挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
THE WORLD 作者:SEASONS

4月16日

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

756/4820

次への準備

《サイド:近藤誠治こんどうせいじ

…さてさて。

これからが大変だな。

米倉代表が学園を去ったあとの学園。

一時的にとはいえ全ての権限を預かった私は、
ひとまず特別風紀委員『全員』を学園長室へと召集することにした。

…とは言っても。

すでに御堂龍馬、北条真哉、常盤沙織、美袋翔子の4人が抜けているため。

実際に全員が揃うことはできない状況となっている。

それでも残り10人の戦力が学園に残っているのは間違いない。

長野淳弥ながのあつや和泉由香里いずみゆかり
芹澤里沙せりざわりさ矢野百花やのももか
木戸祐樹きどゆうき須玉聡美すだまさとみ
岩永一郎いわながいちろう大森遼一おおもりりょういち
伊倉信夫いくらしのぶ梶原裕美かじわらひろみの10人だ。

彼等も学園の主力であることに変わりはなく。

これから始まる戦争に向けて必要な戦力でもある。

時刻は午前7時。

私の指示の下。

学園中および町中にこれから始まる戦争に関しての情報が公開されることになっている。

そして同時に長野君達も事実を知ることになる。

私からの説明によって、すでに御堂君達が旅立ったことは知らされた。

あとは今後の対応を話し合うだけだ。

「くっ!何故、もっと早く言ってくれなかったんですか!?知っていれば、俺も遠征に参加したのにっ!」

悔しがる長野君の発言は予想の範囲内だ。

だからこそ私はその理由を説明することにする。

「もちろんそういう発言を封じる為だ。きみ達までもがこの町から離れてしまっては、この町の防衛力が急激に低下してしまうからな。」

この非常時において私情は控えてもらいたい。

「必要なのはこの国を守り切れるかどうか、その成否のみだ」

「それはつまり、俺達にも戦争の参加を認めるということですか?」

「強制ではないが協力を頼みたいとは思っている。この町が抱える海軍と共に行動して海域の確保を頼みたい」

私達の役目は海域の確保になる。

最も戦場から遠いジェノスとしては、
遠方の戦争に参加するよりも後方支援が最も効率の良い支援方法と考えているからだ。

「アストリア軍の撃退に成功したとしても共和国が滅んでは意味がない。他国からの侵攻も考慮しなければならない現状では全軍をアストリア方面に向けることは出来ないからな」

隣接するセルビナとミッドガルムも警戒しなくてはならない。

…と、同時に。

多方面からの進軍も警戒しなくてはならない。

国境だけではなく、
海上から攻めてくる可能性も考慮しなくてはならないのだ。

「きみ達には別方面で活躍してもらいたい」

私の願いを聞いて、芹澤君が尋ねてきた。

「それはつまり、海を守れということですか?」

ああ、そうだ。

「海を守り切れなけば、この国は全方向から敵の侵略を受けることになる。」

そうなれば防衛は確実に失敗する。

いかに魔術師の攻撃力が高くとも、その数の差は圧倒的だからな。

「敵の進軍を止められなければこの国は確実に滅びるだろう」

「………。」

ここまでの説明によって長野君達は決断を迫られることになる。

命をかけて戦うか?

それとも死を恐れて隠れるか?

どちらが良くて、どちらが悪いとは言えない。

生きることを優先する考え方にどちらも違いはないからだ。

「あえて繰り返そう。これは強制ではない。だが、防衛に失敗すればこの国は滅びる」

脅迫ともとれる言葉によって、
長野君は決断してくれたようだ。

「だったら考えるまでもないだろ。俺は戦う。国がどうとか、どっちが正しいとか、そんなことはどうでもいい。翔子が命をかけているなら俺も戦う。あいつの守りたいモノが俺の守るべきモノだ」

美袋君への想いを隠すことなく公言する長野君にとって、
何よりも優先すべきことは美袋君の力になれるかどうか?

