挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
THE WORLD 作者:SEASONS

4月15日

668/4820

解放

「それでは、試合始めっ!」

ついに試合が始まった。

開始直後にルーンを発動させて相手の様子を窺う。

光り輝く手に現れるルーン。

僕の手には魔剣『ダークネスソード』が、
澤木君の手には『風林火山』という名の刀がある。

両刃の剣ではなくて、片刃の刀だ。

研ぎ澄まされた刀の切れ味は、
かつての僕のルーンである『エンペラーソード』を切り裂くほどの鋭さを持っている。

まさしく一刀両断とも言うべき破壊に特化した武器だ。

その使い手である澤木君自身も相当な実力がある。

決して油断して勝てるような相手じゃないんだ。

互いにルーンを構えながら向かい合う。

そして攻撃の瞬間を見定めていると、
一足先に澤木君から動き出した。

「きみの新しいルーンの話は聞いてるよ。まずはそれがどの程度なのか見せてもらおうかな」

一気に駆け出した澤木君が、
急接近して全力で切り掛かってくる。

疾風しっぷう迅雷じんらい!!」

最速で放たれる居合斬りだ。

その抜刀の速度は真哉のソニックブームにさえ匹敵する。

だけど…。

どれだけ早くても、
斬撃の軌道さえ読み切れれば防御は可能だ。

澤木君にとっては左から右への横薙ぎ。

僕から見れば右から迫る刃。

対処は簡単だ。

魔剣を盾代わりにして、
斬撃を受け止めればいい。

さすがに動きが早すぎて受け流すのは難しいけれど、
受けるだけならなんとかなる。

『ガキィィン!』

剣と刀がぶつかり合う。

ひとまず防御に成功して居合い斬りを受け止めることはできた。

だけど澤木君の攻撃はこの程度じゃ終わらない。

辛うじて攻撃を受け止めた僕に、更に踏み込んできてくるんだ。

静林せいりん牙突がとつ!!」

切り返す刃で放たれるのは必殺の突き。

至近距離で放たれる突きを防ぐのは至難の業だ。

ここは全力で回避するしかない。

「く…っ!」

慌てて飛び退く。

運良く刺突は回避できたようだ。

とは言え。

無理な回避をとったことで、僕の体勢は崩されてしまっている。

とても反撃を狙えるような状態じゃない。

まずは体勢を立て直してから迎撃の準備を整えるべきなんだけど。

澤木君は流れるような動きで次の狙いを定めてくる。

烈火れっか炎照えんしょう!」

突如として燃え上がる刃。

炎を纏う刃が僕に襲い掛かってきた。

「間に、合えっ!弐之太刀、魔断!!」

炎を放つ刃に切り掛かる。

再びぶつかり合う剣と刀。

ようやく動きを止めてくれた澤木君だけど、もちろんこれで終わりじゃない。

澤木君の攻撃はまだ続いているんだ。

震山しんざん轟天ごうてん!!」

エンペラーソードを叩き斬る程の剛の一撃がダークネスソードを襲う。

「沈めっ!!!」

激しく震える澤木君の刀。

その震動に耐え切れなくなった僕の魔剣が『バキィン!!!』と砕けて折れてしまう。

「どうやら以前と同じようだね。きみは何も変わっていない!」

僕の魔剣を破壊したことで、
澤木君が最後の大技を放ってくる。

無双むそう風林火山ふうりんかざん!!!」

ルーン名と同一の名を持つ最強の一撃。

この一撃だけは絶対に受けてはいけない。

そのことは知っていたはずなのに…。

折れた魔剣では防御しきれなかった僕の身体を澤木君の刀が切り裂いてしまう。

「しま…っ!」

『ザシュッ!!!』と、斬撃音が響き渡った。

「うああああああああっ!!!!!」

斬られた瞬間に傷口が一気に燃え上がり。

爆裂した炎によって、後方へと吹き飛ばされてしまう。

全員に負った火傷も問題だけど、
斬られた腹部の出血もひどい。

炎を浴びて弾き飛ばされてしまった僕は、
そのまま試合場を転がり続けて場外に落ちる直前で動きを止めた。

