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THE WORLD 作者:SEASONS

4月16日

772/4820

4人の護衛

《サイド:御堂龍馬》

何がどうなっているんだろうか?

栗原さんが去ったあとの会議室。

意味深な言葉を残して立ち去った栗原さんの言葉に動揺してしまう僕達だけど。

様々な憶測を思い浮かべる僕達の思考を遮るかのように再び会議室の扉が開かれた。

「お待たせ~」

「お待たせしました」

入ってきたのは理事長と琴平学園長だ。

琴平学園長は教壇に向かっている。

その手には書類の束があるのが見える。

だけど理事長は琴平学園長から離れて空いている席に座っていた。

その結果として。

まるで授業を受け持つ教諭のように、
それぞれの視線を受ける琴平学園長が口を開いたんだ。

「それではまず、これまでのことについて少し説明いたしましょう」

琴平学園長はまだ事情を飲み込めていない僕達に説明を始めてくれるらしい。

「さて、皆さんが捜し求めている天城総魔さんですが、現段階ではまだ彼との連絡がとれていません。ですが、どこへ向かったのかは分かっています。ただ、その後の消息は連絡がない為に不明という状況になります」

琴平学園長は申し訳なさそうな表情で言葉を続けていく。

「数日前、共和国とアストリア王国との国境付近にアストリア軍が軍事用の砦を建設しました。すでにその砦は完成しているわけですが、砦にはおよそ10万に及ぶ軍隊が待機していると思われます」

10万!?

その数の多さに驚いてしまう。

想像を超える説明に動揺しながらも、
大人しく話に耳を傾ける僕達に、琴平学園長は説明を続けてくれたんだ。

それこそ有り得ない説明を、ね。

「彼には問題の砦の内部調査を依頼しました」

なっ!?

琴平学園長の言葉を聞いた瞬間に僕と翔子は反応していた。

「軍隊の駐留する砦に!?」

「そんなの無茶よ!?連絡が取れないって!!それじゃあ…っ!」

絶望的な表情を浮かべる僕達だけど。

琴平学園長は冷静に話を続けていく。

「生死不明の状況ですが、生きていると信じるしかありません。彼には護衛も用意しています。僅か4名だけですが、彼は他の護衛を断って、たった5人で砦に向かいました。その後の連絡はありません。帰って来ないのか、それとも帰って来れないのかは不明ですが、私達は彼の実力を信じて、生きて帰ってくることを祈るしかありません」

「護衛を断ったって…どういうことなの?」

「その辺りの詳細も不明です。」

問い掛ける理事長に琴平学園長は戸惑うような表情で答えていた。

「ですが、数名の負傷者と護衛を放棄した者達の証言によると、彼は護衛を必要ないと判断したようです。その事情までは説明がなかったので分かりませんでしたが…。」

「天城君は一人で向かうつもりだったのかしら?」

「そうかもしれません。ですが、あの2人と朱鷺田ともう一名も行方不明になっています。もしも殺害されているとすればアストリア側から苦情の一つも来るでしょうし、どこかに死体があれば偵察部隊から情報が流れてくるはずなので、おそらく護衛の4名も生きて彼と行動を共にしていると思われます」

琴平学園長の話を聞いたことで、今度は沙織が問い掛けた。

「その4名というのは?」

「一人は朱鷺田秀明という人物で、この町にある魔術師ギルドのギルド長です。もう一人は治安維持部隊の三倉純さんという女性です。魔術師としての才能はそれなりなのですが、生まれ持った膨大な魔力は国内全体で見ても5本の指に入るほどの実力者です。職業柄、戦闘技術も兼ね備えた優秀な人物でもあります。そして栗原薫さんの兄である栗原徹君が彼の補佐として同行しています。最後の一人は…私の娘である琴平愛里になります。」

4人の護衛を教えてくれた琴平学園長。

実の娘までも砦に送り出した父としての苦しみの感情が琴平学園長の表情には表れていた。

「他に有効的な方法は思い付きませんでした。言い訳に聞こえるかもしれませんが、戦争に勝つ為にはどうしても情報が必要です。少しでも共和国の勝率を上げるために砦への潜入は成功させなければいけない作戦でした。だからその作戦を成功させるために、私達は彼に依頼したのです。おそらくこの国で最強と呼べる彼に…。最も生還率が高いと思われる人物にこの国の未来を托したのです」

辛そうな表情で告げる琴平学園長。

娘の命を危険に晒してまで総魔を砦へと送った琴平学園長は誰よりもこの国の未来を願っているようだった。

だから、とは言えないけれど。

娘を戦場に送り出した琴平学園長に不満を口に出来る人はいなかった。

みんな苦しんでいるんだ。

その想いは確かに伝わったから僕も反論しなかった。

総魔はアストリア軍の砦にいる。

それが理解出来ただけでも十分だ。

総魔の消えた理由と向かった先を知ったことで、僕も問い掛けてみることにする。

「総魔が砦に向かったのはいつですか?」

「報告によると昨日の夜です。夜間に行動していることを考慮して、お昼までにはこちらに戻って来る手筈だったのですが、いまだに帰還の連絡は届いていません」

すでに半日が経過しているにも関わらず。

総魔達は帰ってきていないらしい。

その事実に深海さんと翔子は不安を感じているようだった。

「まだ砦にいるのでしょうか?」

「捕まってなければ良いんだけどね…。」

確かに、それは僕も気になっている。

心配する僕達だけど。

理事長は話を変えて別の話題を問い掛けていた。

「情報も大事だけど、こちらの戦力はどうなっているの?」

「すでに配備は終えています。およそ3万5千の魔術師は全て国境に集結させました。米倉代表が到着次第いつでも動かせるはずです」

「指揮官は?」

「手筈通りです。国境警備隊の幹部が部隊をまとめています」

琴平学園長の報告を聞いて、理事長は満足そうに頷いている。

「…となると。結局は天城君の報告待ちということね」

「はい。ですがこのまま待っていても敵軍に猶予を与えるだけです。最悪の場合、報告は来ないと判断して動かなければいけないかもしれません」

「そうでないことを祈るけれど…」

呟く理事の言葉を遮るかのように。

突如として会議室の扉が激しく叩かれた。
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