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THE WORLD 作者:SEASONS

4月15日

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最初で最後の強がり

《サイド:深海優奈》

「…ごちそうさま。」

夕食が終わりました。

時計に視線を向けてみます。

時刻は午後9時45分ですね。

お母さんの手料理を味わって、
久し振りに両親と過ごした時間はすごく楽しかったのですが、
それもそろそろ終わりに近づいてきています。

このまま朝までというわけにはいきません。

私にはまだ会わなければいけない人がいるからです。

だから今はこの幸せな時間にさよならを告げる覚悟を決めました。

「そろそろ学園に戻らないと…」

時間を気にして立ち上がると、
お父さんとお母さんが引き止めてくれました。

「今晩は泊まっていったらどうだ?」

「そうよ。こんな時間から出歩くなんて…」

危険だから止めなさいと心配してくれる両親ですが、
明日は朝6時に集合なので、どちらにしても夜の間に家を出ることになると思います。

「ごめんね。まだ、しなくちゃいけないことがあるから…」

両親に感謝しながらも、
私は学園に戻るために荷物をまとめることにしました。

そして小さな鞄を背負って玄関に向かう私を両親は家の外まで見送りにきてくれます。

「気をつけて行くのよ、優奈」

「何かあったらいつでも帰ってきなさい」

「うん。行ってきます。お父さん、お母さん。しばらく帰って来れないと思うけど、これからも元気にしていてね」

溢れそうになる涙を必死に涙を堪えました。

最期は笑顔で別れたいと思うからです。

そう心に決めていたから、
精一杯の笑顔を浮かべて両親と向き合いました。

「ありがとう。お父さん、お母さん。ずっとずっと感謝してるから。だから、ずっとずっと元気でいてね」

これからのことを何も言わなかった私を両親は何も追求しませんでした。

私の意志を尊重して、静かに見送ってくれたんです。

「いつでも帰ってきなさい。ここは優奈の家なのだから」

「今度、時間がある時にお料理を教えてあげるわね」

両親の優しい言葉。

その言葉に幸せを感じながら、私は『別れ』を選びました。

「お父さんとお母さんに会えて良かった。大好きなお父さんとお母さんに会えて本当に良かった。だから私はとっても幸せです。お父さんとお母さんがいてくれるこの場所に、これからもまた帰ってきたいから。だから今は…行ってきます」

両親に背中を向けた私は、振り返ることなく歩き始めました。

こぼれ落ちる涙を両親にみせないために。

そのまま歩き続けることにしたんです。

これは私の最初で最後の強がりです。

それでもこれが私の選んだ道なんです。

ゆっくりと確実に家から離れる私の後ろ姿を、
両親はいつまでもいつまでも見送ってくれているようでした。
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