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THE WORLD 作者:SEASONS

4月4日

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《サイド:天城総魔》

翔子の攻撃を目にした瞬間に防ぎきれないだろうと感じられた。

いや、正しくはこう言うべきだろうか。

防げない攻撃を望んでいた、と。

今までと同じような圧勝ではない全力を尽くす事の出来る存在。

その相手として翔子を選び。

事実として翔子は俺に一撃を加える事が出来た。

自分を上回る力の存在を実感して感じる高揚感は今までのどんな相手よりも強い。

俺はまだ全てを極めたのではないと実感できると同時に、
まだまだ強くなれるという確信がもてたからだ。

「さすがだな、翔子」

やはり翔子は強かった。

俺の力を吹き飛ばしてしまうほど翔子は強かった。

だから、認めようと思う。

そして翔子の力に敬意を評して全力で戦おうと思う。

「さすがに強いな。素直に尊敬しよう」

「ぁ…ぅ。そ、そうかな?それほどじゃないんじゃないかな~?」

本人はすでに戦意を失いつつあるようだが翔子の実力は認めるに値する。

その事実が俺を本気にさせてくれたからな。

「お前の実力を認めよう」

「う…。」

俺の一言で翔子の表情が凍りつくのが感じ取れる。

だが、ここで手を抜くつもりはない。

それではここまで来た意味がないからな。

「約束通り、全力で戦おう」

「あう…。や、やっぱり、そうなるのよね…。」

ついに始まるのだと翔子は理解したようだ。

だがこれは翔子が望んだ戦いでもある。

互いに悔いの残らないように、全力で戦うのが礼儀だからな。

「今更かもしれないが、俺も本気で戦うことを約束しよう」

「うぅ、あぁ、もうっ!!しょうがないわねっ!!こうなったらやぶれかぶれよっ!!」

気持ちを奮い立たせる翔子がパルティアを構えて俺の姿を視線で追う。

その様子を眺めながらソウルイーターを構え直して翔子の姿を捉える。

「………。」

互いの視線が絡まるその瞬間。

「これが、始まりだ。」

左手にソウルイーターを持ち変えて、右手を高く掲げた。

ここまで使わなかった圧縮魔術を展開するためだ。

「ホワイト・アウト!」

一つ目の魔術を発動したことで霧の結界が周囲に広がるが、
翔子にしてみれば見慣れた魔術だろう。

だが、試合場の外にいるほぼ全ての者達にすれば初めて見る力のはずだ。

あらゆる魔力を喰らうマジック・ドレイン・フィールド。

この一手は翔子も予想していたはずだ。

霧が発動したことによって俺に接近する事はほぼ不可能になったのだが続けて第二の魔術も展開する。

「エンジェル・ウイング」

俺の背後に天使の翼が生まれた。

あらゆる魔術を高速発射させる翼だが、
上手くかわせるかどうかは翔子次第だ。

少なくとも、現時点ではほぼ100パーセントの命中率を誇っている。

美春に回避された一度だけが必中と言えない部分だが、
あの時は回避できるように仕向けていたからな。

例外と考えておいてもいいだろう。

「これが3種の力だ」

「うわぁ~。冗談抜きで本気よね…。」

冷や汗を流しながらも翔子はその頭脳を全力で回転させているようだ。

どう対処するべきか?