いや、止まったと言うべきか。

自分の意志じゃなくて、
たまたま止まった場所が試合場の端だったというだけだ。

それでも意識を失わなかっただけまだマシかな。

とは言え。

全身を襲う痛みは致命傷に近い。

たった一撃。

澤木君の攻撃を受けただけで、
意識を失いかけるほどの怪我を負ってしまっている。

さすがにこの状況はまずいね。

折れた魔剣を再生しながら必死に立ち上がろうとしてみるけれど。

すでに澤木君は追い撃ちを仕掛けるために接近している。

「やっぱり澤木君は強いね…。」

「どうかな?僕が強くなったと言うよりも、きみが以前より弱くなったんじゃないか?」

………。

そうなのだろうか?

自分ではよくわからない。

いや。

自分では強くなったつもりでいた。

それこそ彼に追いつける程度には成長しているつもりだったんだ。

だけど、それは間違いだったんだろうか?

「まあ、どちらにしてもきみを制するまでは手を抜くつもりはないけどね」

追い込まれてしまった僕を見つめる澤木君の表情は真剣そのものだ。

決して油断などしていないように思える。

そして全力で攻め寄る澤木君は再び奥義の構えを見せていた。

どうする?

この状況で追撃を受けるのは危険すぎる。

なんとか耐え凌ぎたいところだけど、
おそらく防御は不可能だ。

澤木君の攻撃力も以前と比べて向上しているように思えるからね。

ここは耐えるよりも攻めたほうが無難かも知れない。

終之太刀ついのたち魔壊まかい!!」

接近してくる澤木君に向けて全力で切り掛かる。

対する澤木君も奥義を放ってきた。

「無双…風林火山ふうりんかざん!!」

互いに全力の一撃だ。

ぶつかり合う刃が激突音を響かせる。

『ガキィィィィィィン!!!!!』

びりびりと両腕が痺れるほどの打ち合いによって互いに動きが静止した。

全くの互角のようだ。

どちらの攻撃も不発に終わってしまっている。

「互角か。それでこそ、きみらしい」

攻撃が止められてしまったことで、
一旦後退しようとする澤木君だけど。

今度は僕から追撃に出る。

参乃太刀さんのたち魔光まこう!」

振り切る刃の軌跡に漆黒の光が生まれる。

グランドクロスの闇属性版と言うべきかな?

破壊の光が試合場を破壊しながら突き進んでいく。

「くっ!?グランドクロスか…っ」

距離が近すぎて回避不可能と判断したのかな。

澤木君は光を相殺しようとしていた。

「…無双…!!」

慌てて刀を構える澤木君だけど。

接近しすぎていたことで反撃は間に合わなかったようだ。

「うぁぁぁっ!!」

漆黒の光に飲まれた澤木君の体が吹き飛んだ。

そしてそのまま試合場の対角の端をも飛び越えた澤木君は場外へと落ちてしまう。

「が…ぁ…ぁっ!!」

苦悶の声が微かに聞こえる。

数十メートルの距離を弾き飛ばされたわけだからね。

落下の衝撃は相当なものだったと思うよ。

それなのに広大な試合場の端から端まで吹き飛ばされてもまだ
意識を失わなかった澤木君の実力は尊敬に値すると思う。

「く…ぅっ…!」

場外に落ちた澤木君は必死に立ち上がろうとしているようだ。

その場所が場外じゃなくて試合場だったなら、一気に追撃を仕掛けるところなんだけど。

さすがに場外にいる相手を攻撃するのは認められていないからね。

澤木君が試合続行を望むのなら、
ひとまず試合場に上がってくるまで待たなければいけない。

だからその間に。

僅かに稼いだ時間を利用して傷の治療を急ぐことにする。

…と言っても。

回復魔術は苦手だから、
痛みを誤魔化す程度の治療しかできないけどね。

多少なりとも出血が収まればそれでいい。

それでも何もしないよりはマシだからだ。

一瞬でも動きを鈍らせたほうが敗北することになるからね。

まずは動けるまで体調を整えるのが先決だ

そう考えて傷の手当を急ぎがら澤木君の復帰を待ってみる。

試合再開までの時間は一分くらいかな?

