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THE WORLD 作者:SEASONS

4月16日

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争奪戦

《サイド:美袋翔子》

はあ…。

ったく、もう。

面倒くさいわね~。

育ち盛りにしても異常でしょ?

胃袋に穴があいてるとしか思えないんだけど。

それ以前にあれだけ食べてて何で太らないのかが一番の疑問だわ。

私なら食べたら食べた分だけ体型に反映されるのに…。

羨ましいっていうか、むしろもう殺意さえ感じるわよね?

…なんて。

考えてる間に配給所へとたどり着いたわ。

もうすでに嫌そうな雰囲気で見られてるけど。

ここで引くくらいなら最初から来ないのよ。

「もっと欲しいんですけど!」

強気な態度で言ってみると、沙織達の時と同じ兵士が応対してくれたわ。

「えっと…。先程、持って行かれたばかりですよね?」

「ええ、そうよ!でも、まだ足りないの。育ち盛りの『食欲馬鹿』が2人もいるから、まだまだ全然足りないわ」

「いやいや、さすがに食欲と言える量ではないと思うんですが?」

「疑うなら自分で確認すれば?」

ぐだぐだと説明するよりも、実際に見たほうが早いのよ。

あの馬鹿どもの異常さはね。

龍馬達の方角に視線を向けた兵士はそのまま数秒間動きを止めてた。

これはもうあれよね?

唖然あぜんってやつよ。

ちょっと距離があるからはっきりとは確認できないかもしれないけれど。

勢いよく食べる2人の馬鹿の姿は間違いなく見えてるはずよ。

「あの…。本当にあれだけの量を食べてるんですか?」

「そうよ!そうじゃなかったら何度も来ないわよ。何回も頼むのは、こっちも恥ずかしいんだから」

できることならやりたくないのよ。

だけど放置するとうるさいし。

野放しにしたらこの場所で暴食しかねないから。

穏便に済ませるためにわざわざこうして私達が往復してるの。

…って、まあ。

そんな理由で動いてるんだけど。

堂々と注文する私を見た兵士は大きなため息を吐いてるわね。

「はぁ…。先程も言いましたが、備蓄には限りがありますので…」

ものすごく嫌そうだけど。

それでも兵士は食糧を大きな箱に詰めて差し出してくれたわ。

「これで最後にして下さい」

そう言われてもね~?

約束はできないわ。

「馬鹿が満足すればね」

たぶん無理でしょうけど。

そうは思うけどここで口論したいとも思わないし。

無駄に大きな箱を受けとった私は配給所を離れることにしたわ。

「さすがに重いわね…」

両腕で抱え込む大きな箱は持ちにくさを考慮してもざっと10キロ以上あるんじゃないかしら?

普通の人なら1キロどころかその半分でさえも食べきれないんじゃない?

そうは思うんだけど…。

私が戻ってみると予想通り全ての食糧が綺麗さっぱりなくなっていたわ。

「あんた達は…。冗談抜きで胃袋に穴が空いてるんじゃないの?」

馬鹿すぎると思いながらも箱を下ろしてみると、
その瞬間に真哉と武藤君が飛び付いてしまったわ。

「まだまだ食えるぜっ!!」

「僕も頂きます!!」

箱の中身を奪い合う真哉と武藤君。

2人の争奪戦を見るだけでため息が出るわね。

はあ。

ったく、もう。

これでもまだ足りない雰囲気ってどうなの?

いい加減、誇張じゃなくて本当に食料が尽きるんじゃない?

そんなふうに思いながらも、一応、配給所に振り返ってみる。

視線で訴えてみようかな?なんて考えたんだけど…。

先程の兵士と視線が合った瞬間に、
離れた場所にいるのに首を左右に振られてしまったわ。

「…やっぱり…ね。」

配給の拒絶。

さすがにそうなるわよね。

いくら最後の晩餐って言っても物理的な限界はあるわけだから、
無制限にでてくるわけじゃないわ。

いつか必ず底をつくわけだし。

断られるのも当然よね?

それが当たり前の反応だと思うわ。

だから私は小さくため息を吐いてから箱の中から自分達の分の食糧を確保したのよ。

龍馬と沙織と優奈ちゃんと悠理ちゃん。

そして自分の分を確保した私は沙織の隣に腰を下ろしてから真哉と武藤君に声を掛ける。

「まだ足りないならあとは自分達で頼むことね。まあ、さすがにもう無理だと思うけど」

食料の備蓄がどうなっていたのかは知らないけど。

3万5千人の食事をまかなっているのよ?

普通に考えて在庫が残っているとは思えないわ。

…と言うか。

もしもあるのなら断られることはないんだし。

もうダメって言ってくる以上は本当に在庫がないと考えるべきよね?

だから私は馬鹿の世話を放置して静かに食事を始めたのよ。

「全力でお願いしてみたら?もしかしたら残飯くらいはくれるかもね~」

そんな私の発言に苦笑いを浮かべる龍馬達。

その間にも食糧を奪い合う真哉と武藤君の2人は
少しでも多くの量を食べるために早食い競争みたいになってる。

こうなるともう箱の中が空っぽになるのは時間の問題でしょうね。
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