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《第四章》
~表の顔と裏の顔~
『 欲しい欲しいと求めるは

  絶対的な“力”の束縛

  “力”がその身を強く縛るほどに

  満たされて行くのは

  “束縛”による心の“解放” 』





 活気ある町並み。


 そして、建物の屋根からそれを見下ろす影……。

 風になびく紫色の長い髪、女性らしい丸みのあるしなやかな体つき。


 彼女の名は、カンナ・ハマ。


 今、彼女の体は誰の目にも留まる事は無い。

 そして彼女のその体には、顔にも、体にも、その髪の毛一本一本にでさえも、青白く輝く呪印が描かれている。

 その呪印の効果により、彼女の姿は……いや、存在自体が今、消え去っているのだ。


 今の彼女は普段とは違い、あの緩慢な動きも凡庸とした雰囲気もなりを潜め、その眼差しは鋭く生気に満ちている。


 彼女が瞬きをするその灰色の眼にもまた、呪印が浮かび上がっている。

 彼女は、その呪印の浮かぶ瞳で周りをゆっくりと見回す。

 その瞳の呪印によって、魔力を個別に識別するのだ。

 
 クラジバールの感知装置により、この広いアルフォレシアの国の中、城周辺とその城下町と限られてきたが、それでもまだ広く、少しずつ範囲を狭めている所だった。

 骨の折れる作業だが、それでも彼女は苦ではなかった。

 何故ならこれは、久しぶりの力の開放。

 出来る事ならば、ずっと味わっていたい感覚だった。


 だが、確実に素早く任務を遂行する事、これもまた彼女の生きる上で大切な事。

 長期に渡る力の開放は、体に負担をかけるのだ。

 下手をすれば、命を縮める事に繋がりかねない。

 それに、彼女の中の何かが求めるのだ。

 その魔力の主に会いたいと……。

 あの時感じた力は、何も感じる事の無い彼女の心に、恐怖の感情を覚えさせた。


(あの時、私は恐怖を感じながらも笑っていた……。それは、私を解放させる力なのかもしれない……)


 だから、王子の命令は彼女にとって好都合な事だった。

 その力の主に会える。彼女の心は弾んでいた。


(その者がどんな人間でも構わない。重要な事は、その人物が自分を支配するに足る人間か――……)


 その時、彼女は自分の他にも魔力を探っている者がいる事に気付いた。


(あれは命令とは関係ない)


 そう思い無視をする。

 ただ、自分の邪魔をするのであれば、その時始末をすれば良いと思った。


「ここにはいない……」

 そう呟くと、屋根の上の足場から、何も無い宙へと足を出す。

 すると、そのつま先から呪印の紋様が空中に広がり、そしてそれは、そのまま彼女を取り囲むと、まるで飲み込もうとするように覆い被さり、彼女の姿もろとも消えてしまった。

 そして、数キロ先の屋根の上にまた姿を現す。

 すると、先程したのと同じように、ゆっくりと周りを見回した。

 
 こうして彼女は、少しずつだが、確実に早夜のもとへと近づいてゆくのだった。



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夢の逢瀬 ←番外編です。


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