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THE WORLD 作者:SEASONS

4月15日

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爆炎

「それでは、準備はよろしいですか?」

問い掛ける審判員に頷いてみる。

義明も微笑みを浮かべたまま頷いてるわね。

「…では。」

そっと手を掲げる審判員の手が振り下ろされる。

「試合、始めっ!!!」

即座に後方に下がる審判員はひとまず無視よ。

私と義明はルーンを発動させて互いに相手に向けて構えたわ。

私のルーンは扇で義明のルーンは針ね。

針って言っても直径20センチに及ぶ長い針よ。

5ミリ程度の細さの針を指の間で何十本も器用に掴んでるわ。

普通に考えて複数のルーンを作り出せば一撃の威力は大幅に低下するんだけど、
それでも義明のルーンは並の魔術を遥かに上回る威力を秘めてるのよ。

その事実を私は知ってる。

今までにも何度か試合を見たことがあるから、
義明のルーンの恐さは知ってるつもりよ。

義明の特性は『爆炎ばくえん

その特性を持つルーンの一撃はまさしく破壊の為の武器よ。

まともに針に刺されば爆発して体が瞬間的にバラバラになる威力があるわ。

まあ、そこまでの惨劇はまだ起きたことがないけど。

手加減した義明の一撃でも、
まともに受ければ即座に戦闘不能になるでしょうね。

それくらい警戒すべきルーンなのよ。

だけどルーンだけが義明の能力じゃないわ。

凶悪なルーンを持ちながらも、
義明は『もう一つ』の力を発動させることができるからよ。

「見せてもらおうか。お前がどこまで戦えるのかをな」

容赦なく発動させる魔力の渦が『あの形』を作り上げてしまう。

「いでよ!レッドドラゴン!!」

義明が力を発動させたその瞬間に会場が大きく揺れ動く。

どんな魔術でも作り出せないような極炎。

膨大な炎が私と義明の間で盛大に燃え上がって、
体長5メートルを越える大型のドラゴンが姿を現したからよ。

吐く息が真っ赤な炎を放ってる。

これはどう考えても本気よね。

圧倒的な存在感を感じるわ。

以前の私なら手も足も出ずに怯えるだけだったと思うけど。

今の私に逃げるなんていう選択肢は存在しないのよ!!

試合場で圧倒的な存在感を放つドラゴンに向けて、まずは扇を構えてみる。

魔力の総量では圧倒的に義明が上だけど、
ルーンと精霊の召喚によって相当な魔力の低下が起きてるはず。

だからそれぞれの一撃は、私でも十分に対処出来るはずなのよ。

そう信じて、扇に力を込めてみる。

「乗り越えて見せるわっ!私だって!総魔に近付きたいのよっ!!」

叫びながら放つ魔術。

中途半端な魔術では意味がないと判断して、最初から全力で攻撃に出たわ。

「アルテマっ!!!!」

全力の一撃よ。

ここは学園の試合場とは違って広大な大会会場だから、
無音とは行かずに耳が痛くなるほどの爆発音がドラゴンを中心として巻き起こったわ。

激しく舞う砂埃すなぼこり

精霊はどこ?

砂埃の中を覗き込もうとする私の視界で、うごめく何かが見えた気がする。

やばっ…!?

慌てて逃げる。

数秒前まで立っていた場所に、義明のルーンが突き刺さる。

『ザク!ザク!』と試合場に突き刺さる複数の針。

その攻撃を回避した瞬間に次々と針が爆発して、
試合場に巨大な穴を開けていったわ。

さらなる砂埃で遮られる視界。

向こうも狙いを定め切れてないようね。

運良く私に直撃しない代わりに、
私も義明の正確な位置が分からなかったわ。

逃げ続ける私の至近距離に放たれていく針。

次々と起こる爆発が巻き起こる砂埃を吹き飛ばしてく。

その結果として。

私は唇を噛み締めることになったのよ。

悠然と姿を見せるドラゴンがいるの。

当然だけど。

ドラゴンの体のどこにも被害が見られなかったわ。

多少なりとも魔力が減少していれば良いんだけどね。

見た目では判断出来ないわ。

「ったくぅ、バケモノはそっちじゃない!」

思わず呟いた言葉が聞こえたのか、義明は唇を歪めて微笑んでた。

「確かにそうかもしれないな。だが俺の力はまだ『想像出来る』範囲内だろう?天使や吸収に比べればな」

う~ん。

確かに?

…って。

一瞬、納得しかけた自分がいるけど、それとこれとは話が別だと思うわ。

「それでも十分バケモノじみてることに変わりはないわ!」

「ならば降参するか?」

「ふん!お断りよっ!絶対に私が勝つ!!それ以外の選択肢はないわ!!!」

力強く宣言して扇を構えてみる。

だけど…。

正直、どうしていいのかが分からなかったわ。

アルテマが有効なのかどうかが分からないのよね。

ドラゴンを無視して、直接義明を狙ったほうがいいのかな?

でもね~。

無視するには危険な存在すぎるわよね?

作戦を考えてる間にもドラゴンの口から吐き出される炎の息。

さすがにこれは直撃すれば火傷じゃ済まないわ。

「ったくぅ!!!」

ドラゴンの炎に対して、魔術で相殺を狙ってみる。

「ダイアモンド・ダスト!!」

扇から放たれる冷気はまっすぐに炎へ向かったわ。

ドラゴンの炎の息と激突する極寒の冷気。

だけど。

私の力が及ばないせいで、
完全に炎を相殺することは出来なかったみたい。

目前に迫る炎。

全力で走り出して、炎の射程から逃げだしてみる。

でも…。

「甘いな…」

警告する義明の声が聞こえたわ。

そして義明の手にある針が私に狙いを定めてた。

「この程度ではまだまだ俺には勝てん」

宣言してから放たれる針。

十数本の針が襲い掛かってくる。

「くっ!!」

即座に扇を広げて針を叩き落とそうとしてみたけれど、
これは失敗だったかもしれないわね。

何本かの針が扇に触れた瞬間に、
勢いよく爆発して炎を撒き散らしてしまったからよ。

「きゃ…あぁぁぁぁぁっ!?」

爆発の勢いに負けて吹き飛ぶ体。

幸いにも直撃は避けられたけれど。

今の攻撃で扇が消滅しかかっていたわ。

って、うわっ…。

やば…っ!!

慌ててルーンに魔力を注ぎ込もうとする私に、
今度はドラゴンの炎の息が襲い掛かってくる。

…ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ?

ちょ…っ!!!

さすがにこれは無理ぃぃぃぃぃぃぃぃ!

激しく慌てちゃったけれど、
辛うじて魔術を発動させるのが間に合ったわ。

「ダイアモンド・ダスト!!!」

炎の勢いを止めて時間を稼いでみる。

だけど義明のルーンはすでに私に狙いを定めていたわ。

「終わりだ、翔子」

くっ!!!

唇を噛み締めた私は逃げることも反撃することも出来ないまま、
義明の攻撃を受けて、試合場の外にまで吹き飛ばされてしまったのよ。
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