挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
THE WORLD 作者:SEASONS

4月4日

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

74/4820

わざと

《サイド:天城総魔》

「これで3人だな」

恵理子が倒れたことで残る二人に視線を向けようとした。

だがその前に予測していた事態に襲われてしまう。

「ファルシオン!!!」

「エクスカリバー!!」

桃花と新谷力の魔術が放たれたからだ。

背後から迫り来る二つの最上級魔術。

一方を断ち切るのは簡単だが、
両側から迫る二つの魔術を同時に切り裂くことは不可能に近い。

やはり結界に頼るしかないようだ。

右手に所持している魔剣を迫り来る冷気に向かって構える。

そして左手を不可視の風に向けて突き出して防御結界を展開する。

「シールド!」

対応が追いつき、
放たれた二つの魔術は俺に届く事なく魔剣と結界に直撃して消滅した。

「くそっ!」

「さっきのホーリーも結界で防いでいたのね」

魔術が通じないことを確認して動揺する桃花達。

残る二人の強襲を凌ぎ切ったことで次の相手に新谷力を選ぶ。

「全力で抵抗して見せろ」

新谷を見据えながら試合場を駆け出す。

その間にも桃花と新谷の幾つもの魔術が放たれるが、
そのどれもが魔剣に切り裂かれて俺に傷一つ付ける事が出来ていない。

全ての魔術を切り裂く魔剣の力。

一方的な攻撃に恐怖すら感じる桃花と新谷の二人は、
それでも抵抗を諦める事なく最後まで魔術を詠唱しながら俺と向かい合っている。

だが、魔術の詠唱はもう間に合わない。

もっとも危険を伴っていた瞬間を凌ぎきってしまえばあとはもう魔剣の力を示すだけだからな。

再び横薙ぎの一閃。

魔剣の刃が新谷の体を突き抜けた。

「ぐ、はぁっ!!」

魔剣を睨みつけていた新谷は発動寸前だった魔術を開放して最後の抵抗を試みようとしている。

「こうなったら、せめて相打ちに…」

桃花さえ残れば勝利だと信じたのだろう。

意識を失う寸前で放つ決死の魔術だが、
至近距離で放たれた魔術でさえも魔剣は全て吸収していく。

「ち、く、しょ、う…。」

攻撃が一切通じない。

その事実が認められないまま新谷も試合場に倒れ込んだ。

これで残りはただ一人だ。

試合場内で対立する俺と桃花。

すでに試合の勝敗は確定しつつある。

「お前で最後だ」

「わざと、わざと私を最後にしたのねっ!!」

「指揮官が最初に倒れては面白くないだろう」

「その余裕の態度が気に入らないわっ!」

「そう思うのなら俺を倒せばいい」

「くっ!?」

仲間が全滅したことに苛立っているのだろう。

だがそれでも攻撃の手段がないことで桃花にとれる手段は限られている。

最後まで意地を張って魔剣で斬られるか敗北を認めて棄権するかだ。

そのどちらかしかないだろう。

「敗北を認めるのなら見逃すが、どうする?」

「くっ!残念だけど、試合から逃げたなんて知られたら、あとで親友にボコボコにされるわ」

「そうか、諦められないのなら最後まで戦いぬけ」

退かないなら、全力で制するまでだ。

「行くぞ」

一気に試合場を駆け抜ける。

俺の突撃から逃れるために距離をとろうとする桃花だが、
試合場という限られた空間内において逃げることなど出来はしない。

「くっ!こうなったらやぶれかぶれよ」

ありったけの魔力を使い尽くすかのように桃花は魔術を連発する。

その行動は最後の悪あがきでしかないが、
追い詰められながらもこちらの足元を狙って行動を阻害する判断力は優秀だと認めるべきだろう。

「一人になっても十分なほど強敵だな」

「貴方に言われると嫌味にしか聞こえないわ」

そんなつもりはないが俺がどう思うかなど関係ないだろう。

桃花がそう思うというのなら否定しても無駄だからな。

どちらにしても、ここまでだ。

放たれる魔術を紙切れのように斬り裂きながら前進を続けて、
ついに桃花の目前にまで接近する。

「終わりだ。」

終了を宣言して魔剣を一直線に振り抜いた。

最後の一閃。

魔剣の刃は桃花の体をすり抜けて全ての魔力を分断する。

「ぅ…っ!?」

魔剣の直撃を受けたことで桃花も意識を失っていく。

「これ、が…あなたの…」

意識を失う直前での一言。

それが何を意味するのかはわからない。

だが、試合場に崩れ落ちる直前の桃花の瞳は俺ではなく北条へと向いていた。

だとすれば。

おそらくは北条に対しての一言だったのだろう。

これが北条の望んだ結果なのかどうか?

その問いかけを残したのだろう。

肝心の北条に視線を向けてみると北条は憐れむような視線を桃花に向けていた。

「すまねえな、桃花。お前を巻き込むつもりはなかったんだ」

意図的に巻き込んだわけではないようだ。

会場内に桃花がいることを知った上で試合を組んだとは言え、
桃花が倒れることを望んでいたわけではなかったのだろう。

「俺としては棄権してくれるのが一番だったんだけどな」

北条の思惑は外れて桃花は倒れることを選んだ。

その一点においては北条にも思うことがあるようだ。

「すまねえ。だが、これで確信できた」

桃花が倒れた事で北条は理解したようだ。

翔子も同じ思いで倒れたということを。

逃げるという選択肢を選べずに、
意地を通して倒れる道を選んだのだと北条は理解したようだ。

「もう、十分だ。疑う余地はねえ」

桃花が倒れたことで試合が終わった。

その事実によって北条が動く。

「試合終了!!勝者、天城総魔!!」

真哉が試合終了を宣言し、俺の勝利が確定した。

決して圧勝とはいえない展開だったが無傷で勝利することはできた。

そして北条達の仲間である矢野桃花を倒せた事実が今回の試合で最も大きな意味を持つ。

試合そのものはわずか数分の攻防だったが、
これまでにない満足感を得ることができたからな。

いい経験ができたと思う。

試合結果は満足できる内容だった。

そして桃花を制したことで生徒番号27番も獲得した。

数々の試合を乗り越えて、ついにフォース・ステージにたどり着いたということだ。

桃花には苦戦したが、これでさらに計画は前進する。

結果だけを見れば圧倒的な実力差を見せ付けて5人の生徒を倒したからな。

5人から奪い取った魔力も相当な量になる。

試合を重ねるたびに膨れ上がっていく魔力の総量は昨日と比べて格段に増しているだろう。

とはいえ、その事実に気付いているのは北条だけだ。

他の者達からすれば俺の魔力など気にも止めていないようだからな。

そんな観客達を尻目に、北条と共に試合場を離れることにした。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