いくつもの状況を考慮しているのだろう。

俺と向き合う翔子は焦りを見せながらも必死に状況を見定めているのが分かる。

だが、その行動が不利になることはすでに翔子も知っているはずだ。

「黙って見ていていいのか?」

時間をかければかけるほど、
ただそれだけで翼は力を増していくことになる。

翔子にとっては最悪の状況と言ってもいいだろう。

究極の力とも言える破壊魔術アルテだけはなんとか避けたいはずだからな。

「くっ!そんなの言われなくても嫌っていうくらいわかってるわよっ!!」

考えることをやめた翔子は手を休める事なく連続攻撃に出る。

俺の攻撃を中断させるのが目的だろう。

先ほどの一撃よりも速さを増した攻撃で俺を狙い撃ってくる。

「飛燕!!」

翔子の手から放たれた光の矢が地面すれすれに飛翔する。

「突き抜けてみせるわっ!!!」

霧の結界の影響を受けながらも即座には消滅せずに俺の目前にまで接近する光の矢だったが、
後一歩のところで惜しくも光は消え去った。

「あと50センチ足りないな」

「ああ、もうっ!!だったら威力を上げるだけよ!駿撃!!」

一直線に放たれた巨大な光の矢が、
霧の結界を切り裂きながら俺を目掛けて突き進む。

ほう、霧を突き抜けるか。

即座にソウルイーターを構えて光の矢を切り落とす。

ただそれだけの攻防で翔子の魔力は減少し、
俺は魔力を吸収できた。

「弓矢の攻撃は直線的すぎて相性が悪そうだな」

「くぅっ!!あ~もう~っ!!!少しくらい手加減してくれてもいいじゃないっ!!」

自分で手加減をするなと言っておきながら無茶な注文をする翔子だが、
それでも攻撃の手を止めないだけ他の生徒よりはましだろう。

何だかんだと文句を言いながらも翔子は攻撃の手を止めようとしない。

「一度くらい吹き飛びなさい!!!!!駿撃!!駿撃!!駿撃~っ!!!!」

連続で放たれる巨大な光の矢。

それらは力を削られながらも、
かろうじて霧の中を進んでいく。

だが、俺の目前にまでたどり着いた時にはかなり小さくなってしまっている状態だ。

これでは直撃したとしても大した影響はないだろう。

「俺に届くにはまだまだ威力が足りないようだな」

弱体化した力では魔剣の力には決して勝てない。

次々と迫る光の矢をことごとく切り捨てていく。

「良いのか?このままでは魔力が尽きるぞ。俺としては魔力が充填できてありがたい状況ではあるが」

「うぅ~!!!そんなのわかってるけど、他に方法がないのよっ!!だいたい、総魔がでたらめすぎるのよっ!!普通ならとっくに吹き飛ばされてるっていうのにっ!!」

不満を口にしながらも、
翔子は懸命に攻撃をしかけてくる。

あらゆる角度から放たれる光の矢によって幾つかは俺に直撃するのだが、
弱体化した一撃の威力は低すぎて俺を倒すに至らない。

それでも攻撃が届くことで微かな希望を感じているのだろう。

翔子は必死に攻撃を続けている。

ただ。

もちろん、その希望はまやかしだ。

翔子の希望は『制限時間』によって断ち切られてしまうからな。

