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THE WORLD 作者:SEASONS

4月16日

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魔導士

天城さんのあとを追う私達。

全員が防壁にたどり着いたことで足元に手を当てた天城さんは、
私の魔術を思い返しながら見たばかりの魔術を発動させました。

「ロスト・グラウンド」

手を当てた周囲に『ボコッ…』と大きな穴が開きます。

直径にして1メートルに届かない程度の穴です。

深さは2メートルほどあるでしょうか?

直下ではなくて斜めに掘り進んでいるので正確な距離はわかりにくいのですが、
こうでもしないと穴に飛び込むだけで落下による怪我をしてしまうことになります。

私や三倉さんならともかく。

栗原さんと琴平さんは運動は苦手そうなので、その辺りにも配慮したのでしょう。

出来たばかりの穴の中へと飛び込む天城さんですが、
まだまだ防壁の基礎が地下に伸びていることで再び地下に向けて魔術を発動させています。

その結果としてさらに斜め下へと伸びる穴。

4回ほど穴を掘ったことで直線距離はおよそ8メートルというところでしょうか?

さすがにそこまで掘り進むと、防壁の基礎はありません。

「どうするつもりですか?」

「開いた穴は塞げば良い」

天城さんは簡潔に答えています。

そして迷うことなく今度は王都内に向けて掘り進めました。

「ロスト・グラウンド」

城壁の地中の土が消滅して奥深くに穴が広がっていきます。

内部の状況は地上からは不明ですが、
天城さんが立って進める程度の大きさはあるようですね。

そこまでの準備が整ったことで私達も侵入することにしました。

滑るように縦穴を下り。

底に着いてから天城さんを追います。

地下の奥行きは10メートルに及ぶ大穴です。

高さも2メートルほどのあるので、普通に立って進めそうです。

5人で順番に横穴を進み。

防壁を過ぎたと思われるあたりで、
天城さんは頭上に手を伸ばしました。

「ロスト・グラウンド」

今回は細く長い穴ですね。

腕が一本通るかどうかという大きさなのですが、
これはおそらく偵察用でしょう。

地上の様子を窺う為に。

一気に掘り進まずに微かに聞こえて来る音と差し込む月明かりを頼りに、
地上に出られるかどうかを確認しているようです。

ここまでの行動は私にも理解できます。

似たようなことを一度経験しているからです。

…と言っても。

天城さんのように魔術の効果を変えるなどということは普通はできません。

誰が発動しても同じ効果になるというのが魔術の大前提ですので、
発動に失敗して小さな穴が出来てしまうということはあっても
意図的に効果を変えることはできません。

なので、前回の時は地表ギリギリまで掘り進めてから、
人力で偵察用の穴を貫通させて外部の様子を確認した覚えがあります。

あの時の苦労を思えば、
天城さんの存在は実にありがたいですね。

「天城さんは魔導士だったのですね」

「ああ、そうなるな」

やはりそうでしたか。

魔術師ではなくて、魔法使いのようです。

これまでにも何度か魔法使いの存在は噂で聞くことがあったのですが。

実際にこの目で見たのは初めてになります。

「やはり魔法というものは魔術以上に便利なようですね。」

「…いや、必要な大きさの穴に応じた魔術を身につければ済む話だからな。この程度なら魔術も魔法も大差はないはずだ」

それはそうかもしれませんが、
その手間を省略出来るだけでも十分な差はあるのではないでしょうか?

単純に炎を生み出すだけでも数十種類の魔術が存在します。

入門⇒初級⇒中級⇒上級⇒最上級。
ホット⇒スパーク⇒ファイアー⇒フレア⇒ダンシング・フレア。

…などといった等級もそうですが。

ソード・ボール・バースト・ストーム等など。

形を変えるだけでもそれに応じた魔術を覚える必要があります。

各属性まで考慮すれば、
それこそ数百、数千の魔術を覚えなければいけないのです。

そこまで極められる魔術師は一体どれほどいるでしょうか?

数百万の魔術師の中でも百人いればいいほうでしょう。

その百人にしても魔法は扱えないのです。

今回使用している魔術は魔術師であれば誰でも使えるような簡単なものなのですが、
それでも魔術を自由自在に操れるというのは実に素晴らしい技能だと思います。

魔術師の中でもごく一部の才能のある人物にしかたどり着けない極地なので、
素直に羨ましいと思ってしまいます。

私が知る限り共和国国内に魔法の使い手は存在しません。

過去にはいたようですが、現在は一人もいないはずです。

あ…いえ。

この表現は違いますね。

一人も確認されていない、というべきでしょうか。

噂だけであれば可能性は囁かれていますので、
決していないとは言い切れないでしょう。

あくまでも私は知らないというのが正しいかもしれませんね。

「それはそうと、外には出られそうなのですか?」

「ああ、問題ないはずだ」

心配はないようですね。

偵察用の穴からは月明かりが差し込んでいますので、
この時点で外に出られることは間違いないでしょう。

問題は周囲に誰もいないかと言う部分なのですが、
耳を済ませる私達に物音は何一つとして聞こえて来ません。

「周囲に人の気配はなさそうですね」

「ああ、そうだな。一気に進むか」

今度は脱出用の穴を開けようとする天城さんでしたが、
その行動を遮るかのように後方にいる栗原さんが声を掛けてきました。

「巡回の兵が近付いています!」

最後尾にいた栗原さんが巡回兵の接近に気づいてくれたようです。

「あ~っ!もうっ!」

栗原さんの報告によって三倉さんが焦り出しています。

「どうしてこんな時にくるのよ?」

言いたい気持ちはわかりますが、
文句を言ってもどうしようもありません。

「どうしますか!?」

私も問い掛けてみたのですが、
天城さんは冷静に魔術を展開していました。

「突入するぞ」

再び魔術を発動させています。

「ロスト・グラウンド」

一瞬で開かれる地上への出口。

警戒しながら外に出る天城さんに続いて、
私、三倉さん、琴平さん、栗原さんの順番に王都の内部へと忍び込みました。
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