 拳を震わせながら、リカルドはマシューに詰め寄る。

「いやー、ワリーワリー。そっかー、原因俺かー……それは気付かなかったなー、ごめんなー、2人ともー……」

 冷や汗を流しながら、ジリジリと後ずさるマシュー。

「い、いえっ! 決してマシューさんのせいではありませんっ! 悪いのは、そんな事で拗ねてしまった私ですぅ! ごめんなさいぃー!!」

 リカルドとマシューの間に入り、早夜は必死で謝る。そして、リカルドをパッと見ると、彼の袖を引っ張り言った。

「リ、リカルドさんっ! だからっ、あの、そのっ、私と仲直りしましょう!!」

 突然の申し出に、訝しげな顔をする。
(仲直りなら今さっきしなかったか? 俺たち……)
 だが、早夜はさらにグイグイとリカルドの袖を引っ張る。

「立ったままじゃ、仲直りできませんよぅ」
「はっ!?」

 何の事やらサッパリのリカルドであったが、マシューは早夜の後ろで口を押さえていた。
 その目は笑っている。
 そして、セインを見ると、リカルドを指さす。セインはそれを見て、彼が何かた企んでいる事に気付いた。
 セインは背後からリカルドに近づき、彼の肩を掴むと、グイッと下に向かって押した。

「おわっ!!」

 あまりの力に抗えず、リカルド膝をしこたま打った。

「っつーー!!」

 膝を押さえるリカルド後ろで、セインが早夜に向かって爽やかに笑い、どうぞと言う様に手のひらを上にする。
 マシューが満面の笑みで、セインに親指を立てた。セインもそれに答えて親指を立てる。

「あ、あの……大丈夫ですか?」

 早夜は、痛そうにするリカルドを心配そうに見つめる。

「大丈夫だ……」

 リカルドは、涙目で答えた。
(だ、大丈夫じゃないよぅ……)
 そう思ったが、意を決して、リカルドの肩に手を添える。

「……?」
「あの、リカルドさん。私、つまらない事で意地を張って、リカルドさんに対して失礼な態度をとっちゃって、ごめんなさい……」

 そう言って、早夜はその身を屈めた。
 リカルドは、ふわりと鼻腔をかすめる甘い香りと、それと同時に頬に感じる柔らかな感触に、硬直する。
 周りから、おおっと声が上がった。

「後、リカルドさんに、関係無いって言っちゃって、ごめんなさい……」

 今度は、反対側の頬にその柔らかな感触がある。
 それが離れ、早夜の顔を真正面に捉える。頬をほんのりと染め、照れたように笑うその笑顔は、とても可愛らしかった。

「これで、リカルドさんと仲直りできましたよね!」

 早夜は嬉しそうにそう言ったが、周りの様子にあれ? となる。
 リカルドは固まっているし、周りの者達は皆驚いた顔をしている。

「何で皆さん驚いているんですか? 女性から仲直りしたい時は、謝罪の言葉と共に、相手のほっぺにチューをするって、マシューさん言いましたよね……?」

 夢の中では聞いた事も無い話だったが、マシューの街ではそうなのかも、と思ったのだ。
 だが、マシューを振り返って見てみると、彼は必死の形相で笑いを堪えている所だった。

「っ!? な、何で笑うんですか!? ハッ! もしかして、嘘なんですかぁ!?」

 とうとう堪えきれず、声を上げてマシューは笑い出した。

「はははっ! スゲーよ、サヤ! 俺の想像以上だ。まさか、二回もするなんてっ! ククッ」
「それは、だって、謝罪の言葉と共にって……謝りたい事が二つあったんですよぅ……。でも、酷いです! 何で騙したんですか?」

 頬を膨らませ、マシューを睨む。
 まだ、笑いの治まらない彼は、目に涙を浮かべていた。
 やっと治まって、ハーと息を吐くと、リカルドを指さす。

「別にだましてねーって。一発で仲直り出来ただろーが」

 そう言われてリカルドを見ると、彼はまだ呆けた様になっていた。

「リ、リカルドさん!? 大丈夫ですか?」

 早夜が近づくと、今しがたキスした所に、淡い色の口紅が薄っすらと付いているのが見える。改めて、自分がした事を実感し、顔が熱くなった。
(ふぇ〜〜〜っ!恥ずかしいよぅ〜〜!)
 早夜は、サニアから渡されたハンカチを取り出すと、リカルドの頬を拭いた。

