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THE WORLD 作者:SEASONS

4月16日

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基本的な魔術

《サイド:朱鷺田秀明》

さて。

そろそろ共和国軍も動き出す頃でしょうか?

事前の打ち合わせでは夜襲を仕掛けて砦に攻め込む手はずになっているのですが、
砦から離れてしまった私達には共和国軍の現状がわかりません。

何か連絡の手段があればいいのですが。

残念ながら、すでにアストリア王都に接近している私達には連絡が取れるような味方もいません。

内部に入ってしまえれば共和国軍の諜報員と出会える可能性はあるのかもしれませんが、
今すぐに合流というわけにはいかないでしょう。

そもそもどうすれば内部に侵入できるのかを考えているところなのです。

巨大な防壁に囲まれた王都はまさしく要塞ですし、
国境にある即席の砦とはわけが違います。

八角形の防壁に囲われた王都には各方面に一つずつ計8箇所の門があるのですが、
そのどれにしても厳重な警備が行われていて、
警備兵達の目をごまかして内部に入り込むのは難しそうでした。

…というよりも。

門からの侵入は不可能でしょう。

一通り見た限り、
門の出入りができるのは商人だけのようです。

何らかの通行証がないことには門を通り抜けることさえ難しいように思えます。

だからといって仮に商人から通行証を奪い取ったとしても
交易品も何もない私達が通り抜けるのは不自然でしかありません。

そもそも他にも何らかの確認方法があったとしたら対処のしようがないのです。

門番達に不信感を感じさせずに通り抜けるのは至難の業としか言えません。

そのため。

王都に接近した私達は夕方からずっと王都の外周を観察して、
少し離れた場所から様子を窺っていました。

「まもなく日付が変わる頃だとは思いますが、問題はどこから侵入するかですよね」

栗原さんも具体案が出せないようですね。

「強行突破は後々面倒だから避けたいところよね~」

「そうですよね。」

三倉さんの言葉に対して琴平さんが頷いています。

「誰にも気付かれずに忍び込めれば良いんですけど…」

確かに。

それが出来れば一番良いのですが、
そのような都合のいい方法は存在しません。

「すでに確認済みですが各門には大勢の見張りがいます。誰にも気付かれずに、というのは難しいでしょう」

即刻、否定しておくことにしました。

それこそ透明人間でもない限り、
人目を避けるのは不可能です。

もちろんそのような都合のいい魔術は存在しませんし、
カリーナの魔女が得意とする幻術を駆使したとしても絶対とは言い切れないでしょう。

時間を掛けて王都を観察した現状。

8つある各門には30名を越える門番が周囲を警戒していました。

共和国軍に対する厳重な警備が行われているのを確認しているのです。

そうそう簡単には通れません。

「門からが無理なら、魔術で壁に穴を開けるのはどうでしょうか?」

「それこそ強行突破になるな。」

問い掛ける栗原さんの質問には、天城さんが答えました。

「厚みのある防壁を破壊するためにはそれ相応の魔術が必要になる。攻撃時の破壊音を聞き付けられれば騒ぎになるのは避けられないだろう」

ええ、そうですね。

私も同じ意見です。

防壁の破壊は得策ではありません。

ですが破壊対象が防壁でなければ音に関しては別の方法があります。

「あまり恰好良い作戦ではありませんが、潜入に関して一つだけ有効な魔術があります」

私は地面にしゃがみこんでから足元に手を当てました。

そして見本として魔術を発動させてみます。

「ロスト・グラウンド」

地面に向けて魔術を発動させた瞬間に。

足元に小さな穴が空きました。

大きさは大人の男性が隠れられるほどです。

「これはただ穴を掘るだけの基本的な魔術ですが、以前王都への侵入を試みる際にもこの魔術で地面を掘り進んで内部に侵入した経験があります」

5年前の経験です。

今となっては苦い思い出でもありますが、
侵入するだけならこの方法で可能なのは実証済みです。

「地面を通り抜けて進めば防壁を越えられるでしょう」

私の説明を聞いたことで栗原さんと琴平さんは笑顔を見せてくれました。

「それなら安全に防壁を越えられますね!」

「でもそれって開けた穴は空きっぱなしでしょ?」

喜ぶ栗原さんですが、
三倉さんは疑問を感じているようですね。

「その穴を発見されたら、結局、侵入がばれるんじゃない?」

…ええ。

そこが問題となります。

その事実を否定できないことで、頷くしかありませんでした。

「そうです。前回もそこをきっかけに潜入がバレてしまい、撤退を余儀なくされたのです」

なので。

侵入は出来ても危険性は高まります。

そのことがわかっていることで言葉を濁してしまったですが、
これまで話を聞いていた天城さんは微笑みを浮かべているようでした。

「いや、問題ない。さすがにここからでは距離を計測するのが難しいが、接近してから短時間で済ませれば防壁を越えられるだろう」

何かを確信しているようですね。

天城さんは迷うことなく立ち上がりました。

「その作戦で行く」

宣言してから動き出す天城さんは、
巡回の兵士達がいないことを確認しながら足早に防壁へと接近していきました。
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