ちいさきものと縦書き表示RDF


ちいさきものと
作:さきと





夕焼けが照らす 遠く遠く伸びる影
ひとつはちいさく ひとつはおおきく
砂に塗れた掌 笑顔で握ってくれた
鳥達が帰路を急かす でもゆっくりと

歩幅を合わせ歩いてくれる
赤い陽射しに染められる頬
嬉しくて 嬉しくて 笑った
見えた一番の星を指さして



遠いはずなのに とても近い帰りの道
いつまでも離したくないおおきな掌
強く握れば 握り返してくれる幸せ
心を満たしてくれる優しき母の言葉

それだけでよかった



ある日のいつもと変わらぬ夕暮れ
待てど待てども来てはくれなくて
日は落ち鳥はいなくなりそれでも
いつまでも独り 待ち続けた のに………



「お前のお母さんは………」

見知らぬ誰かが言う
空に還ったのだと

信じるものか!
認めるものか!

嘘つきな大人の言う事なんて聞くものか!

思わず走り出す
いつもの場所へ

どこにいるの?
僕はここにいるよ?
早く迎えに来てよ!

突然降り出す雨
それでも探した

ああ

声が聞きたい
笑顔が見たい
抱きしめられたい
温もりを感じたい

冷たい冷たい雨
寒いよお母さん


早く逢いたいよ……


何も 何もいらないから
お願いだから姿を見せて


膝を抱え待つ
雨に打たれながら
この場所でずっと
ずっとずっと待つ


いつしか雨は止み
雲は消え無くなり
月が静かに照らす
優しく母のように


微かに見える面影を探し続けて
終わる事ない哀しみとかくれんぼ
幼き心 募るもの 傷痕を深め
知らぬ間の別離 声を上げた


夕暮れに染まる思い出
差し延べられた手は
幻と消え 掴めなくて
瞬く光の点滅に馳せ


ちいさな心を静かに刻む



懐かしき声 子守の唄
涙で霞む景色 街の光
かけがえのないものは
夢に溶け そして知る



その終わりを

戻らない時を



ちいさきものと

おおきなものと

再び訪れる帰るべき夕暮れの空の下で
















ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




◆BACK
小説家になろう