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THE WORLD 作者:SEASONS

4月17日

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挟撃

《サイド:岸本克也きしもとかつや

…くっ!

やはり一筋縄ではいかないか。

東門で米倉代表が指揮を執り、
北門で鞍馬総司令官が激戦を繰り広げる中で、
西門を攻める私の部隊もアストリア軍を制することができずに苦戦していた。

およそ2万のアストリア軍に対してこちらは1万。

単純な戦力では半分なのだが、
必死に戦い続ける共和国軍でも互角の戦いを維持するのが精一杯になってしまっている。

「このままではまずいな…」

戦況は互角でも、流れが互角とは言い難いからだ。

すでに私も劣勢には気付いている。

アストリア軍はこちらの戦力を削り取ることを優先として長期戦に持ち込もうとしているようだからな。

もしもアストリア側の目論見通りに進んでしまったなら、
残り数時間でこちらの魔力は底をついてしまうだろう。

そうなれば攻撃の手段は失われてしまうことになる。

互角の現状から一気に全滅の可能性が出てくるということだ。

「長期戦は不利だ。何とか短期決戦で挑まなければ…」

呟いた瞬間に、最悪の知らせが届いた。

「司令官!!」

慌てて駆け寄ってきたのは国境警備隊の隊員だな。

「どうした?」

伝令担当の兵士に視線を向けて問い掛ける。

「何かあったのか?」

「それが、例の調査に失敗しました!!」

なにっ!?

「失敗とはどういうことだ!?」

「水路はアストリア軍によって押さえられているようです!!!」

なっ!?

まさか…!!!

兵士の言葉を聞いたことで私の表情は引きつってしまった。

可能性としては考慮していたが、
もっとも恐れていた事態が現実として起きてしまったからだ。

「水路で『アストリア軍』を確認したのだな…?」

「はい!確認しました!」

これはまずい…っ。

もしもその報告が事実だとすれば、
アストリア軍の別働隊がいるということになる。

「敵の規模はっ!?」

慌てて問いかける私の耳に新たな報告が届く。

別の伝令部隊が帰還したからだ。

「報告します!!アストリア軍が水路を抜けて共和国軍の背後へと回り込んでいるようです!!その数はおよそ1万!!」

ちぃっ!

やはりかっ!

大慌てで報告してくれた兵士の努力はありがたいと思うが、
現状を確認した瞬間に明らかな絶望を感じとってしまったのも事実だ。

前方のアストリア軍でさえ互角の戦況で、
後方から別働隊が迫って来ているのだからな。

このまま何もしなければ背後から攻撃を受けて大きな痛手を受けることになるだろう。

「砦からの敵部隊だけでも苦戦しているというのに。この上、背後までとられては…」

勝ち目などあるはずもない。

敗走の可能性が一気に高まってしまったということだ。

その事実に気づいたことで焦ってしまう私に更なる報告が届こうとしていた。

「城門より敵軍進攻っ!!その数およそ2万!!」

この状況で進軍だと!?

「やはり全軍を動かして俺達を挟み込むつもりかっ!!」

前方に2万の部隊。

そして後方に1万の部隊。

合計3万だ。

すでに戦力を減らしつつある共和国軍に出来る作戦は限られている。

もはやまともな戦闘は不可能だ。

「まずは後方の部隊を叩くぞ!!」

城門の突破は諦めるしかない。

現時点で選べる選択肢は二つに一つ。

一人でも多くの戦力を残すためにこの場から撤退するか、
一人での多くの戦力を削り取るために総力戦を仕掛けるか、だ。

前後を敵軍に挟まれた状況で選ぶべき道はどちらか?

