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THE WORLD 作者:SEASONS

4月17日

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全滅の危機

《サイド:鞍馬宗久》

「くそっ!!」

魔力の波動が途絶えただと!?

その事実が示す答えは一つしかない。

岸本が倒れてしまったということだ。

あまり魔力の波動の感知は得意というわけではないが、
幹部達の波動だけは認識できるように常日頃から訓練しているからな。

残念ながら勘違いということはないだろう。

近藤隊長や3人の副隊長はまだ生存しているようだが、
岸本が倒れたとなれば共に行動していた木村副隊長と雨宮副隊長にも危機が迫っているはずだ。

「西門の攻略は失敗したか…」

強行突破を試みていたこちらの部隊は
アストリア軍の猛攻を押しのけて北門の前までたどり着いている。

そしてすでに砦の内部にまで攻め込みつつあったのだが、
進軍の最中に岸本の魔力の波動が途絶えたのが感じられてしまったのだ。

「岸本の部隊が壊滅したとなれば…」

もしもそうだとすれば、
残ったアストリア軍が各方面に援軍としてやってくる可能性があるということだ。

「北門の制圧を急ぐ必要があるな」

時間を浪費すれば、今以上に戦況が苦しくなるだろう。

その前に戦果を上げなければならない。

「あと少しだ!全軍前進!!」

「「「「「うおおおおおおおおおっ!!!!!!!!!!」」」」」

指示を出したことによって生き残っている仲間達が一斉に北門へとなだれ込んだ。

そして凄まじい勢いで北門を突破して砦の内部へと攻め込んでいく。

「力を出し惜しみするな!!全力で敵を狙い撃てーーっ!!!!」

指示を出すたびに放たれる攻撃魔術がアストリア軍を飲み込んでいった。

数百…いや、数千か。

無数の魔術を放ち続ける共和国軍の魔術師達の勢いによって、
接近すらままならないアストリア軍は成す術もないまま次々と倒れる。

「このまま押し切れるか…?」

戦況を眺める不安をよそに、共和国軍の優勢へと傾く攻防戦。

こちらの部隊の被害はおそらく千人には及ばないだろう。

だがアストリア軍の被害は甚大で、
2万人の大部隊はすでに半分以下にまで減少しているように思える。

「このまま何とかなるか?」

兵数はほぼ互角だ。

とは言え。

一般人を多く抱えるアストリア軍と攻撃に特化した魔術師を抱える共和国軍との実力差は考えるまでもない。

頭数が同じなら戦力は共和国が優位のはず。

「上手く押し切れればいいが…」

あらゆる状況を考慮して思考を巡らせる。

「アストリア軍はどう動く?」

このまま無謀な突撃を続けるのか?

それとも撤退するのか?

あるいは増援部隊を出してくるのか?

考えられる複数の可能性の中で…

「…なっ!?」

最も恐れていた展開が起きようとしていた。

混乱するアストリア軍の中から、
一人の男が歩み出てきたからだ。

「まさかっ!?」

その男の顔を見た瞬間に全滅の危機を感じてしまうほどだった。

「ここで国守鏡吾くにもりきょうごだとっ!?」

苦々しく感じる間にも、国守は堂々した態度で対峙してくる。

「力付くでの強行突破は俺の得意分野だからな」

ちっ!

まさか、こんな最前線に出てくるとは、な。

「なるほどな…っ。妙に兵士達の士気が高いと思っていたが、お前が背後で指揮をとっていたのか」

「ああ、そうだ」

立ちはだかる国守は重量級の鋼の槍を軽々と振り回している。

風を切り裂く轟音はまさしく戦士の象徴だ。

魔術では生み出せない本物の殺意が戦場を包み込んでいた。

「俺がここを守る限り!ここから先へは一歩も通さん!!」

…凄まじい覇気だな。

力強く宣言する国守の言葉は必ず真実となるだろう。

史上最強。

一騎当千。

無敗の英雄。

その武勇は周辺諸国に知られるほどの猛将だ。

槍を持たせれば敵う者なしと言われるほどの実力ゆえに、
国の守り神として『国守』の名を国王から直々に承ったアストリア王国最強の戦士。

やつの手によって命を奪われた魔術師の数は優に数千に及ぶ。

それほどの男の登場によって、
指揮が低下しつつあったアストリア軍の兵士達に気力が戻ってしまい。

反対に共和国軍の士気は下がりつつあった。

「あの男だけは厄介だな」

下手に部隊を近づければ、成す術もなく蹂躙じゅうりんされてしまうだろう。

その危険性を避けるためにはこちらも切り札をきるしかない。

「ワシが相手をしよう」

自ら率先して国守に歩みを進めていく。

その行動によって、国守は微かに笑みを浮かべていた。

「老人だろうとこの砦に攻め込んだ以上は手加減などしない!!」

ふはははっ!

老人か。

「ワシを甘く見るなよ、小僧」

力には力を。

そして戦士には戦士を。

「ようく見ておれ」

両手に魔力を集めて、三又の刃を持つ槍を生み出す。

長さは4メートル強。

身長の倍以上の長さを持つ槍を軽々と振り回してから国守に向けて槍を構える。

ワシと国守。

魔力の槍と鋼の槍。

それらを眺めていた国守が真剣な表情を見せた。

「槍で俺に勝てると思うなよ?」

ふっ。

大した自信だな。

さすがは不敗の英雄だ。

だが、な。

確かに『ただの槍』では勝てぬかもしれんが、こちらは魔術師だ。

「ただの槍ではないことを忘れるな」

一歩も退かずに宣言する。

その間にも国守はじわじわと距離を詰めてくる。

ルーンとは違って重量感のある鋼の槍を軽々と扱う国守の腕力は計り知れない。

まともにぶつかりあえば重量の差で押し負けてしまうだろう。

あくまでも、まともにぶつかりあえば…だがな。

アストリアの英雄と共和国の総司令官。

互いに見つめ合う二人の間に緊迫した空気が流れていく。

「さあ、こい小僧。ワシが直々に稽古をつけてやろう」

「出来るものならなっ!」

徐々に距離を縮める二人の視線が絡み合い。

先に動きだしたのは国守だった。

「全て蹴散らすのみだ!!」

一気に踏み込んだ国守の槍が襲い掛かってくる。

だが。

超重量級の武器であるために、
槍の動きはしっかりと目で追うことができた。

「片腹痛いわ!」

槍を交差させて国守の一撃を防いでみせる。

圧倒的な重量から生まれる破壊力を強引に受け止めてみせたのだ。

「言ったはずだぞ小僧。ワシを甘く見るなとな」

「………。」

改めて宣言したことによって、
ようやく互いの実力が把握できたのだろう。

国守は静かに笑みを浮かべていた。

「…面白い。全力でお前を潰してみせる!!」

一歩後方に下がってから、国守は全力で槍を振り回し始めた。

「お前を倒し!残る残党共も処分する!!」

遠心力を乗せた一撃で、一気に襲い掛かってくるつもりのようだ。

…うむ。

良い一撃だな。

これが戦士同士の戦いであれば、
国守の攻撃を防げる者など一人もいないだろう。

だがな。

ワシは戦士であって魔術師である。

単純な力比べなど、最初からするつもりはない。

「倒れるのはお前達の方だ!」

ぶつかり合う二本の槍。

激しく鳴り響く金属音が周囲に響き渡り。

同時に生まれた衝撃によって突風が吹き抜けていく。

『ぶわっ…』と円形に広がる衝撃波。

その衝撃そのものが、互いの実力を示しているといえるだろう。

北門付近で起こる両軍の乱戦の中で。

ワシと国定の『一騎打ち』が始まった。
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