翼の展開から丁度『5分』が経過しただろうか。

「時間だ。覚悟はいいか?」

「ぅ、ぁ、っ!?」

終わりを告げる俺の声を聞いた瞬間に。

翔子は戦慄を感じて攻撃の手を止めてしまった。

「で、できれば、覚悟したくないんだけど…ね」

仲間達が見ている前でも弱音を吐いてしまうほど翔子の精神は追い詰められているようだ。

「あ、あれを、使う、のよね?」

問いかける声は翔子自身が悲しくなるほど震えていただろう。

恐れていた事態に直面しているからな。

怖くないわけがない。

究極の破壊魔術『アルテマ』

翔子にとっての絶望的な力が間もなく発動してしまう。

「で、でもっ。魔力はまだ余裕があるわ。今ならまだ間に合うかもっ」

直感的に自分を信じることにしたのだろう。

翔子はパルティアを解除してまでも、
残る全ての魔力を防御結界に集中させようとしていた。

「シールド!」

翔子が選んだ手段は絶対防御結界だ。

残る全ての魔力をつぎ込んで魔法の結界を張ったつもりだろう。

だが、前もって宣言していた通り魔法は不得意分野のようだ。

発動した結界ははっきりと見えるほど揺らいでしまっている。

「ほ、補助系は特に苦手なのよね…。」

自分でも言ってしまっているが相当苦手なのだろう。

不安定な結界で身を包んだ翔子の表情からは焦りしか感じられない。

それでも唯一の対抗策として翔子は防御を選んでいる。

翔子の実力では運に左右される可能性のある魔法としての結界だ。

上手くいけば耐え切れるかもしれないが、
失敗した場合はアルテマの直撃を受けてしまうだろう。

その危険性が分かっていても翔子にはこうする以外の方法が思い付かなかったようだ。

「イチかバチかよ」

翔子も認めているが、これで防げなければ敗北は確定してしまう。

「あんまり格好よくはないけど、耐えしのげたら最後の一矢を報いてみせるわ」

アルテマを耐え切れるかどうか?

そこがすでに賭けなのだが。

こぼれ落ちる汗を気にする余裕もないまま、
翔子は翼の動きをじっと見つめている。

「その一撃に期待しよう」

翔子が結界を展開したことで、
手加減する必要はなくなった。

実際に一矢報いることができるかどうかは知らないが、
その言葉を実現できるほどの実力を見せてもらいたいとは思う。

「無事に耐えきって見せろ」

翔子の底力を見届けるために究極の魔術を解放する。

「これで終わりだ。」

右手を翔子へと向けて最強の力を発動した。

「アルテマ!」

魔術名を宣言した直後。

試合場から全ての音が消え去った。

複数の魔術が炸裂する爆音によって聴覚が一時的に麻痺するほどの破壊力が試合場全域を突き抜けたからだ。

「…っ…ぁ…ぃ…!?」

自らの声すら聞けずに悲鳴を上げる翔子。

その体は宙を舞い。

身を纏う制服すらも紙切れのようにちぎれ飛んでいく。

「…ぁ…ぁ…っ!!!!!!!!」

驚愕する観客達の声すら届かない爆発の中で翔子は力の差を痛感していただろう。

コンマ何秒耐えたのか?