…その答えは悩むまでもないだろう。

この砦での戦いはアストリア王国との戦争における開幕戦でしかない。

今後の戦略を考えれば一人でも多くの戦力を残してアストリアの正規軍との戦いに備えるべきだ。

そして王都の制圧を実現することが共和国の勝利条件となる。

「こうなったらもう他に道はないか…。」

自らが率いる部隊だけを残して、
全ての部隊に指示を出すしかない。

「水路から迫るアストリア軍を殲滅しろ!!」

「はいっ!お任せ下さい!」

私の指示に従って速やかに行動してくれたのは近藤隊長の副官として付き従う雨宮奈津あまみやなつ副隊長だ。

本来なら近藤隊長と共に南門の部隊に参加させるつもりでいたのだが、
鞍馬総司令官の指示によって私の護衛としてもう一人の副隊長と共に私の部隊に参加している。

「必ず、後方の敵部隊を殲滅してみせます」

「ああ、頼む」

雨宮副隊長はどちらかと言えば軍師よりの才能を持っているからな。

必要な部隊さえ与えれば必ず目的を達成してくれるだろう。

雨宮副隊長に大半の兵を与えて、
西門の戦場から撤退させることにした。

「前方のアストリア軍は私が抑える。その間に戦場を離脱してくれ」

「はい!了解いたしました!」

部隊を率いて撤退を開始する雨宮副隊長の迅速な行動によって、
ほぼ全ての部隊が水路へと向かったことになる。

その結果として私が預かっていた部隊は一気に一割にまで減少したが、
これで多くの戦力を守ることができるはずだ。

残る問題はこの場にいるアストリア軍を一秒でも長くこの場に足止めすることになる。

一人でも多くの兵士達を倒すことができれば共和国軍の安全を高めることができるだろう。

「ここからが真の戦いだ!!」」

私の周りにはまだ千名の魔術師が残っている。

この数で2万のアストリア軍を殲滅するのは難しいが、
上手く足止めさえできれば別働隊を率いている雨宮副隊長が帰還してくれる可能性はある。

それまで耐え切れればいいのだ。

最小限の被害で耐え切れれば今度はこちらが反撃に出る番となるからな。

「仲間が戻って来るまで防戦を行う!!誰一人として力尽きることのないように全力で守りあえ!!」

生きてさえいれば何とかなるはずだ。

回復魔術による手当さえ受けられれば死は回避できるからな。

「円陣を組め!!敵に背中を見せるな!!」

全方位に対して対応できるように千名の魔術師を円形に配置する。

そして出来る限り密集させることで、
それぞれに協力しあえる状況を作り上げる。

「外周の部隊は敵の接近を阻め!内周の部隊は敵の射撃攻撃を撃ち落とせ!!」

とにかく時間稼ぎを最優先として敵の攻撃を防ぐことを徹底させる。

魔力に余裕のない者には牽制を任せて、
魔力に余裕のある者には防御結界を展開させる。

そうして生存率を上げる作戦を実行してから自ら率先して歩み出る。

「アストリア軍!!ここから先は一歩も通さんっ!!!」

全力で叫び。

単独で先行する私に2万の兵士達が襲い掛かってきた。

「「「「「うおおおおおおおおおおおっ!!!」」」」」

まさしく怒涛どとうの勢いだ。

この流れを止めるのは無理かもしれないが、
何もせずに諦めるつもりは一切ない!

「ここは死守してみせる!!!」

魔術を発動して防衛を試みる。

だが圧倒的な数の差によって、
容易くアストリア軍に飲み込まれてしまうことになる。

だが、それでも逃げようとは思わなかった。

「通さんと言ったはずだっ!!」

ここを守り抜けなければ別働隊にまで危機が及ぶのだ。

それだけは何としてでも避けなければならない。

一人でも多くの戦力を残存させることが私の役目だからな。

「この地は私達が守るっ!!」

全力で叫んだ私の周囲を…不意に数百の魔術が降り注いだ。

「うわぁぁぁーーー!!!」

「きゃぁぁぁぁーーーー!!!」

「ぐあああああああっ!!!!」

攻撃を受けて次々と倒れ込むアストリア軍。

シールドで防御しきれなかった物理的な爆風によって私自身も被害を受けてしまうが、
今は回復魔術を発動させながら更に前進してみせる。

「ここは通さんっ!!!」

意地でも道を塞ぎ続ける。

そんな私の気迫を怖れたのか、
アストリア軍は足を止めてくれていた。

どう攻めるかを考えているのだろうか?

私の背後には千名の魔術師がいてくれているからな。

そうそう簡単には突破できないはずだ。

2万対1千の圧倒的不利な状況を自らの体を犠牲にして時間を稼いでみせる。

これが今の私にできるたった一つの抵抗だ。

「俺と共に朽ちる覚悟のある者はついて来い!!」

「「「「「うおおおおおおっ!!!!!」」」」」

必死に叫んだ私に全ての魔術師が合流してくれた。

死の可能性の高い絶望的な戦い。

それでも多くの仲間達が付き従ってくれたのだ。

「死を覚悟した魔術師の底力を見せる時だ!アストリアに遅れをとるな!!仲間の帰還までここを守り抜く!!行くぞっ!!全軍前進!!!」

「「「「「おおおおおおおおおおお!!!!!!!!」」」」」

雄叫びを上げながら突き進む部隊。

その勢いに負けることなく、アストリア軍も動き出す。

「魔術師を殲滅せんめつしろーーー!!」

指揮官の指示を受けて走り出すアストリア軍によって、
私達の命をかけた戦いが始まってしまった。
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