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THE WORLD 作者:SEASONS

4月16日

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換気口

《サイド:琴平愛里》

三倉さんと一緒に換気口に入り込んだあと。

私達はゆっくりと内部を進んで行きました。

とても狭い空間ですが、
一人ではありませんので怖くはありません。

「愛里ちゃん、大丈夫?」

「あ、はい。」

ほふく前進という状況が窮屈だとは思いますが、
目の前に三倉さんがいてくれるので安心して進むことができます。

「大丈夫です」

「おっけ~」

何度か声をかけていただきながら幾つもの部屋の天井を通り過ぎます。

そうして進んでいると、
ついに誰もいない部屋の上へとたどり着きました。

「ここなら目的の物が見つかりそうね」

先行する三倉さんが換気口の柵を外して室内へと飛び降りました。

頭から抜け出したのに、
綺麗に一回転して着地する姿は惚れ惚れします。

こう言っては失礼かもしれませんが、
見かけよりも俊敏な動きだと思いました。

私よりは身長があるのですが、
それでも小柄で可愛らしい感じなので運動は苦手そうに見えたからです。

ですが実際にはそうではないようですね。

治安維持部隊に所属しているだけあって、
単純な運動能力は私達の中では一番高いのかもしれません。

「さてさて…。」

ひとまず脱出に成功した三倉さんは、
私の為に適当な足場を見つけてから換気口の下に用意してくれました。

「どう?下りられる?」

「あ、はい。大丈夫です」

手足さえ届けば体勢を変えられますので、
足場があるのなら私でも出られると思います。

「よい、しょ…っ」

ゆっくりと換気口から抜け出します。

そして足場に乗ってから静かに室内に着地しました。

ただ…。

換気口から床までは2メートル弱ほどの高さがあったのですが、
これくらいなら大丈夫と思って飛び降りた瞬間に
スカートがめくり上がりそうになって焦ったのは個人的に秘密です。

もちろんこの場には三倉さんしかいませんので、
見られたところで恥ずかしがるほどのことはないのですが…。

それでもやっぱり焦ってしまいました。

「…あ、ありがとうございました」

「いえいえ、どういたしまして」

呼吸を整えながらお礼を言ってみると、
三倉さんは優しく微笑んでくれました。

足でまといになりつつある私を見守ってくれているんです。

その恩に報いるために、頑張ってみようと思います。

「ライト・ボール」

手の平から生みだしたのは小さな光の球です。

室内を探索するのなら明かりは必要ですので光の球を天井に張り付かせました。

一応、光量は限界まで押さえているのですが、
光の球の輝きによって室内が見渡せるようになりました。

「ありがと、愛里ちゃん」

「い、いえ…。私はこれくらいしかお役にたてませんので」

ただそれだけのお手伝いでも三倉さんはお礼を言ってくれました。

「ん~そう?そんなことはないと思うけどね~。でもまあ、戦闘が始まって怪我でもしない限り、お医者様の出番はないかもね」

「えっと、その時は全力で治療させていただきます」

「ふふっ、ありがとう。そう言ってもらえるだけで頑張れる気がするわ」

何もできない私のことを責めたりせずに、
三倉さんは優しく頭を撫でてくれました。

「それじゃあ、ささっと探索を始めましょう」

「はい!」

三倉さんが室内の探索を始めたことで、
私も手の届く範囲内でお手伝いしたいと思います。

「私も探しますね」

どうやらこの部屋は物置のようですね。

あらゆる物資が乱雑に放置されているように見えます。

「とりあえず…」

三倉さんとは反対側を捜索したほうが良いでしょうか?

欲しいのはアストリア軍の軍服ですよね?

砦の内部を歩き回れる服装なら何でもいいのですが、
二人で荷物を掻き分けながら兵士に紛れる為の服を探してみました。

『ガサガサッ…ガサガサッ…』と音を立てながら。

戸棚や木箱や放置されている布袋、等など。

三倉さんは手当たり次第に探り散らかしています。

私は動きが鈍いので離れた場所で『ゴソゴソ…』と1つ1つを丁寧に調べていました。

対称的な行動ですが、どちらの手際がいいかは一目瞭然です。

三倉さんの方が圧倒的に速いからです。

ですがこういうのは運の要素もあるのでしょうか?

私達はほぼ同時に目的の物を見つけました。

「あった!」

「ありました!」

三倉さんの手には鎧一式が、
私の手には軍服一式があります。

それぞれ木箱に詰め込まれているのを引っ張り出して、互いに確認してみました。

「どっちも正解ね。鎧は警備兵用で、服は巡回兵用かな?どっちにしてもこれで自由に行動出来るはずよ」

三倉さんは満足そうに何度も頷いてから、
見つけた服と鎧を適当な布袋に詰め込みました。

「さてと。目的は果たしたから二人のところに戻りましょう」

先行する三倉さんが再び換気口に向かいます。

そのあとに続く私は発見した荷物を運び出すために、
下から布袋を押し上げて引き上げてもらいました。

「とりあえずはまあ、換気口に押し込んで荷物を押しながら進むしかないわね」

換気口の内部はほふく前進ですので、
引っ張りながら進むということができません。

ですので。

三倉さんは布袋を押しながら進むつもりのようでした。

「愛里ちゃんも登れる?」

「あ、はい。多分、大丈夫です」

三倉さんが用意してくれた足場があるので大丈夫だと思います。

少し勢いをつけて換気口へと手を伸ばしてみると、
足場のおかげで先程よりも簡単によじ登ることが出来ました。

「すみません。お待たせしました」

「うんうん。良く頑張ったわね。」

無事に上がれたことで、三倉さんが褒めてくれました。

「それじゃあ、急いで戻りましょう」

「はい!」

元気良く返事をしてから室内の光を解除します。

これで誰かに気づかれる可能性は低くなるはずです。

再び暗闇に包まれる換気口の内部ですが、
基本的には一本道なので道に迷う心配はないと思います。

ただ、光に慣れてしまったせいで来た時よりも暗く感じてしまいました。

それでも安全を重視した私達は慎重な行動を心掛けながら、
来た道をゆっくりと引き返すことにしました。
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