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THE WORLD 作者:SEASONS

4月15日

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無力

ここから第4話になります。

総魔編と龍馬編が交互に進みます。
《サイド:御堂龍馬》

総魔が去ってしまったことで起き上がれるようになった。

僕を縛っていた何らかの束縛はすでに消えている。

おそらく魔術の影響が失われたか、
総魔が解除したかのどちらかだと思う。

今なら動くことができる。

急げば総魔を追いかけることが出来るかもしれない。

だけど、どこに行けばいいのかがわからない。

僕達を残した総魔は一人でどこかに行ってしまったからだ。

翔子か深海さんに聞けば分かるだろうか?

あるいは理事長に確認するべきだろうか?

どうすればいいのかさえも分からない状況だけど。

ひとまず今は試合場を降りるべきだと思う。

「もう、ここに用はないんだ…。」

総魔に負けたことで、僕は総魔を失ってしまったんだ。

今更この場所に未練なんて何もない。

僕が欲しかったモノはもうこの場所にはないからだ。

勝利の栄光も、心を分かち合える親友も失ってしまった。

だから試合場から降りるべきだと思ったんだけど…。

「えー。一部、予定外の試合がありましたが、只今より表彰式を執り行いたいと思います!!」

総魔が立ち去ったことに悲しみを感じて涙する僕達に関係なく、
大会の進行が再開されようとしていた。

決勝戦の舞台で始まる式典の準備。

その様子をただ静かに見守る。

総魔がいなくなったことで動けるようになった僕は、
自らの足で立ち上がってから表彰台の準備を眺めていた。

だけど…ね。

天城総魔がいない。

ただそれだけを何度も何度も繰り返し呟いてしまうんだ。

空っぽの心で眺める作業。

本来なら優勝を喜ぶべき状況なんだけど。

今の心境で素直に喜ぶことなんて出来なかった。

そんな気持ちにはなれなかったんだ。

総魔がいないことがこんなにも辛いなんて思ってもいなかった。

いや…。

想像さえしていなかったんだ。

何の根拠もなく、
これからもずっと傍にいてくれると信じていたからだ。

それなのに、総魔はもうここにはいない。

それどころか、探し出す当てさえもないんだ。

そんな僕が表彰?

何を喜べばいいんだろうか。

大会の優勝?

それは総魔がいてくれたからたどり着けた結果だ。

年間制覇の達成?

僕よりも強い相手を倒せずにいるのに、
称号だけを手に入れて何の意味があるんだろうか。

今はもう、何もかもがどうでも良いと思ってしまう。

総魔と共に大会に挑み。

総魔を倒すことを目的として力を求めてきた。

けれど、たどり着いた結果は敗北だった。

そして総魔は失踪してしまったんだ。

一方的な別れの言葉だけを残して…。

僕達と共に過ごせたことを嬉しく思う、と言い残してからいなくなってしまったんだ。

総魔がどこに行ったのかなんて僕には分からない。

何を目的としているのかさえ知らないんだ。

だからこそ。

置いていかれてしまったという事実が僕の心に重くのしかかっていた。

「総魔…。」

僕は何も出来なかった。

総魔を引き止めることが出来なかったんだ。

総魔に勝つことも。

総魔を引き止めることも。

総魔の隣に立つことさえも出来なかった。

僕は無力だ。

どれ程の力を手に入れても。

どれ程の成長してみせようとも。

僕の願いは叶わなかった。

「これが、現実なんだ…っ」

僕は総魔の過去をまだ知らない。

そして総魔の目的さえもまだ知らない。

それでも思ってしまうんだ。

総魔の隣に立ちたいと…。

肩を並べる存在でありたいと思ってしまうんだ。

だから…。

だから今は…。

表彰式に背中を向けて試合場を下りることにした。

総魔のいない舞台になんて何の興味もない。

この大会は…

優勝という称号は総魔が受け取るべき物だと思う。

決して僕なんかが手にしていい物じゃないんだ。

そう判断して試合場を下りることにした。

「龍馬!」

試合場を離れたことで駆けつけてくれたのは沙織だ。

そして沙織の後ろには心配そうな表情の真哉もいる。

だけど翔子と深海さんは僕に背中を向けたままだ。

試合場から少し離れた場所で、
総魔のいなくなった方角を呆然と眺め続けている。

そんな二人の様子を一度だけ見つめてから、
僕は沙織に話しかけることにした。

「行こう。ここはもう僕達のいるべき場所じゃない」

「え?表彰式は…?」

「本来表彰されるべき総魔がいないんだ。参加する意味なんてないよ」

「………。」

沙織は何も言わなかった。

だけどおそらく僕と同じ気持ちだったんじゃないかな?

無理に引き止めようとはしなかったからね。

きっと沙織も素直に表彰を受けられるような心境ではなかったんだと思う。

「行こう」

「え、ええ…。」

「まあ、しゃあねえな」

試合場を離れる僕に続いて沙織と真哉も歩き出す。

二人とも僕の気持ちを理解してくれているようだね。

このまま翔子と深海さんも引き連れて、
会場から離れようと思ったんだけど…。

「ダメよ」

その前に足止めを受けることになってしまったんだ。
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