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THE WORLD 作者:SEASONS

4月16日

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薬の効能

「ごめんね。乗り物酔いなのよ。悪いんだけど薬か何か持ってない?」

「ん?あ~。そういうことね」

栗原さんはすぐに対応してくれたわ。

「その手の薬なら持ってるわよ」

自分の鞄を探ってから小さな巾着袋きんちゃくぶくろを取り出してくれたわ。

「確かここに入れたはずなんだけどね~」

呟きながら巾着袋の中を覗き込んで薬を探してくれる。

「え~っと…。あっ!あったわ!」

目的の薬を見つけて袋から取り出してくれたのよ。

そして鞄から水筒も取り出して、水と薬を悠理ちゃんに差し出してくれたわ。

「どう?飲める?」

「…はぃ…」

か細い声で返事をする悠理ちゃんは、
震える手で薬を受けとって必死の思いで薬を飲み込んでいたわね。

「ぅぅ…。」

きっと苦くてマズイと思ってるんでしょうね~。

意を決して飲み込んでいた様子だけど。

「…甘い…」

そんな私達の予想に反して、
薬はとても飲みやすかったみたい。

水で流し込む薬は甘かったようで、
後味に苦しむこともなく薬を飲み終えていたわ。

う~ん。

何だか納得がいかないわね。

これって美春の薬とは全然違うの?

わざわざ飲んでみようとは思わないけれど。

たぶん、作り方が違うんでしょうね~。

「あ、ありがとうございます…。」

「いえいえ、どう致しまして。」

素直にお礼を言った悠理ちゃんに、
栗原さんは微笑みを向けてた。

「まあ、副作用を抑えた遅延系だからすぐには効かないと思うけど。それでもしばらく安静にしてれば徐々に落ち着くと思うわ」

あ~。

なるほど。

効能が違うのね。

美春の薬は即効性で吐き気を抑える効果が強いけれど、
栗原さんの薬は遅延性で総合的に効果があるって感じなのかな?

どっちが良いとは言い切れないけど。

この辺りはまあ、好みの問題でしょうね。

味で苦しむか、吐き気で苦しむか、よ。

個人的にはどっちも嫌だけど。

美春お手製の薬なら苦くても我慢するつもりでいるわ。

「まあ、薬学部に行けばもう少し効果の高い薬も用意できるけど、副作用も強くなるし苦味も強くなるからお勧めはしないわよ」

あ~、やっぱり効果の高い薬は苦いのね。

美春の薬だけが苦いわけじゃないって分かっただけでもここに来た意味はあったかも?

なんて。

くだらないことを考えてる間に栗原さんは沙織に歩み寄っていたわ。

「見た感じ、沙織は大丈夫そうね」

「ええ。一応、薬を飲んでいたから」

「そう? まあ、手持ちはまだあるから一応渡しておくわ」

あっさりと残りの薬を沙織に差し出してる。

あまり貴重な薬じゃないのかな?

薬の価値は良く分からないけど。

沙織は笑顔で受け取ってるから高級品っていうわけじゃないみたい。

「ありがとう」

笑顔で薬を受け取った沙織は、
龍馬と私と優奈ちゃんのそれぞれに問い掛けてくる。

「薬をもらったけど、いるかしら?」

う~ん。

甘い薬なのよね?

興味はあるわ。

でもね~。

今日はそれほど苦しくないし。

意味もないのに薬を飲むのは体に悪そうよね?

味見で飲んでも怒られはしないと思うけど良い気はしないと思うわ。

だからここは遠慮してみる。

「ん~。薬を飲むほどじゃないかな~?」

「僕も大丈夫だよ」

「私も大丈夫です」

龍馬と優奈ちゃんも何とか平気みたい。

まあ、そもそも薬を必要としてない馬鹿も二人ほどいるけどね。

真哉と武藤君は薬がいらないみたいだから、
沙織は受けとった薬を鞄に仕舞って栗原さんと向き合ってた。

「今はいらないみたいだから、帰る時に使わせてもらうわ」

「そうね。その方がいいかもね」

慈愛に満ちた栗原さんの笑顔を見て、沙織も自然と笑顔を浮かべてる。

うぅ~ん。

ホントにこの二人は仲がいいわね~。

ちょっぴり嫉妬を感じるわ。

沙織は私のものなんだから!

…なんて。

馬鹿なことを言うつもりはないけど。

私以外に心を開いてる沙織を見るとちょっぴり寂しいと思うのは事実なのよ。

なんだか沙織が遠くに行ってしまったような気がするわ。

「薫には感謝してるわ」

沙織の言葉を聞いた栗原さんは照れ臭そうな表情を浮かべて視線を逸らしてた。

「ホントに、沙織は素直ないい子よね…。」

ん~?

今の行動から推測すると…。

もしかして照れてる?

相変わらず二人の関係はイマイチ良く分からないけど。

今の雰囲気を考えると姉と妹って感じかな?

優しい姉(沙織)と、しっかり者の妹(栗原さん)っていう感じ?

実際にどうなのかは分からないけど、そんな雰囲気を感じたわ。

「とりあえず」

呟きながら、栗原さんはもう一度悠理ちゃんに歩み寄ってくる。

「休むなら医務室に案内するわよ?」

「ぁ、いえ。多分、大丈夫です…」

曖昧な返事を返す悠理ちゃん。

薬はまだ効いていないみたいだけど、
喋れる程度には落ち着きを取り戻しているようね。

「そう?まあ、無理にとは言わないけど、無理はしない方が良いわよ?」

「あ、はい。でも、大丈夫です」

強がる悠理ちゃんの瞳を覗き込んで、栗原さんはもう一度問い掛けてる。

「無理はしない方が良いわよ?」

まっすぐに見つめ合う2人。

それでも悠理ちゃんは折れなかったわ。

「大丈夫です」

疲れきった表情に反して、力強い視線。

気力は十分なのよね~。

その気持ちを察したのか、栗原さんは追求を止めたみたい。

「ふう。仕方ないわね。でもまあ、辛くなったらいつでも言ってね?看病くらいならしてあげるから」

「ありがとうございます」

優しく微笑む栗原さんを見て、悠理ちゃんも精一杯微笑んでた。

「うん。とりあえずは安静にしてるようにね」

悠理ちゃんから離れた栗原さんは、琴平学園長に歩み寄ったわ。

「学園長」

「はい。どうしました?」

「これからの予定ですけど、みんなを会議室に案内したほうが良いですか?」

「ああ、ええ、そうですね。時間的に例の報告などもあるはずですから、会議室に移動していただいてから話し合いましょうか」

二人の会話をきっかけとして、
琴平学園長と理事長を含めた私達は校舎の中にある会議室へと移動することになったのよ。
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