挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
THE WORLD 作者:SEASONS

4月15日

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

717/4820

引き出し

《サイド:御堂龍馬》

医務室を離れたあとで、
僕は真っ直ぐに寮へ向かうことにした。

だけどそれは自室に向かうためじゃない。

別の目的があって寮に移動したんだ。

8番目の寮の管理人にお願いして、とある部屋の鍵を借りる。

そして3階にある部屋の前に訪れる。

番号が書かれているだけの簡素な扉に名前は書かれていなかった。

だけど部屋の番号は管理人に聞いていたから間違いないはずだ。

もう一度部屋の番号を確認してから借りてきた鍵を鍵穴に差し込んでみる。

間違いじゃないと信じながら鍵を回してみると、
『カチッ…』と小さな音がしてすんなりと鍵が解除された。

「ふう」

何故か緊張してしまっている。

ここには誰もいないと分かっているのに、
中に入るのを躊躇ためらってしまう自分がいたんだ。

「やってることは泥棒と変わらないから、かな?」

もちろん何かを盗みに来たわけじゃないよ。

ただ確認がしたいだけなんだ。

だから、躊躇ためらう必要はないと思う。

そんなふうに自分に言い聞かせてから、ゆっくりと扉を開けてみる。

薄暗い室内に灯りはない。

…と同時に、人気ひとけもない。

本来いるべき人物が留守だから当然なんだけど。

魔術で明かりを用意するまでもなく、
室内は月の光だけで見渡せてしまえるほど閑散としていたんだ。

「見事なまでに殺風景さっぷうけいだね」

室内には備え付けのベッドと簡易的なテーブルしかないようだ。

だけどどちらも寮の備品なので、私物とは言い難い。

何も知らない人物が見れば空き部屋だと思ってしまうんじゃないかな?

そんなふうに勘違い出来てしまえるほど何もない部屋だった。

「これはまあ、きみらしいと言うべきなのかな?」

誰も居ない室内を進む。

そして部屋の中を見回してみる。

見事に何もない室内に私物は一切存在しないようだ。

備え付けのベッドとテーブルを別に考えれば、
ここには生活の痕跡が一切感じられなかった。

「文字通り、寝に帰る場所っていう感じだね」

総魔の部屋は最初から無人であったかのように綺麗に片付けられている。

「荷物は一切なしか。きみは思い出を持たない主義なのかい?」

ここに居ない総魔に話し掛けてみたところでもちろん返事なんてなかった。

僕以外には誰もいないからね。

決して広くはない室内。

特に調べるべき場所もない部屋の中で、一応探し物をしてみることにした。

総魔を知ることの出来る何かがないか?

何らかの手がかりを求めて眺めてみる。

だけど探す必要がないほどこの部屋には何もないんだ。

唯一、何かがあるとすればテーブルの引き出しだけかな?

他に探すべき場所は何もないからね。

「引き出しの中に何かあるかな?」

テーブルの引き出しを順番に開けてみる。

4段式の引き出しを上から順に開けてみたけれど。

1段目には何もなかった。

次に2段目の引き出しに手をかける。

『ガラガラッ…』と引き出してみた2段目の中には、
何冊かのノートが入っているのが発見できた。

「何だろう?」

手にするノート。

これは総魔の研究記録のようだ。

「自分自身の能力の研究記録かな?」

幾つもの推測すいそく考察こうさつ

あらゆる可能性を考慮した仮説の定義ていぎ検証けんしょう

「これは彼自身の努力の証なんだろうね」

まだ不明だった頃に特性の正体を考慮した数々の仮説と定義の研究資料。

これらを見る限り。

総魔は直感や偶然で力を考慮しているのではなくて、
厳密な理論の構築を繰り返して失敗を繰り返しながら僕達と同じ苦労を積み重ねているのがわかる。

ここにあるノートはその頃の努力の証のようだ。

「うわー。すごいね。」

あらゆる定義が記されているのが分かる。

総魔はすでに僕達の能力の解析まで行っていたようだ。

だとすると模倣は感覚や能力じゃなくて、
詳細な理論構築の上で成り立っていたのかな?

これはちょっと僕にとっても興味のある資料かもしれない。

そう思えたことで別のノートを見てみると、
さらに興味深い研究が行われているのが発見できた。

「沙織の研究にも触れているようだね。」

眼の治療法を考えていたようだ。

だけど書かれている理論は正直に言って僕には全くと言っていいほど理解出来ない内容だった。

うーん。

僕には医学の知識がないからね…。

総魔はどの程度の知識を持っているのか知らないけれど。

少なくとも僕よりは詳しい知識を持っているようだ。

「こういう専門的な研究は解読不可能かな?」

僕にはわからない。

だけど沙織なら解読出来るかもしれない。

「沙織に見てもらうべきかな?」

沙織に相談するためにノートを持ち出すことにする。

「ちょっと気が引けるけど、ここに置いておいても仕方がないよね?」

奪い取るとかそういうことではないけれど。

このまま総魔が帰ってこなければ、
学園か管理人に処分されかねないからね。

少なくとも寮費を滞納した時点で何らかの措置はとられるだろうから、
その前に確保しておくべきだと思う。

総魔に返す為にも、しっかりと管理しておこうと判断したんだ。

「で、結局はノートだけかな?」

ノートは4冊あった。

一冊目は総魔の研究資料。
二冊目は僕達の考察資料。
三冊目は成美ちゃんのための治療法。

そして四冊目はルーンの分析資料のようだ。

これも僕にはよくわからないけれど、
黒柳所長なら飛びつきそうな感じがする。

「これくらいなら回収しておいても問題はないかな」

計4冊のノートを回収した僕は続けて引き出しを開いた。

3段目は何もない。

けれど最期の引き出しで一冊の手記を見つけて手を止めた。

「これは…」

見覚えのある手記だった。

けれど僕には解読出来なかった手記だ。

シークレットリングと原始の瞳。

それらと同時に受け取っていた研究資料がここにあったんだ。

「これも回収しておこう」

現時点で原始の瞳を所持している翔子に預けるか、
理事長に返却したほうがいいと思う。

そのために手記も回収した。

そして他に何かないか探してみる。

だけど、これ以上のものは何も見つからなかった。

と言うよりも、そもそも探す場所が少ないからね。

「あったのは研究資料だけか…」

それでも十分すぎるほど興味深いとは思える。

「調査はここまでだね」

総魔の痕跡を探すのは諦めて、素直に部屋を出ることにした。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