「ご、ごめんなさい〜〜! 今すぐ拭きますっ!!」

 リカルドは、ごしごしと拭かれる感触に、ハッと我に返る。顔を赤くし、眉を寄せる早夜の顔が、目の前に存在する。
 早夜は、もう一方の頬もふき取ろうとしていた。リカルドはそれに気付くと、バッと立ち上がって阻止する。

「あっ! 立ったら上手く拭けませんよぅー」

 早夜がそう言って、めいっぱい手を伸ばして頬を拭こうとするのを、リカルドは手で隠して後ずさる。何だか勿体無い気がしたのだ。

「いい!」
「えぇ!? でも、口紅が付いちゃってますよ?」
「だからっ、別にいいってっ!!」
「そんなっ、良くないですよ!」

 こうして、何とも微笑ましい追いかけっこが始まった。ここにいる者達も、それを微笑ましく眺めている。
 ただデュマだけは、それを羨ましげに見ていた。

「クッソー、いーなーリカルド。オレもサヤにチューしてもらいたい――……」



 夕方近くなり、城に帰る事にした早夜とリカルド。
 また屋根の上を歩くのだろうかと思ったが、このゴミための街の中央にある移動用の魔法陣で、中央広場の転送装置へと直行できるらしかった。
 
 マシュー達が見守る中、ガマじぃが早夜に、ある物を渡した。
 それは、緑と赤の石の付いたブローチ。

「サヤ殿、それはこの街の住人の証。それが在れば、中央広場の転送装置から直接、ここへ来る事が出来ますぞ。サヤ殿なら、いつでも歓迎しますからな」

 そして、この街に来たい時は、ブローチの赤い石を上にするのだと言われた。
 それを見ていたリカルドは、憮然として言った。

「ちょっと待て! 俺は今まで、こんな物貰った事が無いぞ!」
「ははは、リカルドの坊ちゃんは、男性ですし、若いですからな。しっかり運動して下され」
「それに、渡したら最後、ここに入り浸るだろ? 一応王子なんだから、城の執務もちゃんとこなせよ!」

 マシューがそう言うと、リカルドは拗ねたように横を向く。

「んなのは別に、俺が居なくても、兄貴らがやってる事だ!」

 そんな様子のリカルドを、マシューは困ったように見つめた。

「あ、そういえば、マシューは裏路地歩いてたけど、お前はそのブローチ持ってないのか?」

 リカルドが気付いてそう言うと、マシューはフフンと笑った。

「俺は見回りも兼ねてだ。昔のお前みたいに、迷ってベソかいてる奴が居ないとも限らねーからなっ!」

 そう言われてリカルドは、ムスッとするのだった。











 〜日本・一時帰宅その後 其の七〜


 ベッドの中でウトウトと眠りに付く蒼。 

 その時、ポトッと胸の上に何かが落ちてきた。
 目を開けて見てみると、花ちゃんだった。

「花ちゃん? どうしたの?」

 目を擦りながら、蒼は聞く。
 確か、枕元の花ちゃん様に作ったベッド(果物籠の中に、タオルを敷いた物)の中で寝ていた筈である。
 すると、花ちゃんは申し訳なさそうに謝った。

「蒼、起コシテシマッテ、ゴメンナサイデツ」

 蒼は、そんな花ちゃんに苦笑しながら首を振る。

「別に謝らなくてもいいわ。もともと浅い眠りだったし、それより何してたの?」

 蒼がそう尋ねると、花ちゃんはちっちゃなその手で、口を押さえてクスクスと笑った。

「蒼! 宝物ヲ隠シマツタ! 秘密ノ場所ナノデツ!」
「えぇ?」

 花ちゃんのその言葉に、目をぱちくりとさせる。

「トッテモ素敵ナ物ナノデツ! ダカラ、蒼ニモオ裾分ケスルノデツ!」

 そう言って、またクスクスと笑う。



「も〜、花ちゃんったら、何処に隠したの!?」

 朝起きて探してみたが、結局見つからず、花ちゃんに尋ねる。
 すると花ちゃんは、嬉しそうにクスクス笑うと言ったのだ。

「ヒミ〜ツ秘密、ヒミツナノデツ♪ デモ大丈夫ナノデツ。チャント見ツカル場所ナノデツ!」
「ええ〜? わかんないよ〜、花ちゃん教えて?」
「ウフフ♪ ヒミツ、ヒミツ〜ソレハ秘密ナノデツ〜♪」


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