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THE WORLD 作者:SEASONS

4月17日

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勝利を急ぐ理由

《サイド:鞍馬宗久》

むぅ…。

状況はかんばしくないな。

つい先ほど東門から爆音が響いてきたが、他の戦場を気にしている余裕などない。

今は目の前の戦いに集中する必要があるからだ。

現在、北門を任されているこちらの部隊もアストリア軍の決死の猛攻を受けて身動きがとれずにいる。

まともに戦闘訓練など受けていないであろう一般人を相手に苦戦しているのだ。

「恐れるべき戦力だと認めるしかないだろうな」

言葉にすることで気持ちを新たにすることにした。

そして打開策を考えてみる。

死を恐れずに突き進むアストリア軍は間違いなく脅威だ。

互いの実力差を埋めるために一人一殺を狙って襲いかかってくるわけだからな。

いくら魔術師が戦闘に長けているとは言え、
詠唱の合間を狙われてしまっては必死に逃げ回るしかない。

軍に所属する者達の中でもルーンを扱える者はホンの一部だけのために。

無詠唱による攻撃を行える魔術師などほとんどいない。

そのせいで魔術を発動した直後が魔術師にとって最も危険な瞬間となってしまうのだ。

例え圧縮魔術が使えるとしても、
上手く対応できるのは一度か二度が限界だろう。

ほとんどの魔術師が詠唱の合間は無防備になってしまう。

その間に迫り来るアストリア軍によって共和国軍も相当な被害を出してしまっているのが現状だ。

それでも生きてさえいれば回復魔術による治療は行えるのだが、
治療に魔力を消費すればそれだけ攻撃に回せる魔力が減少してしまうことになる。

それに何より回復魔術にも詠唱が必要なのだ。

攻撃の手が減少した状態で無防備な時間を増やしてしまえば、
どうしても共和国軍の攻撃は断続的になってしまう。

その結果として寄せ集めのアストリア軍と互角という状況が生まれてしまっているのだ。

「さすがにこの流れではどんな策も無意味か…。」

駆け引きが通用するような状況ならまだいい。

だが現状は単なる命の削り合いだ。

アストリア軍は部隊が全滅するまで特攻を繰り返すつもりだろう。

これが野戦であれば罠を仕掛けるなりなんなり方法はあると思うが、これは攻城戦だ。

地の利は完全にアストリア側にある。

「このまま互いの戦力を削り合うしかないのか…」

戦況を眺めながら考え続けているのだが、
決め手と言えるような打開策が思い浮かばない。

『遠隔からの魔術攻撃』が出来れば最も安全で確実な方法なのだが、
向こうの指揮官もそれなりに優秀のようだな。

魔術による範囲攻撃を恐れて必要以上に軍を進めようとはしてこないからだ。

砦という城壁を盾にして防戦を行う作戦をとっているのは間違いない。

「どうやら対魔術師戦を考慮した作戦を考えられる者が指揮官として行動しているようだな」

それがどういった人物なのかまではまだ分からないものの。

特攻部隊だけを小出しにして進軍させながら
前線部隊の護衛として城壁からの弓術部隊が援護射撃を行っているのだ。

最小限の部隊を動かして共和国軍の兵力を削る作戦は
絶対数が少ない共和国軍にとって頭の痛くなる問題でしかない。

「敵をおびき出せれば大規模魔術で一網打尽に出来るのだが…」

そうは思っても敵はなかなか動き出さないのだ。

向こうも一気に戦況が傾くような無謀な行動は起こさないだろう。

…だとすれば。

「いっそのこと門まで突撃するべきか?」

防壁の門さえ突破出来れば流れは変わるはずだ。

砦の内部への潜入さえ出来れば戦局は大きく変わることになる。

まず間違いなく、
アストリア軍の士気を下げて、
こちらの士気を上げることが出来るだろう。

「そろそろあとのことも考えなければならないからな」

魔術師にとって長期戦は不利でしかない。

だからこそ、長時間の戦闘は考慮していなかったのだ。

食糧の備蓄も無視して全てを解放して休む場所さえ確保していない。

一度戦い始めてしまえばもはや勝利を勝ち取るまで止まることはできないからな。

食糧は砦に保管されている物資を奪い取ればいい。

まずは砦の制圧が優先だ。

魔力を失えば敗北が確定するのだからな。

どう考えても魔力が残っている間にアストリア軍を一掃しなくてはならない。

それらが早急に砦を落として勝利を急ぐ理由の一つとなっている。

「突撃するか…?」

勝負を急ぐために全軍に指示を出すしかないだろう。

「先行部隊はアストリア軍を押し戻せ!!右翼と左翼はそれぞれ敵軍の狙撃部隊を迎撃しろ!!本陣も進軍する!!一気に城門へ攻め込むぞっ!!!」

「「「「「おおおおおおお!!!!!!」」」」」

雄叫びを上げながら動き出す共和国軍。

1万の共和国軍の行軍を確認してアストリア軍も本格的に動き始める。

「城門を死守しろ!!!魔術師共を追い返せっ!!!」

指揮官の指示を受けて、全ての兵士達が戦闘体制に入ったようだ。

「バケモノ共を蹴散らすんだっ!!!」

「一人でも多く殺せっ!!!」

「死ぬ気で城門を守れー!!!」

次々と叫び声を上げながら決死の特攻を行うアストリア軍。

その猛攻を受けながらも共和国軍は勢いに負けることなく全力で軍を進めていく。

「作戦は一刻を争う!!!全軍、北門の突破を目指せっ!!!!」

戦場に轟く指示によって2万を越えるアストリア軍と1万の共和国軍が本格的に激突し始めた。
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