それだけあれば走れる程度には痛みをごまかせるような気がする。

だけど、その程度だと確実に勝てるとは言えないだろうね。

ほぼ互角の試合だからもう少し余裕が欲しいとも思う。

だから、と言うわけでもないけれど。

どうしても色々と考えてしまう。

僕も翔子のように封印を解除するべきだろうか?

勝つためにはそうすべきなのかもしれない。

だけど本当の力を知りたいと思う気持ちと、
彼との決戦に向けて今の力を極めたいと思う両方の気持ちがあるんだ。

今の僕が選ぶべき道はどちらが正しいのかな?

どちらを選んでも間違っているような気がするし。

どちらを選んでも問題ないような気もする。

うーん。

どうしようか悩んでしまうけれど。

ひとまず試合場に戻ろうとしている澤木君を眺めてみる。

傷の手当を進めながら、
ゆっくりと歩み寄る姿に諦める様子はなさそうだ。

「まだ負けたわけじゃない。僕はまだ戦える!」

ああ、そうだね。

きみも僕と同じで、諦めるという選択肢を選べない性格だったね。

だったら…。

澤木君の想いに応えるために。

僕は選ぶべきなのかもしれない。

全力で戦う意志を見せる澤木君に、
中途半端な力で挑むわけにはいかないからね。

最後まで諦めない澤木君を見て、僕は覚悟を決めることにしたんだ。

「力を解放する!!」

抜き取る指輪。

その瞬間に光り輝く僕の身体。

これで失われていた力が戻ることになるはずだ。

一時的に封印していた支配特性が復活する。

この一週間ほどの間、僕から消え去っていた力を取り戻したことで、
翔子と同様に自分の『本当の力』が理解できた。

誰かに教わるまでもなく。

自然と体が動いていたんだ。

「これが!これが僕の力だ!!シャイニングソード!!!」

新たに現れる第3のルーン。

エンペラーソードを更に上回る巨大な大剣。

『闇』から『光』へと姿を変えた僕のルーンは、
圧倒的な威圧感を放つ光の剣として神聖な輝きを持って周囲を光で埋め尽くした。

「全力で放つ!これが僕の最大の一撃だっ!」

強引に風を引き裂いて生まれる衝撃波が澤木君の身体を飲み込んでいく。

「オーバードライブ!!!!」

響き渡る轟音。

突き抜ける衝撃波。

「うあああああああああああああああああああっ!!!」

至近距離で直撃を受けた澤木君は試合場を包み込む防御結界さえも飛び越えて、
数百メートル先のグランパレスの壁に激突していた。

「がはっ!!」

吐血しながら地面に落ちる。

そしてそのまま場外で倒れ込んだ澤木君は意識を失ってしまったようだ。

全身をズタズタに切り裂かれた身体からとめどなく血が流れて、
瞬く間に血の水溜まりを作り上げていく。

その光景を見た僕は思わず呟いてしまっていた。

「ごめん…。」

さすがにやりすぎたと思ったんだ。

これが澤木君じゃなかったら即死級の威力だったと思う。

「ここまで威力があるとは思わなかったんだ…。」

僕自身、始めて発動した力だからね。

上手く手加減ができなかった。

そのせいで慌てて救助に向かう救護班によって、
澤木君は医務室へと運ばれていくのが見えた。

そしてそれは同時に試合続行が不可能と判断されたことにもなる。

「試合終了!!!!」

審判員の宣言によって、僕の勝利が確定した。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