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THE WORLD 作者:SEASONS

4月15日

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ミルク

「みゃ~♪」

生まれたのは小さな小猫ちゃんです。

私の想像した精霊はとても小さな白猫でした。

ですがその鳴き声はとても愛おしく感じます。

「そんなっ!?有り得ないわっ!!!」

金田さんが突然叫びだしました。

「精霊が声を出すなんて!?ただの『魔力の塊』なのよっ!?そんなの絶対に有り得ないわっ!!」

絶対に?

そうなのでしょうか?

戸惑う金田さんを見ていると不安になってしまいます。

私は何か間違ったのでしょうか?

吸収した精霊の構成を再現したつもりだったのですが、
私の精霊を見た金田さんは有り得ないと断言しています。

だとしたらどこかで失敗してしまったのでしょうか?

私には判断できませんが、
私の足元に擦り寄るこの子は嬉しそうに鳴いていました。

「みゃ~♪」

うん!

可愛いです。

…って、今はそういうことじゃないですよね。

「声は出さないんですか?」

「だから有り得ないって言ってるでしょ!!」

問い掛けたことで金田さんに睨まれてしまいました。

「一体、何をしたのっ!?」

えっと…。

怒鳴られても私には違いが分かりませんので答えようがありません。

足元に転がる弓を拾い直してから、
可愛く擦り寄ってくれる小猫ちゃんも拾い上げてじっくりと眺めてみます。

真っ白で汚れのない毛並み。

精霊の体は私の手よりも少し大きいくらいなので20センチくらいでしょうか?

元が魔力なのでルーンと同様に重さは感じません。

それでも本物の小猫と比べても全く違いが分からないくらい可愛らしい存在だと思います。

「みゃ~♪」

私を見上げながら鳴いてくれる小猫ちゃんの姿を見ているだけで、
心が癒されるようなそんな可愛らしさがあるんです。

こういうのも親馬鹿って言うのでしょうか?

もしもそうだとしても、
満足できるほど可愛いと思ってしまいます。

「ちゃんと鳴いてくれてますよ?」

「だからそれがおかしいって言ってるのよ!精霊に意思なんてないのよ!?そもそも魔力が声を出すわけないじゃないっ!そんな行動は絶対に有り得ないわっ!!」

戸惑い続ける金田さんの言い分は何となくですが理解できます。

確かに魔術は喋りませんし、
ルーンが話すことはありません。

ですがそうは言われても、
今ここに、こうして、存在しているので、否定されても困ります。

「そもそも!!そんな小動物で何が出来るっていうのよっ!?」

むっ!

今の言葉はちょっぴり許せません。

私の大事な小猫ちゃんを馬鹿にしないでください!

心の中で反論しながら、
小猫ちゃんを試合場に下ろしました。

何が出来るのかを実証する為にです。

「あなたの名前は『ミルク』。今日から『ミルク』って呼ぶからね♪」

「みゃ~♪」

小猫ちゃんの名前を決めて呼ぶ度に、
ミルクは可愛らしく鳴いてくれました。

そしてちょこちょこと歩き出したミルクは金田さんの足元に近づいてから、
精一杯の鳴き声をあげます。

「にゃ~っ!」

威嚇いかく的な鳴き声ですね。

その声が周囲に広がった瞬間に、
突如として金田さんの足元が崩壊したんです。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

金田さんを巻き込みながら、
試合場に大きな穴が生まれました。

「なっ、何が起きたのっ!?」

大穴の中に落ちてからも起き上がれないようですね。

『引力』に引かれて立ち上がれない金田さんは、
大穴の中で叫ぶことしか出来ないようでした。

…そして…

「みゃ~!!」

ミルクがもう一度叫んだ瞬間に、
金田さんの体は空中へと浮かび上がります。

「ちょ…っ!き…きゃあぁぁぁぁぁぁぁ…っ!!」

斥力せきりょく』によって身動きが取れないままふわふわと浮かんでいるようです。

「にゃ~~~!!」

さらにもう一度ミルクが叫んだ直後に、
金田さんは試合場へと強く叩き付けられました。

「か…あ…っ!?」

口から血を吐き出しています。

高さを考えると3階から落ちた…と言うか、叩きつけられた感じでしょうか?

衝突の威力を考えると、
間違いなく骨が折れるほどの衝撃があったと思います。

だから、でしょうか。

金田さんはミルクの力によって瞬く間にぼろぼろになってしまいました。

「一体、何を…?」

説明を求められても上手く説明する自信はないのですが、
恐怖の眼差しでミルクを見つめる金田さんに私が理解している範囲で説明することにしました。

「ミルクが持つ自然現象は重力です。私の吸収と同じような引き寄せる力になります。波のように引き寄せて押し返す。『引力』や『斥力』もミルクの能力です。もちろん元が私の魔力ですから『吸収』の能力も兼ね備えています」

「重力の操作…ね。やっぱりあなたもとんでもないバケモノだわ」

「どういうふうに呼ばれても構いません。私は私の目的の為に強くなりたいだけです。その為になら『バケモノ』と呼ばれても悔いはありません」

吸収という能力のせいで、
総魔さん達と出会うまで私は誰にも相手にされない存在でした。

名前も知らないような人に『呪われた子』だと言われた経験もあります。

そんな私に優しくしてくれたのは両親と悠理ちゃんだけだったんです。

ですがそんな私に、総魔さんは力の使い方を教えてくれました。

こんな私に生きる喜びを教えてくれたんです。

だから私は総魔さんから受けた恩をお返しする為に強くなりたいと思っています。

ホンの少しでもいいから、
総魔さんのために出来ることをしたいと思うんです。

「私は勝ち上がります!」

総魔さんに必要としていただくために。

うずくまる金田さんに向けて、魔術を発動させることにしました。

「これが、これが私に出来る『最高』の魔術です!!」

きらめく両手の先で生まれる幾百の魔術。

ですがこれが『アルテマ』とは違います。

私には融合の能力がないからです。

それでも私は私に出来る『精一杯の魔術』を発動させました。

「マジック・レイン!!!」

今までに『吸収』してきた数々の魔術を一斉に解放したんです。

激しく降り注ぐ魔術の雨。

翔子先輩のメテオストライクとほぼ同じ現象なのですが、
『自分自身の魔術』ではなくて『吸収した魔術』ですので私自身も制御することができません。

まだまだ使いこなせないような魔術が数多く含まれているからです。

だからこれはあくまでも吸収した魔術の乱発になります。

乱舞と言えるほど格好良くもありませんし、
常に一定の威力を期待することさえもできません。

一度使ってしまったら、
再び魔術を吸収しない限り二度と発動することができない最後の切り札でもあります。

それでも私はこれまでの試合で吸収してきた全ての魔術が尽きるまで魔術を解放し続けました。

「これが私にできる精一杯です!」

「いやあああああああああああああああああああっ…!!!!!!」

金田さんは降り注ぐ魔術の雨の中で泣き叫びながら倒れてしまいました。

魔術が尽きて攻撃が停止した時にはすでに身動きの取れない状況だったように思います。

「試合終了!!!」

審判員さんが即座に試合を止めたことで、
私にとって大会初の『勝利』が決定しました。

「みゃ~♪」

嬉しそうに擦り寄ってくれるミルクも、
私の初勝利を祝福してくれているように思えます。

「ありがとう、ミルク」

ひとまず試合は終わったのですが、
用が済んだからといってミルクを消し去るのは何となく申し訳ない気がします。

私のために頑張って戦ってくれたんです。

だからルーンは解除しても、
ミルクは召喚したままで試合場を下りることにしました。
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