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THE WORLD 作者:SEASONS

4月16日

733/4820

偵察開始

《サイド:天城総魔》

日付が変わってから1時間ほど過ぎただろうか。

マールグリナを離れた俺達は、
問題のアストリア軍の砦へと向かっていた。

目的地は共和国とアストリア王国の国境を隔てる樹海の中心だ。

街道から少し離れた森の中に巨大な砦が建てられているのが見えている。

以前ここに訪れた時と比べると、現在の樹海は全く異なる景色と言えるだろう。

驚くほど巨大な砦が建てられているからだ。

すでに砦までの距離はおよそ200メートルというところにまで接近している。

これ以上接近すれば見張りの兵士達に気づかれるかもしれない。

少し様子を見るべきだろう。

幸いにも姿を隠すための木は数え切れない程あるからな。

足音さえ気にしていれば、
そうそう簡単にアストリア軍に見つかることはないはずだ。

ひとまず樹海に身を潜めながら砦の外周を観察してみることにする。

無言で見つめるアストリアの砦。

ここにはざっと10万の兵がいるらしい。

実際にそこまでの戦力が存在するのかどうかは砦を見ただけではわからないが、
決して大袈裟な数字ではないだろう。

砦の規模だけで考えてみても、
グランパレスを遥かに凌ぐ大きさだからな。

とても短期間で作り上げたとは思えないほど立派な防壁が砦全体を覆っている。

そして幾つもの建造物が防壁の内部に点在しているのが見える。

すでに入手済みの図面を考慮すると、
四隅よすみに建てられている大きな建物が兵士達の宿舎のようだな。

防壁と隣接するように建てられているのは、
有事の際に即座に出撃できるようにという考えだろう。

そして砦の中心には司令塔ともよぶべき拠点があるようだ。

おそらくここにアストリア軍の指揮官や幹部達がいると思われる。

上手く奇襲をしかけてここを落とせば敵の指揮系統を破壊することができるかもしれないが、
接近するまでが命懸けになるだろう。

いくら少数精鋭とは言え、
そうそう簡単に拠点に接近できるとは思えない場所だ。

なにより強行突破を狙えるような距離でもない。

数万単位の兵士達の視線をかいくぐって拠点に攻め込むのは不可能だ。

仮に潜入に成功したとしても下手に騒ぎを起こせば脱出が難しくなるからな。

もしも実行するとしたら、
生きて帰れないことを覚悟の上で特攻を仕掛けるしかない。

それでも指揮系統の破壊を狙うのなら、
自爆覚悟の特攻を仕掛ける意味はあるだろう。

…とは言え。

今はまだそこまでの危険を侵すことはできない。

個人的な目的として死ぬわけには行かないという理由もあるが、
根本的な問題として指揮系統を破壊したとしても残存兵力を殲滅出来るだけの戦力が存在しないからな。

後続の共和国軍が接近している状況ならともかく。

俺達だけで特攻を仕掛けて幹部連中を暗殺しても、
共和国軍が駆けつける前には新たな指揮官が現れるだろう。

それでは奇襲を仕掛ける意味がない。

命を賭けるだけ無駄などころか、
警備が強化されて後続の共和国軍が痛手を受けるだけだ。

それらを考慮すれば幹部の暗殺は現時点では最善手とは言えない。

拠点への潜入は何とか成功させてみたいとは思うが、
あくまでも現時点では調査だけに留めるべきだ。

情報収集だけを目的として行動する。

その前提を下に、再び砦に視線を向けてみる。

目視で確認できる範囲だけでも数百人規模に及ぶ巡回兵達の姿が見えている。

夜の闇に紛れて行動しているからといって、
全ての監視をかいくぐるのは不可能だろう。

ある程度近づいたところで確実に発見されてしまうことになるはずだ。

「どう見ても接近は難しそうだな」

「「「「………。」」」」

他の4人も同じ意見のようだ。

誰一人として突破口を見いだせずにいる。

「よくぞこれ程の砦を2週間程度で作り上げたと、敵ながら褒めたいところですね」

ああ、そうだな。

樹海の開拓と土地の整備自体は前もって行っていたのかもしれないが、
建築そのものは短期間で行われていたからな。

驚く気持ちは俺も同じだった。

だからだろうか。

「噂には聞いてたけど、まさかこれほどなんてね~。」

朱鷺田の発言に頷く三倉も驚きの声をあげていた。

「一体、砦の建設にどれだけの費用をかけたのかしら?」

砦の建設資金か…。

個人では考えられないほど莫大な予算をかけて建造されたのは間違いないだろう。

疑いようもなく国家予算が動いていると思うのだが、
それほどの資金となるとおそらく共和国では到底捻出できない額になるはずだ。

「この巨大な砦に潜入して、どれ程の情報が集められるのでしょうか?」

不安を感じる徹の気持ちも理解できる。

だがそれは実際に調査してみなければわからないことだ。

それにここにいても時間の無駄でしかない。

「まずは侵入出来る場所を探そう。」

見張りに気付かれないように距離を維持しながら砦の外観を偵察することから始めてみる。

そのあとは最も警備の薄い場所を強行突破するしかないだろう。

「集合は30分後だ。いいな?」

俺の指示に従ってくれる徹達は、
それぞれに行動を開始していった。

「全員の無事を祈ります」

まずは朱鷺田が率先して走り出した。

「それじゃあ、みんな、気をつけてね~」

三倉も静かに動き出す。

「僕も行きます」

「私も頑張ります」

偵察に出る徹に続いて、
愛里も覚悟を決めて立ち上がった。

そして二人は戸惑うことなく、森の中へと消えて行く。

朱鷺田は東へ。

三倉は南へ。

徹は北へ。

愛里は西へ。

それぞれに行動を開始したようだ。

残された俺は静かに砦を眺めてみる。

月明かりが照らし出す巨大な砦。

俺にとって倒すべき敵である『アストリア王国』との最初の戦いがついに始まった。
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