その一点にあるようだ。

だがそれは長野君の戦う理由であって、
他の生徒にとってはそうではないだろう。

率先して戦う意思を示す長野君の想いを軽く聞き流して、
今度は和泉君が話し掛けてきた。

「まあ、淳弥はともかく、もちろん私も参加します。攻めて来る敵に対して、逃げ出すのは趣味ではありませんから」

「逃げ場がないのなら戦うしかないでしょう。及ばずながら私も参加します」

和泉君に続いて、矢野君も協力してくれるようだ。

さらに芹澤君も頷いてくれていた。

「命懸けの戦場なんて本当は嫌だけどね。だけど百花達が心配だから私も参加して皆を援護します」

芹澤君に続いてそれぞれの想いが告げられていく。

その結果として特風の10人は、それぞれに戦いの意志を示してくれた。

不参加は0人。

…と言っても。

そもそも逃げ場のない戦いだ。

隠れるところなど最初からどこにもない。

戦って勝利を手にしなければ見ることの出来ない未来がある。

それぞれの夢と希望の為に。

10人は戦う道を選んでくれた。

「きみ達の勇気を誇らしく思う」

誰一人として欠けることなく意思を示してくれた10人の生徒に指示を出すことにする。

「これより戦争への志願者を集める。きみ達は志願する生徒達をまとめて港へ向かってもらいたい。」

これは戦争であり。

一刻一秒を争う時間との戦いでもある。

迅速じんそくに行動してもらいたい」

「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」

指示を受けた10人は幾つかの方針を定めてから各自で行動し始めた。

「風紀委員を集めた方がいいな」

長野君が率先して指揮を執り、
芹澤君と矢野君に指示を出していく。

「召集をかけられるか?」

「うん。任せて!」

「ええ。出来る限り呼び掛けてみるわ」

芹澤君と矢野君は颯爽さっそうと学園長室を飛び出して行った。

「木戸、須玉!二人には研究所を任せる。向こうはすでに行動しているとは思うが、互いに連絡員は必要だろうからな」

生徒達とは別に行動する研究所や学園の教師達は特風の指揮下にはない。

だからこそ情報交換は必要な手順だと長野君は判断したようだ。

そしてもう一つ。

特風の指示を受けない組織がある。

「俺と由香里で生徒会に向かう。この際、表も裏も関係ないだろう。全ての生徒には俺達の指揮下に入ってもらう」

長野君の判断を聞いて、和泉君も頷いていた。

「分かったわ。行きましょう」

和泉君の協力を得たことで、
長野君は残りの生徒に指示を出してから行動を開始する。

「あとは各自の判断に任せる。時間は少ない。正午までに全ての準備を整えられるように最善を尽くしてほしい」

指示を残した長野君は和泉君と共に学園長室をあとにした。

その結果として指揮官が去ったことで静まり返る室内。

長野君の指示に反論する者はいなかったが、
具体的な目的のない残りの生徒には私が指示を出しておく。

「突然の戦争の発表に対して混乱する者達がいるだろう。早急な準備の為にもまずは学園の安定。その為に行動するべきだ」

「「「「「はい!」」」」」

私の指示によって残りの生徒達も行動を開始する。

それぞれに立ち去る生徒達。

最後に残ったのは私だけだ。

「ふふっ。」

長野淳弥。

やはり彼は本当の実力を隠しているようだ。

特風において生徒番号は最弱にも関わらず、
長野君はそれが当然のことであるかのように仲間達に指示を出して自ら率先して動き出した。

それはまるで御堂龍馬と同じように、だ。

「裏に徹してきた彼もとうとう表に出ざるを得ないという状況だと判断したか?」

力を隠してその存在を押さえていた長野君が、ついに自ら率先して行動し始めた。

その事実が重要だと考えている。

この学園に置いて最後の切り札と言ってもいい隠れた実力者だ。

長野淳弥の本当の実力がどれ程のものなのか?

その一点に密かな楽しみを感じていた。

「優秀な生徒はまだまだ数多くいるはずだ。」

その中でも彼は代表格となる。

「仮に主力を失ったとしても、まだ諦める必要はないか」

小さく呟きながら窓の外の景色に視線を向けてみる。

早朝の学園。

すでに混乱の兆しの見える風景を眺めながら次の作戦を考え始めることにした。

「もしも…」

もしも米倉代表や御堂君達が死亡したら?

あるいは砦の制圧には成功しても、
アストリアの増援部隊に敗北してしまったら?

早急に次の戦力を用意しなければならないことになる。

その為には新たな戦力をかき集めなければならない。

「現状では御堂龍馬の後継者は長野淳弥しかいないだろう」

呟く私の頭の中では、すでに次への準備が進んでいた。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