それすらも理解出来ないほどの一瞬で翔子は絶望という言葉を理解したはずだ。

アルテマに耐えるという選択肢など存在しないからな。

防御結界によって少しは軽減されたようだが、
破壊力の軽減は微々たるものでしかないだろう。

壁にもならずに消失した結界を突き抜けた破壊の魔術は翔子の体を吹き飛ばして意識を失わせるのに十分すぎる威力があったと思う。

「…ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

爆発の衝撃によって宙を舞う翔子の体。

その姿を目で追えたのは俺と北条と沙織の3人だけだったかもしれない。

圧倒的としか表現できない破壊力によって試合場は崩壊してしまい、
すでに原形も留めていない。

元試合場と呼ぶべき場所は幾つもの大穴と瓦礫で荒れ果ててしまっている。

そして衝撃を受けて天井近くにまで吹き飛んだ翔子の体は重力に引かれて落下して
崩壊した試合場を無抵抗に転がっていく。

すでに意識が残っているかどうかさえ疑問に思える状況だ。

試合場を転がった翔子を追ってゆっくりと歩み寄ってみる。

「まだ動けるか?」

倒れている翔子に問いかけてみると。

「さ、最悪の気分、だけどね…っ。」

かろうじて意識を維持していたようで、
翔子は立ち上がろうとしていた。

だが、どう見ても戦えるようには思えない。

全身傷だらけの翔子は間違いなく瀕死の重傷だ。

「まだ続けるつもりか?敗北を認めるなら今のうちだ」

諦めさせるつもりでソウルイーターを翔子に向けてみる。

「これ以上は命に関わるぞ?」

試合を棄権させるつもりで話しかけたのだが、
それでも翔子は懸命に立ち上がろうとしている。

「…そんなの、わかってるわよっ。」

全ての魔力を費やしたシールドも破れてしまい、
パルティアによる攻撃すら届かない状況だ。

もはや翔子に打つ手はないだろう。

だがそれでも。

このまま負けを認める事だけはしたくないようだ。

負けるなら負けるで戦って負けるべきだと考えているのだろう。

潔く負けを認めるというのは傷つく事を恐れて逃げているように思えるのかもしれない。

少なくともこの試合において降参してはいけないとでも考えているのだろう。

「棄権はしないわ!もしもここで逃げ出してしまったら、総魔に倒されると分かっていながら、各会場で見捨ててきた生徒達に申し訳が立たないのよ!!」

…なるほどな。

逃げたくても逃げられないということか。

その選択肢だけは選べない。

それが翔子の本心なのだろう。

今まで多くの生徒を見捨ててきた事実があるために。

各会場において俺に負けると分かっていながらも対戦相手達を見捨ててきたという事実があるために。

逃げることは選べないようだ。

その気持ちは理解できなくもない。

見捨ててきた生徒達の中には美春もいたからな。

そしてその美春も俺達の試合を見に来ている。

この状況で逃げられるわけがないと思うのは理解できる話だ。

「罪滅しのつもりか?」

「そんな格好いいことを言うつもりはないわ。だけど私にも意地があるのっ。だから、絶対に棄権はしないわ…っ!」

互いに全力を尽くすと決めたからか。

ここで敗北を認めるわけには行かないようだ。

勝てないと分かっていても諦めてはいけないと考えているだろう。

「諦めない。私は、絶対に逃げない…っ!!」

最後まで意地を張り通す事を決めている翔子の気持ちを察したことで、
話し合う事を止めてソウルイーターを構えることにした。

「いい覚悟だ。それでこそ、俺が認めた者だ」

翔子の想いを認める。

その言葉だけで翔子は満足したように思えた。

「そう思ってもらえるのなら、後悔はないわ」

すでに微笑む気力さえないのだろう。

翔子は残り僅かな意地だけで立ち上がって俺と向き合っている。

震える足で必死に立つ翔子。

途切れそうになる意識を懸命に維持する翔子の姿は決して格好良くはない。

だが、その姿が無様だとは思わない。

翔子は全力で戦ったからだ。

そして本気で俺と向き合ってくれた。

その意志の強さは尊敬しようと思う。

最後まで絶対に逃げないと誓い。

翔子はその想いを実証して見せたのだからな。

その想いと翔子の実力は認めるべきだ。

「翔子、お前は強かった。その誇り高く、気高い意志の強さを認めよう」

「ふ…ふふっ。」

翔子は満足だったようだな。

弱々しく俺を見上げる翔子はまっすぐに俺を見つめながら全てを受け入れた。

「ありがとう。」

小さく囁いた言葉を聞き漏らすことはなかった。

だからこそ、最後まで手加減はしないと思えたのかもしれない。

「眠れ…。」

静かに振り下ろす魔剣の刃。

その刃が体を突き抜ける最後の瞬間まで翔子は目を逸らす事なく俺と向き合っていた。

「…また、ね…。」

再開を願う翔子の意識は魔剣に切り裂かれて消え去っていく。

だが、残された想いまでが消えるわけではない。

翔子の言葉は確かに俺の耳に届いていた。

「ああ、また会える」

最後にかけた言葉が翔子に届いたかどうかはわからない。

だが翔子は静かに微笑みながら…崩れ落ちた。

「そこまでだっ!!」

真哉が即座に試合を止める。

そして俺の勝利を宣言した。

「勝者、天城総魔!!」

試合終了を宣言したことで試合場を包む結界が消失した。

その瞬間に慌てて翔子に駆け寄る北条と沙織。

完全に意識を失っている翔子の体を支えながら二人は足早に会場を出て行った。

………。

後に残されたのは呆然とする観客達と俺だけだ。

色々と考えることはあるかもしれないが間違いなく試合は終了したといえる。

これでまた一つ、頂点に近づいた。

その実感を噛み締めながらひとまずこの場から去ることにした。


生徒番号4番、獲得。
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