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THE WORLD 作者:SEASONS

4月15日

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敗退組

そうして栗原を見送ったあとで、
琴平が苦笑しながら話し掛けてきた。

「うちの学園は1回戦敗退組でして、全試合で敗北を続けているために今日もこれから最下位決定戦に出るんですよ」

敗退組による最下位決定戦か。

決して自慢できることではないが、
回復に特化したマールグリナなら当然の結果かもしれないな。

どれほど防御が優秀でも、
攻撃力が無に等しければ勝つことは難しい。

戦うことに意味も価値も持たないマールグリナなら負け続けることは必然と言えるだろう。

そしてそれは当然の結果だ。

「恥ずべきことではないはずだ。それぞれに目的が異なるからな。自分の進むべき道を進めば良い」

「ええ、そうですね。そう言って頂けると嬉しいですよ。なかなかそう思える人はいませんから」

なかなかいない、か。

その言葉は琴平が抱えている悩みのように思える。

試合結果だけを見れば『最弱』だからだ。

その評価によって学園の評価は下がる一方だろう。

とは言え。

試合以外の面を見ればマールグリナは何一つ恥じることのない優秀な学園と言えるはずだ。

栗原のように優秀な生徒も在籍しているわけだからな。

「一つ聞くが、栗原はどこまで関与している?」

「具体的な説明は何もしていません。彼女は平和主義者ですからね。これから王族を暗殺するなどという話は伝えられませんよ」

だろうな。

確かに栗原には何も言わないほうがいいだろう。

「彼女には砦への潜入調査に必要な装備を用意してもらっただけです。ですからこれからここで起こる出来事に関しては何も知らないはずですよ」

やはりそうか。

いや、そうでなければ殺人のための装備を笑顔で整えるなどということはできないだろう。

少なくともそれが出来てしまうほど心が歪んでいるようには見えなかったからな。

「何も知らないまま用意させられたということか」

「知らない方が幸せなこともありますからね」

ああ、そうだな。

それも事実だと思う。

「もちろんここでの事件は闇に葬らせていただきますので、彼女が真実を知ることはないでしょう」

自分が用意したものが何に使われたのか?

その事実を知ることはないということだ。

「だったら遠慮する必要はないな」

「ええ、大丈夫ですよ。それに、仮に真実を知ったとしても大きな問題はないでしょう。彼女も砦への攻撃は賛成してくれていますからね。どこかで犠牲が出ることは理解してくれているはずです。まあ、それでも彼女の気持ちとしてはあくまでも護身用の装備という考えだとは思いますが」

殺し合いの道具ではなくて生き残るための道具か。

考え方の違いと言ってしまえばそれまでだが、
栗原としてはその程度の気持ちで用意していたようだ。

だとすれば、俺が死ぬわけにはいかないだろう。

戦場に送り込んだ結果として死なせてしまったでは、栗原も気が滅入るはずだ。

自分の用意したもので誰かが殺されることよりも、
自分の用意したもので俺を守れなかったことのほうが、
栗原にとっては辛い結果になるだろうからな。

受けた恩を仇で返すわけにはいかない。

せめて栗原が納得できる結果は出すべきだと思う。

…と、そんなふうに考えていると、
俺達の会話を断ち切るかのように突然部屋の扉が何度も叩かれた。

「…時間だな」

席を立った宗一郎が扉を開けたことで、
室内に入ってきた兵士が運命の時を告げる。

「到着されました!!」

「「………。」」

到着の知らせを聞いた瞬間に、
美由紀と琴平の表情にも緊張の色が浮かんでいた。
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