挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
THE WORLD 作者:SEASONS

4月15日

698/4820

忘れ物

《サイド:深海優奈》

………。

理事長さんが立ち去ったあと。

室内はしばらくの間、沈黙が支配していました。

誰も何も言いません。

色々と考えているように見えます。

総魔さんの過去と消えた理由が明らかになったからでしょうか?

私達の幸せを願って一人で旅立った総魔さんですが、
それでも私達はこのまま黙って総魔さんを見放すことは出来ません。

先輩達にとっては2週間程の思い出で、
私にしてみれば僅か1週間程度の出来事なのですが、
それでも私達にとってはとても大切な思い出です。

とても価値のある日々だったんです。

共に過ごし。

共に語り。

共に成長した日々。

それは今までの人生の中で決して忘れることの出来ないかけがえのない毎日でした。

私達の中心に総魔さんがいて、
一日をどう過ごすかばかりを考えていた日常。

それが当たり前の生活で、
それぞれの心の支えとなっていたと思います。

中立の立場の北条先輩でさえも、
総魔さんがいることが当たり前に感じていたと思います。

それなのに。

ここにはもう総魔さんがいません。

自らの命を危険にさらしてまで戦場に向かったからです。

その理由が『復讐』という個人的な理由であったとしても、
私達の幸せを願った事実は何も変わりません。

態度や表情で感情を表すことがなくても、
総魔さんの優しさは感じることが出来ました。

御堂先輩、美袋先輩、常盤先輩、そして私。

それぞれの成長を導いて最後まで見届けた総魔さんはかけがえのない大切な存在です。

だから本当は総魔さんの願い通りに、
この国に留まることが正しい選択なのかもしれません。

ですがそれでも黙って見ていることなんて出来ないんです。

「帰る準備をしよう」

最初に立ち上がったのは御堂先輩でした。

先輩は率先して個室へと向かいます。

その次に席を立ったのは翔子先輩でした。

「まあ、ここにいても仕方ないし、ささっと準備して帰ろっか」

翔子先輩も席を立って歩きだします。

「これから忙しくなるわね」

小さく呟いた沙織先輩も席を立ちました。

「まぁ、なるようになるだろ」

続いて北条先輩も席を立ちます。

そして最後、私も一人で静かに席を立ちました。

ただ…。

私の視線は総魔さんの個室を見つめています。

「…総魔さん…」

誰もいないはずの個室ですが、
それでも扉に手を伸ばしてみました。

『ガチャッ…。』と、簡単に開きます。

鍵が掛かっていなかったからです。

もちろん外から鍵をかけることはできませんので、
室内に誰かがいない限り空いているのは当然なのですが。

簡単に開いた扉の向こう側には、
やっぱり総魔さんはいませんでした。

…ですが…。

「あ…っ。」

あるものを見つけたことで室内に入ることにしました。

テーブルの上に置かれたままの小さな鞄を見つけたんです。

それは総魔さんの鞄です。

決して大きくはない鞄は私でも簡単に持ち上げられるほど軽く感じます。

「総魔さんの忘れ物…ですよね?」

着替えしか持ってきていないといっていましたが、
それでも総魔さんの私物には間違いありません。

鞄を手にした私は、そのまま個室を出ることにしました。

そして私が総魔さんの部屋を出た直後に、
すでに準備を整え終えた様子の翔子先輩が私の手にしている鞄に視線を向けたんです。

「ん?あれ?優奈ちゃん、もしかしてそれって…」

翔子先輩に呼び掛けられたことで、
私は総魔さんの鞄を翔子先輩に見せることにしました。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