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THE WORLD 作者:SEASONS

4月15日

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それぞれの成長

《サイド:米倉美由紀》

「まずは大会優勝おめでとう。前回の大会と比べれば、みんな驚くほど成長しているわね。特に翔子の成長が一番大きいんじゃないかしら?」

いきなり本題に入るのもどうかと思って正直な感想として褒めてみると、
当の翔子は照れ臭そうに微笑みを浮かべていたわ。

「あ~、いえ。それでもまだまだ総魔には届かないんだけどね~」

ああ、まあ、ね。

確かにそうかもしれないわね。

だけどそこと比べるのはどうかと思うわよ?

彼を引き合いに出してしまうと、
私でさえ勝ち目なんてありそうに思えないわ。

「比べる対象に無理があると思うけど、大塚君に勝利した事実は大きいと思うわよ」

「あ、あははは…。たまたま運が良かっただけです。復帰が遅れてたら判定負けだったと思いますし」

まあ、それも否定できないわね。

「それでも結果は勝利なんだから謙遜する必要はないと思うわ」

照れ笑いを浮かべる翔子に微笑んでから、
次に御堂君に視線を向けてみる。

「御堂君もこの1週間で大きく変わったと思うわよ。魔術師としてもそうだけど、人としても大きくなったんじゃないかしら?」

大人になったと褒めてみたことで、
御堂君も照れ臭そうにはにかんでいたわ。

「いえ、僕はまだまだです」

翔子同様に謙遜する御堂君だけど、そんな姿を見ても思ってしまうわね。

以前とは違う…ってことをよ。

性格、実力、行動力。

今までもどれをとっても非の打ち所のない存在だと思っていたけれど。

今ではそれ以上に存在感が増しているように思えるの。

行動の一つをとっても自信に満ち溢れてるって感じるのよ。

試合そのものは天城君に負けてしまったけれど、
全力で戦った結果だから御堂君なりに満足してるのかもしれないわね。

吹っ切れたっていう感じかしら?

実際にどうかは御堂君自身でさえ分かってないかもしれないけれど。

私としてはそんなふうに感じていたわ。

まるでね。

天城君と向かい合っているかのような雰囲気なのよ。

恐れにも似た感覚というべきかしら?

覇気とも言うべき威圧感が御堂君からは感じられるの。

だからこそ思ってしまうのよ。

恐ろしいくらいに成長したわね、ってね。

今の御堂君の実力も私を越えてるんじゃないかしら?

技術的な面で勝てそうな気はするけれど、
単純な力比べなら間違いなく遅れをとるでしょうね。

そういう意味で考えると翔子の成長も怖いわね。

無邪気な笑顔でアルテマを放ってくるのよ?

ある意味、最恐の悪魔よね?

急激な成長を遂げた翔子と御堂君の実力は、
天城総魔という存在があったからこそ目覚めた力って言えると思うわ。

だからこそ。

二人にとってどれくらい天城君の存在が大きかったのかを如実に表しているように思えるわね。

「それに、沙織と北条君も前回の大会を遥かに上回る成長をしていたわね」

新たな才能に目覚めることはなかったとしても、
今まで以上に長所を伸ばした実績は褒めるべきだと思うわ。

なかなか難しいことなのよ?

すでに身につけた実力を上回るっていうのはね。

並大抵の努力じゃ実現できないの。

だから沙織と北条君も成長したと思うのよ。

そう思って声をかけてみたことで沙織は嬉しそうに微笑みを浮かべて、
北条君は当然とばかりに頷いていたわ。

「俺がその気になれば、この程度は楽勝に決まってんだろ」

自信を持って笑う北条君はいつも通りよ。

そんな北条君を翔子は冷たい視線で眺めてる。

「楽勝の割には、フェイにはボロ負けだったじゃないのよ」

「く…っ!!」

翔子の指摘に反論できないせいで、
北条君は悔しそうな表情を浮かべてるわね。

「総魔が勝ったから良かったものの…。わざわざ自分から名乗り出ておいて敗北って…ダサ…」

「なっ!ふざけんなっ!!」

見下すような目線で失笑する翔子の態度を見て、真哉の表情が一変してしまう。

「俺と勝負しろ翔子!!今日こそは俺が上だってことを叩き込んでやる!!」

全力で叫ぶ北条君だけど、
翔子の態度は変わらないようね。

「結果の見えた試合なんてしてもね~。時間の無駄じゃない?」

「くそっ!!ナメやがって!!調子に乗るんじゃねえぞ、翔子っ!!!!」

勢いよく立ち上がって翔子に歩み寄ろうとする北条君だけど。

「まあまあ、真哉。」

北条君が暴れだす前に御堂君が制止していたわ。

「気持ちは分からなくもないけど今は喧嘩してる場合じゃないんだ。今は理事長の話を聞こう」

冷静になだめる御堂君は仲裁役として頼りになるわね。

もちろん、もう一方では沙織が翔子の説得をしているわ。

「翔子。いつも言うけど言い過ぎよ?」

「あう…。ごめんね」

大人しく謝る翔子の姿を見れたからかしら?

北条君も落ち着けたようで、おとなしく席に座ってくれたわ。

でも、ね。

ついついため息を吐いてしまったわ。

相変わらず緊張感がないからよ…。

まだまだ精神的な成長が足りない二人は放置するとして、
最後に深海さんも褒めておくことにしたわ。

「あなたも強くなったわね。実力もそうだけれど精神的にも成長したんじゃないかしら?」

「あ、い、いえ。私なんて全然です…。」

私が褒めたことで自虐的に呟いた深海さんだけど。

途中で考えが変わったのか、
すぐに首を振って言い直したわ。

「…だから強くなりたいです。どこまで出来るか分かりませんけど。私に出来ることがあるのなら、精一杯やってみたいと思います」

うんうん。

良いわね。

前向きな発言だと思うわ。

深海さんが自信をもってくれたのが感じられたことで、
私達はみんな微笑みを浮かべてた。

今まで自分を否定して控えめな発言をしていた深海さんが
自分の意志を言葉に出来るようになったのよ?

それだけで十分なほどの成長だと思うわ。

「確かに成長したわね~」

呟く翔子が肯定していたわ。

だけどこういうのは本人だけは気づかないものでしょうね。

深海さんだけは小さく首を傾げているからよ。

自分では気付かない変化。

それでも周りにいる人達は気付くものよ。

ゆっくりだけど確実に成長してる今の深海さんを足手まといだと思う人は一人もいないはずよ。

照れながら微笑む深海さんを見て笑顔を浮かべる翔子と沙織。

まだ若干不機嫌そうな北条君は翔子に対して言いたいことがありそうだけど、
今は大人しくしてくれているわね。

そして真剣な表情の御堂君は私の説明をじっと待ってくれてる。

それぞれ異なる表情だけど。

全員の反応を眺めながら、ようやく本題に入ることにしたわ。
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